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【甲子園】最速156㎞!スーパースター投手・織田翔希の登場とバックが魅せた「戦略的守備」<SLUGGER>

【甲子園】最速156㎞!スーパースター投手・織田翔希の登場とバックが魅せた「戦略的守備」<SLUGGER>

3万人を超える甲子園の観客が見たのは、スーパースターの登場、そして勝つことを義務付けられたチームの鍛えられた守りだった。

 10日目の第3試合、横浜―日南学園戦のことだ。1回戦で明徳義塾を破った日南学園は完成度の高いチームで、攻守に鍛えられ、横浜に対して臆することもなかった。

 試合のハイライトになったのは1−1で迎えた6回裏だ。日南学園は見事な攻撃を仕掛けた。先頭の荒木未星が横浜の先発・小林鉄三郎から左翼前安打を放って出塁すると、2番の豊丸蒼大がバスターエンドランを成功。横浜の守備網を切り裂く二塁打で無死2・3塁。こう着状態が続いていた試合が大きな局面を迎えた。

そして、ここで横浜の村田浩明監督は、マウンドにエース・織田翔希を送り込んだのだった。

『本人には今日の登板はないと伝えていたんですけど、僕が投げるんですか?みたいなのんびりした反応でしたけど、しっかり準備はしていたんです』

 そう内情を話した村田監督だったが、この局面で織田を送り込んだ直後、なんと強打者の3番・田中皐晴を申告敬遠で一塁に歩かせ、満塁策を取ったのだ。逃げ道のない勝負だが、エース織田のポテンシャルに、鍛え上げられたバックの守備があるからこその戦略だった。
  作戦の意図を村田監督が明かす。

「相手に2点を上げないための満塁策です。1点はOKで、とにかくゲッツーをとる。アウトを増やすこと。 そこの選択肢しかなかったです。ゴロによってはホームゲッツー、そして後ろの場合はセカンドでゲッツーという形です。練習を相当にやってきたんです」

 満塁策にしたものの、内野は極端な前進守備を敷いていない。ベース上をオンラインとするならばそのやや前後だ。無死満塁の時はほんの少し前のポジションで、織田が4番の谷口銀次郎を見逃し三振に切って取ると、二遊間はオンラインからやや下がった。多くの高校と同様守備陣形を決める数字のサインがあり、村田監督は「1、2、3とあるんですが、2を選んだ」とホームとセカンドゲッツーをそれぞれ狙う陣形と説明した。

 理屈は分かるが、難しいのはその判断だろう。ベンチからの「1点はOK」とのサインを受けながら、どうプレーを選択していくのかは容易ではないはずである。遊撃手の池田聖摩はある練習の存在を明かす。
 「ノーアウト満塁の時は攻めないといけないので、ホームを一番意識しながら、後ろのゲッツー(狙い)でした。三振で1アウトをとって、1点OKで少し後ろで取ろうと。相手の打線も結構良かったので、ヒットゾーンを狭めようと考えました。ヒットゾーンが広くなってしまうと、2点、3点と入ってしまうので。平常通りできたのは選択練習のおかげでです。毎日ではないですけど、結構、頻度を入れてるので、本当にそれがなかったらそういうプレー生まれないと思う」

 選択練習とは、あらゆるシチュエーションにおいてどんなプレーをするべきかを選択する練習だ。常に日頃から統一していくという。打球によってそれらの判断は変わるが、チーム内で染み込んでいる練習方法だという。

 1アウトを取ってから5番・下川源次の打球は織田のストレートに押されて二塁へ飛んだが、これを二塁手の田島陽翔が処理、遊撃手の池田へ転送した。ややボールは浮いたが、これを池田が落ち着いて捕球して一塁に送球。併殺が成立した。

 一塁手の小野舜友がガッツポーズを作り、投手の織田が両腕を挙げて小躍りするようにベンチへ走っていく。織田1人の活躍ではなく、チームが一つになって守り切った、象徴的なシーンだった。

 1つ目のアウトを三振で取った織田のワンマンショーではなく、チームでの併殺成立。織田がストレートで押し込んだからこそセカンドへの絶好の打球が飛んだし、これこそが横浜の伝統ともいうべき「戦略的守備」だった。
  その守備で勢いづいた横浜は7回表に9番・千島大翼の適時三塁打などで4点を挙げて試合の大勢を決めた。9回表には5番の江坂佳史が満塁本塁打を放ち5得点。終わってみれば10―1の快勝だったが、村田監督は「非常に厳しい戦いでした」と振り返り、守備面が勝利につながったとこう話した。

「満塁の守備練習は相当やってきたので、平常通りできた。ちょっと二塁の田島の送球がふわっと投げてうわーってなったんですけども、結果的には併殺が取れたんで、本当にやってきた練習が成果として出るんだなというのを再確認できました。うまくいかないことだらけなのが甲子園なので、うまくいかないところでもなんとか粘って我慢して勝ちに繋げられたというところでは、間違いなく成長したと思います。今日は今日で反省して、次の試合に向けて対策を練って、次の試合に向けて頑張っていきたいと思います」。

 窮地での織田の登場は、それこそ映画でも見ているようなスター誕生シーンだった。そこで生まれた、甲子園最速の156㎞。そして、横浜の洗練された守備。昨夏の甲子園でも横浜は歴史に残るようなビッグプレーを見せたが、この日は織田というスターとともに観衆を沸かせ、記憶に残るプレーで3回戦進出を決めた。

取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園は通過点です』(新潮社)、『baseballアスリートたちの限界突破』(青志社)がある。ライターの傍ら、音声アプリ「Voicy」のパーソナリティーを務め、YouTubeチャンネルも開設している。

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配信元: THE DIGEST

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