平和な街オークストリートで平凡な日々を送るプラット家。父グレッグ(ユアン・マクレガー)、母デニース(アン・ハサウェイ)、長女オードリー(メイジー・ステラ)、息子ブライアン(クリスチャン・コンヴェリー)の4人家族は一見幸せそうだが、それぞれに悩みや不安を抱えていた。そんなある日、不思議な光が目撃されたり奇妙な植物が生えてきたりと街に異変が起き始める。徐々に生活へ影響を及ぼし始めた異変を受けて様子を見に家を出た人々は、絶滅したはずの恐竜たちに遭遇する…。
■「求められる役どころをしっかりと表現できるユアン・マクレガーにはいつも刺激を受けています」

アクションエンタテインメントからヒューマンドラマまで、多くの作品に出演しているユアン・マクレガー。専属で日本語吹替えを担当している森川が最初に台本を読んだ感想は「ヒーローじゃないんだ」だった。「ユアンが演じたグレッグは、どこにでもいそうな、どの家庭でも当てはまるような等身大のお父さん。あのユアン・マクレガーがこんな平凡なキャラクターを演じるんだと、思いましたね。この役をどう演じていくんだろうか、というのが台本を読んだ直後の率直な感想でした」。

実際に演じてみて、今作でのマクレガーの芝居をどう感じたのだろうか。「付き合いの長い俳優さんで、“遠い昔、はるか彼方の銀河で…”みたいな役を何度も演じてきましたが、今回は普通のお父さん。ユアン・マクレガーのファンとしては、新しい扉を開いて見せてくれたなという思いでした」。しかし堅実に芝居に取り組む姿勢は、いつもと同じだったという。「いまはハリウッドスターとして輝いていますが、もともとイギリスでしっかり演劇を学んでいます。ですからカメレオン的というよりも、求められる役どころをしっかりと表現できる俳優さん。僕も俳優の端くれとしていつも刺激を受けていますし、勉強させてもらっています」という森川は、収録を終えて彼のいろんな一面にもっと触れてみたいと思ったとふり返った。

完成した映画を観た感想を聞くと「あっという間」という答え。「大迫力の映像に加え、家族や周囲の人たちと絆、人間関係も描かれています。家族一人ひとりの悩みや葛藤がこと細かく描かれているのもいいですね」。悩める普通のお父さんを演じたマクレガーに関しては、得意げにおやじギャグを飛ばす茶目っ気も見どころだという。「ギャグを飛ばして子どもたちがウケてるのを見て、してやったりと得意げな顔をするのは万国共通なんだみたいな(笑)。そんなシーンがある一方、大黒柱として家族を守るため勇敢に戦う姿も見せていて、そんなグレッグをユアンはしっかり演じています」。

どこにでもいそうな平凡な一家が、突然異世界に放り込まれる。4人家族のニューノーマルを描いた本作のキモが、グレッグとアン・ハサウェイ演じる妻デニースの微妙な関係だ。すれ違いが多い2人の夫婦喧嘩のシーンに思わず共感したという森川は「妻の目線で、夫のダメなところがちゃんと盛り込まれてるじゃないですか。どれも妙にリアリティのある描かれ方で、演じながら反省するところが多いなと(笑)。我慢をしていた互いの気持ちが爆発する感情の流れもお見事でしたが、そんな夫婦関係をちゃんと家族のドラマにしてクライマックスに繋げていくところもいいですね」と脚本のすばらしさを讃えた。
■「メルの風変わりでおもしろいキャラクターはとにかく明るい安村さんにぴったり」

いつもどおりに目を覚ますと町は恐竜たちであふれていた…。恐竜アドベンチャーとしても見応えのある本作。かつてない恐竜の描写にも興奮したという。「恐竜たちの日常が描かれてるんです。彼らにとって目の前で動くものは全部が食事みたいなもの。突然現れた人間たちに対しても、いい餌がやってきたみたいな感覚ですよね。いままでの恐竜映画とはまた違う彼らの姿を見せてくれます。いろんな恐竜映画を踏まえつつ、この角度から恐竜のこんな姿を見せたらおもしろいよね、というさじ加減はJ・J・エイブラムスの妙でしょう」。

30年にわたってユアン・マクレガーの声を演じてきた森川。声質が似ているマクレガーを演じる作業には自然体で入っていけるという。「吹替えの時は、その俳優の骨格や発声、どのくらいの空気をどう吸って、どのあたりで声を出してるのかを映像を見て考えます。でもユアンは、そこは考えずナチュラルに演じられるんです。ワンクッション入れて役を作る作業がないので、やりやすいですね」。

デニースを演じた坂本真綾との掛け合いも楽しい本作だが、なにより驚かされたのが本作で吹替えデビューを果たした、とにかく明るい安村だという。「セリフをひと言ふた言で参加される方も多いなか、とにかく明るい安村さんの演じたメルはグレッグたちの隣人で冒頭からずっと出てくる重要な役なんです。吹替えは初めてだとおっしゃっていましたが、役作りもお上手で、風変わりでおもしろいキャラクターもぴったり」と絶賛した。

スリル満点のアドベンチャーと、夫婦や子どもたちの成長のドラマと盛りだくさん。笑いやサプライズ、感動も味わえるまさに王道のエンタメ作。「キャッチコピーにもありますが、どこにでもある日常の中に恐竜が現れる。恐竜から逃れるアドベンチャーだけではなく、ヒューマンドラマもきれいに織り込まれていて、すばらしいエンタテインメントですね」。家族や友だち同士、デートムービーにもぴったりな本作は、日本語吹替版で楽しむにも最適!「字幕だとどうしても文字を追ってしまいますよね。恐竜の細やかな動きを含めこれだけ迫力ある映像ですから、ぜひ吹替えで映像を隅から隅まで味わってほしいですね」。
取材・文/神武団四郎
