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【Do My Best, Go!|森ひかる・トランポリン|後編】「大会はゴールじゃなくてボーナスタイム」イギリスで感じた変化、パリ五輪を経て見つけた新たな価値観

【Do My Best, Go!|森ひかる・トランポリン|後編】「大会はゴールじゃなくてボーナスタイム」イギリスで感じた変化、パリ五輪を経て見つけた新たな価値観

明日への一歩を応援する「Do My Best, Go!」。2021年夏の東京五輪、2024年のパリ五輪に連続出場し、後者では個人6位入賞を果たしたトランポリン日本人第一人者の森ひかるさんが登場。トランポリンを始めたきっかけやこれまでのキャリアの転機、2度の五輪までの道のり、今後の目標、そしてアスリートの食生活まで幅広く語ってくれた。


――30秒に10本の連続技を組み込んで、完璧にしていく作業というのは、想像を絶する世界ではありますね。

 その過程が有意義なものだと心から感じられたのが、イギリスに来てからでした。イギリス人コーチに「どうして国が違う私のコーチをしてくれるの?」と尋ねたとき、コーチが「僕とあなたが築いた友情関係は死ぬまで続いていくよね」と言ってくれて、その言葉で大切なのは結果だけではないと強く思えました。

 30秒に10本の技を組み込む作業に二人三脚で取り組み、細かい所作を徹底的に突き詰めていくのは本当にすごいこと。演技時間の30秒に表れないかもしれないけど、お互いが積み上げてきた時間が詰まっています。だからこそ、大会はゴールじゃなくてボーナスタイム。結果として金メダルが取れたら理想的ですけど、目に見えないものこそ大切だと今の自分は胸を張って言うことができます。

――それを知ることができたのが、東京五輪後も競技を続けられた原動力ですね。

 そうだと思います。私は本当に大切なことに気づけましたし、世界中の人たちとつながって、多くのことを学べている。あそこでやめなくて本当によかったと思いますし、起こる物事には全て意味があるとも感じましたね。

――パリ五輪は前向きな気持ちで取り組めたのではないですか?

 いえ、実はパリ五輪のときもすごく恐怖を感じていました。東京五輪のときは大会前に全然ジャンプを飛べなくなってしまって、パリでもまた失敗したらどうしようという気持ちが強くて、怖かった。でも、パリでは競技がすごく楽しかったんです。最後の最後に神様が味方してくれたのか、撮った写真を見たら笑顔の自分がいて、頑張ってよかったなと心から思えました。

 結果としては6位入賞でしたが、周りの評価よりも、自分がどう思うかという部分がより大切だなと分かったのがパリ五輪でした。そこの部分はこれからも大切にしていきたいですね。
 ――ここからは日々の食事についてお伺いします。森さんは食生活に関してはどのような取り組みをされていますか?

 日本にいた頃は母親が食事を作ってくれていたので、全面的に栄養管理を任せていたのですが、今は全て自分でやらないといけません。

 自分もアスリートなので、栄養の勉強は多少なりともしていて、どういう栄養素を摂取しなければいけないかは理解していますが、海外では日本と売っているものも違いますし、最初はすごく難しかったですね。

――どのような苦労がありましたか?

 最初は食材を全て日本から持参して、お湯を入れたらできるようなレトルト中心で生活していたのですが、徐々に料理もできるようになりました。基本的にはスープとご飯、タンパク質と野菜という感じでバランスよく食事できるようには心がけて作っています。

 ただ、練習を終えて帰ってから毎回料理をするのは大変なので、肉や魚を焼いてソースをかけるだけとか、タコライスのようにご飯に載せるだけでおいしくて簡単に栄養が摂れるものメニューが中心にはなりますね。

――トランポリンは体が軽くないと飛べない競技だと思いますが、体重管理はいかがですか?

