夏休みの旅行前など、多くの人が確認するのは玄関や窓の鍵だろう。だが、犯罪グループが知りたいのは、鍵をかけたかどうかではない。「その家がいつ無人になるか」である。
香川県警が小型カメラを使った犯罪の下見活動について注意を呼びかけたのは、7月のことだった。6月に県内の空き家の屋根から、窃盗や強盗の下見用とみられる小型カメラが発見されているのだ。高さ4センチ、幅約3.8センチ、奥行き5.5センチ。バッテリー2個とともに、黒いテープで巻かれていた。近隣住宅の留守の時間帯や住民の行動を調べるために設置された可能性があり、県警が捜査を進めている。
こうした下見を行っているとみられるのが、いわゆる「トクリュウ」、匿名・流動型犯罪グループと呼ばれる集団だ。固定した組織を持たず、SNSでの闇バイト募集などで実行役を集めては入れ替え、役割を細かく分担させる。
資金獲得の手段は特殊詐欺、強盗、窃盗から投資、ロマンス詐欺、悪質リフォームまで幅広い。警視庁は2025年10月に対策本部を設置。香川県警も今年7月7日に対策本部を立ち上げた。県内では下見を疑う相談などが5月に56件、6月に59件に達した。
従来の下見であれば、不審な訪問者や見慣れない車の長時間停車など、人の動きから異変に気づく余地があった。ところが小型カメラは、設置した人物がその場を離れた後も住民の出入りを記録できるため、気づかないまま留守の時間帯を把握されかねない。
8月12日には自宅横の植え込みから小型カメラを見つけ、警察へ連絡したというX投稿があった。翌日には20歳くらいの男性が「この辺にカメラを落とした」と訪ねてきたという。設置目的やトクリュウとの関係は確認されていないものの、投稿者は「闇バイトのハリ(下見)というやつだったんじゃないかと思う」と振り返っている。警察の注意喚起が決して大げさではないことを感じさせる出来事だ。
設置場所はカーポートの上や室外機の下、植え込みの中
警察が警戒を強める背景には、トクリュウが深く関わる特殊詐欺の被害拡大がある。警察庁の暫定値によると、2026年上半期の特殊詐欺は2万2031件、被害額は約1816億円で、前年同期比で件数は18.3%、被害額は51.7%も増えた。全てがトクリュウによるものではないが、深刻な傾向であることに変わりはない。
その手口は巧妙さを増し、警視庁は医師を装い「息子が喉の手術を受けた」と電話する詐欺や、トークアプリで偽の警察手帳を見せて送金を迫る手口への警戒を呼びかけている。
では、小型カメラにどう備えるか。香川県警はカーポートの上や室外機の下、植え込みの中などを設置場所の例に挙げ、道向かいの住宅の屋根にカメラが設置される場合もあるとしている。旅行中の写真や高級腕時計といった資産情報を、リアルタイムでSNSに投稿しないことも大切だ。
不審なカメラを見つけた場合は素手で触らず、動かさず、警察へ通報する。緊急なら110番、相談は「#9110」へ。持ち主を名乗る人物が現れても、自分で対応せず警察に連絡したい。
防犯対策は、鍵を閉めたら終わりではない。出かける前に家の外回りも一度、見て回ってほしい。
(ケン高田)

