外国の競馬場で最も好きなのはどこかと聞かれたら、フランスのドーヴィル競馬場と答える。夏のバカンスになるとパリジャンがこぞって訪れる、英仏海峡に面した高級リゾート地にある競馬場だ。
駅から歩いて15分ほどの、高級ブティックなどが立ち並ぶ街の中心に位置。筆者が最初に行ったのは1997年の夏だが、まずおおらかな雰囲気に驚かされた。パドックには、椅子に座りながら馬のスケッチをしている人がいたほどだ。
しかし、夏競馬の中心になる競馬場だけあって、レースの迫力は十分だった。直線競馬を見たのも、この時が最初。馬が平坦な芝1600メートルの直線を右の方から走ってくるのだが、最初はマメ粒のようで、どうなっているのかさっぱりわからない。それが次第にひとつの塊となって大きくなり、2組に分かれてゴールを目指してくる。目線をどちらに向けていいのか、戸惑ってしまうのだ。
この時、最後はラチ沿いを進んだ組の中から勝ち馬が出たが、残り200メートルくらいからはどの馬も追い通しで、見応え十分。大満足だった。ちなみに、当時は夏の間しか開催していなかったが、現在は1年を通じて開催される。パリから列車で1時間40分ほどで到着するので、日帰りも可能だ。
そのドーヴィル競馬場で、真夏のマイル王決定戦「ジャックルマロワ賞」(GⅠ、芝・直線1600メートル)が8月16日22時50分(日本時間)に行われる。日本のシックスペンス(牡5)とシュトラウス(牡5)が出走予定で、日本でも馬券が発売される。
タフな欧州の馬場に対応できる好走実績
当初、出走を予定していたイギリスの強豪ボウエコーはじめ外国馬が数頭ほど回避して少し寂しくなったが、そのぶん日本馬にチャンスが出てきた。武豊が騎乗するシックスペンスはダートでの好走実績があるので、タフな欧州の馬場にも対応できそうで楽しみは大きい。
思えば武はこのレースに5回騎乗して(全てフランス調教馬)、2008年のナタゴラでは2着に入っている。さらに言えば、ドーヴィルは1990年のモン・カ二シー賞でレジデントに騎乗し、欧州初勝利を記録した競馬場だ。
その後、1998年のモーリスドゲスト賞では、シーキングザパールで日本調教馬による海外GⅠ初制覇を達成している。
それほど縁のある競馬場であり、武自身が「雰囲気があって、大好きな競馬場」と言っているほどだ。
日本調教馬はこれまで7頭がこのレースに挑んで、1998年のタイキシャトルしか勝っていないが、それ以来の勝利を期待したい。
では、グッドラック!
(兜志郎/競馬ライター)