 毎朝、同じ時間、同じタイミングに体重を測ることは大事にしています。それを続けたことで、少しの変化でもすぐに対応できるようになったと思います。トランポリン選手は体重が軽い方がいいと思われがちですけど、跳躍力を引き出すための筋肉も必要ですし、人それぞれ適正体重がある。それを把握しておくこと。

 自分の場合はそこまで厳しい食事コントロールをしているわけではないです。カロリーを考えながら食事をしていますが、単に制限するだけではなく食べたいものを食べることはメンタル面でとても大事です。

 例えば、「脂質を落とすために、鶏むね肉をメインに食べよう」と普段は考えていても、ある時は「もう疲れたから、鶏もも肉にしよう」となることはあります。鶏むね肉で脂質をコントロールできているから、今日だけはケーキを食べても大丈夫などメリハリをつけながらやることがメンタルの健康には重要だと思います。

――脂質のコントロールですが、アスリートにとって、きのこは有用な食材と言われております。日本に比べると手に入りにくい食材かと思いますが、食べる機会はありますか?

 きのこ類を食べようと思ってスーパーへ行くときのこがないということがありましたね(苦笑)。アジア食材のスーパーには置いてありますけど、値段も高いですし、そう簡単には手が出ません。近くのスーパーにしいたけが入った時はすごく嬉しかった記憶があります。

 きのこは好きなので、現地のスーパーで買えるマッシュルームとかを入手して、焼くかスープに入れるかという形で食べることが多いです。焼く場合は普通にしょうゆやソースをかけるだけでおいしく食べられますよ。日本で栄養指導を受けた時に「きのこは栄養があるのにカロリーが低いから積極的に摂取した方がいい」というアドバイスをいただいて、日頃から摂取量が少なくならないようには意識しています。

――腸内環境を改善する効果もあると言われていますが、森さんの場合は?

 私は日頃から便秘で苦しむということがないので、はっきりとした効果は分かりませんが、きのこも含めて日々の食事のおかげで体調が良いのかもしれないですね。
 ――今後の目標をお聞かせください。

 2028年のロサンゼルス五輪にチャレンジしたいという気持ちはもっています。今は東京、パリとは違うサイクルで練習に取り組んでいますし、新しいことに挑戦できているので、すごく充実しています。海外で生活してみたいと思って、1年半前にイギリスに来て、最初は生活するだけで大変でした。言葉も分からないし、バスに乗るだけでも一苦労。食事も何を買っていいのか分かりませんし、トランポリンの目標を持つ前に、日々を生きることだけで精一杯でした。そういう経験があってトランポリンにもっと食いついてやろうと思えたのが本当によかったです。

 毎日、いろいろなことを一生懸命やりながら、楽しめている今の自分を好きになれましたし、そういうスタンスをこれからも続けていきたい。そういう日々の積み重ねの先にロス五輪もあるのかなと今は考えています。

――最後になりますが、トランポリンのどういうところを見てほしいですか?

 トランポリンを目の前で見ると迫力がすごいですし、大きな大会の決勝は一発勝負。1本目のジャンプで端っこの方に行ってしまったら終わりですし、ジャンプの高さや3回宙返りとかの豪快さも現場でこそ体感できるもの。選手たちの表情やキャラクターも魅力的。どの競技よりもそういった雰囲気を間近で感じられると思います。観戦料金は無料ですし、緊迫感や臨場感を味わえるという醍醐味もあるので、ぜひ会場に足を運んで見てほしいです。

 私が次に日本国内で出るのは、9~10月に愛知県で開催されるアジア大会になります。そこで多くのみなさんに見てもらえたら嬉しいです。
 <プロフィール>
森ひかる/もりひかる
1999年7月7日生まれ、東京都足立区出身。

4歳のときに地元のデパート屋上にあったトランポリンと出会い、その楽しさに目覚めトランポリンを習い始め、2013年には14歳という史上最年少で全日本選手権初優勝を果たした。リオ五輪は年齢制限の為出場できなかったが、2017年には世界選手権初出場ながらも、日本女子初となるシンクロナイズドで銀メダルを獲得。2018年では同じく日本女子初のシンクロナイズド金メダルを獲得した。2019年世界選手権では個人で日本人選手初となる金メダル獲得。東京オリンピック 日本代表、パリオリンピックでは6位入賞を果たす。
配信元: THE DIGEST

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