NBAの2026-27シーズン開幕戦の対戦カードが決定し、王者ニューヨーク・ニックスは10月20日、マディソンスクエア・ガーデン(MSG)にフィラデルフィア・セブンティシクサーズを迎えることとなった。
オフにレブロン・ジェームズとジェイレン・ブラウンの獲得に成功し、一躍注目チームとなったシクサーズとの対戦は、間違いなく初日の大目玉だ。
加えてニックスの面々は、前回MSGで戦ったファイナル第4戦の激闘を思い起こすことだろう。
この試合、ニックスは最大29得点のビハインドをひっくり返し、サンアントニオ・スパーズを107-106で下して優勝に王手をかけた。
その劇的な大逆転劇のクライマックス、1点を追う最後のポゼッションで、ジェイレン・ブランソンのシュートミスを押し込んだOG・アヌノビーがヒーローとなった。
ニックスに53年ぶりの優勝をもたらす一因ともなったこのシーンは、今後も彼のキャリアを振り返る上で、必ず話題に上ることだろう。
しかしアヌノビー自身は、あの劇的なシーンはすでに過去のことだと気持ちを切り替えているようだ。
生まれ故郷のロンドンでバスケットボールクリニックを開催した際に、『Sky Sports』の取材に応じたアヌノビーは、そんな思いを口にしている。
「繰り返しあのシーンが放送されるから、何度も目にしている。でももうあれは過去のことだよ」
実際、ブランソンらニックスのチームメイトたちも、試合後は過剰な興奮状態ではなかったという。
「あの試合の後は、チームもそれほど大騒ぎしたわけじゃなかった。まだ勝つべき試合が残っていることがわかっていたから、あんまり先走って喜びたくなかったんだ」
父親がロンドンで教職に就いていたため、同地で生まれたアヌノビーは、故郷イギリスのバスケの復興に強い思いを抱いており、毎年、ロンドンで子ども達から青少年まで、幅広い年齢層の男女を対象にしたバスケットボールクリニックを開催している。
さらに今年の訪問時には、ロンドン市内のバスケットボールコート改装計画にも携わった。
同市は、市長の主導の下、2026年のNBAロンドンゲーム開催に合わせてバスケットボール振興のための支援策を立ち上げた。そのなかには、ロンドン各地のおよそ10か所のバスケットボールコートを改修、整備するプランも含まれている。
この活動に参画する形として、アヌノビーは故郷カムデン地区のコートの改修に、自身のポケットマネーから資金の援助を申し出た。また、彼の活動を支援すべく、NBA選手会の慈善・社会貢献部門であるNBPA基金も協力することになった。
「ロンドン市長と協力して、カムデンのバスケットボールコートの改修に参加できることを、とてもうれしく思う。設備を整えたり、気軽にアクセスできるコートを増やすことは、バスケットボール選手を目指す若者たちにとってものすごく重要だ。
バスケットボールは、プロとしてのキャリアを拓いたり、教育の一環にもなる。でもそれだけじゃなく、地域社会とつながって、他の人たちと交流するための手段にもなるんだ」。
アヌノビーは幼少期にアメリカに移り住んだが、まだ親族が残るロンドンには、頻繁に足を運んでいる。
「今でもイギリスとは強い縁を感じているんだ。僕自身は小さい頃にここを離れたけど、姉たちはずっとロンドンに住んでいるし、兄もここで育った。だからここには友達や家族が大勢いるんだ」
近い将来、イギリス代表でプレーすることを望むアヌノビーは、すでに代表関係者と話し合う機会も得ている。ここ数シーズンはニックスでの活動を優先し、夏の代表活動には参加できなかったものの、「また別の機会があるはず」と代表入りへの意欲を示している。
イギリス代表では、かつてルオル・デン(元シカゴ・ブルズほか)がプレーしているが、引退後は出身国である南スーダンの代表ヘッドコーチとなり、現在は同国バスケットボール協会の会長職を務めている。
それゆえに、欧州の中でもバスケ後進国であるイギリスにとって、NBAで2度の優勝を経験したアヌノビーは過去最大級の期待の星なのだ。
今年のドラフトでは、2巡目48位でダラス・マーベリックスがロンドン生まれのパワーフォワード、トビ・ラワルを指名した。昨年のアマリ・ウィリアムズ(2巡目46位/オーランドマジック→ボストン・セルティックス)と同様、2WAY契約での入団だが、アヌノビーと合わせて現在のNBAでは3人のイギリス国籍の選手が在籍している。
「毎年、イギリス出身選手がNBAに参入している。バスケットボールの人気も年々高まっているし、良い方向へ進んでいっているのが嬉しい」
コート内外でチームと故郷に貢献するアヌノビー。その存在は、英国バスケットボールの未来にとっても、ますます大きな意味を持つことになりそうだ。
文●小川由紀子
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