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東野圭吾作品が描く“人間ドラマ”の神髄…「白夜行」「祈りの幕が下りる時」「ナミヤ雑貨店の奇蹟」など実写化映画4作品

東野圭吾作品が描く“人間ドラマ”の神髄…「白夜行」「祈りの幕が下りる時」「ナミヤ雑貨店の奇蹟」など実写化映画4作品

「白夜行」
「白夜行」 / (C) 2011映画「白夜行」製作委員会

日本ミステリー界をけん引し続けてきた作家・東野圭吾さんが、68歳で亡くなった。1985年に『放課後』で江戸川乱歩賞を受賞してデビューし、『容疑者Xの献身』で直木賞を受賞。さらに紫綬褒章も受章するなど、日本を代表する作家として数々の栄誉に輝いてきた。本記事では、そんな東野さんが生み出した数々の名作の中から、実写化された映画4タイトルをピックアップし、その魅力をあらためて振り返っていく。

■事件の真相と親子の絆が胸を打つ「麒麟の翼 ~劇場版・新参者~」

東野さんによる長編ミステリー小説『加賀恭一郎』シリーズを、阿部寛主演で実写化した『新参者』シリーズ。その劇場版第1作となる「麒麟の翼 ~劇場版・新参者~」(2012年公開)。“泣けるミステリー”の系譜を受け継ぎながら、巧みな謎解きと深い人間ドラマを融合させた感動作に仕上がっている。

物語は、日本橋の翼のある麒麟像の下で男性の刺殺体が発見されたことから幕を開ける。被害者・青柳武明(中井貴一)は腹部を刺されたまま助けを求めることなく約8分間歩き続けた。さらに、なぜか縁もゆかりもない日本橋を訪れていたため、その不可解な行動が事件最大の謎となる。

容疑者として浮上した青年・八島冬樹(三浦貴大)は現場から逃走中に交通事故で意識不明となり、恋人・中原香織(新垣結衣)は無実を訴えていた。警察が金目当ての犯行として捜査を進める一方、刑事の加賀恭一郎(阿部)は独自に捜査を開始していく――。

本作で本格ミステリーに初挑戦した新垣結衣をはじめ、中井貴一や松坂桃李、菅田将暉、黒木メイサら豪華キャストが集結。ドラマシリーズでおなじみの加賀と松宮脩平(溝端)の軽妙な掛け合いも健在で、物語の中にユーモアを添えている。また、本作では冷静沈着な加賀が父親の存在を通して、人間らしい一面をのぞかせる点も見どころだ。ミステリーとしての面白さはそのままに、親子や愛する人との絆も掘り下げたドラマが展開される。

■加賀恭一郎最大の謎が明かされる「祈りの幕が下りる時」

『新参者』シリーズの完結編として、『加賀恭一郎』シリーズ第10作を映画化した「祈りの幕が下りる時」(2018年公開)。連続ドラマ「新参者」(TBS系、2010年放送)をはじめ、スペシャルドラマや映画「麒麟の翼 ~劇場版・新参者~」を経て描かれるシリーズ集大成として、刑事・加賀恭一郎が最大の謎に迫っていく。

物語は、東京都葛飾区のアパートで起きた女性絞殺事件から始まる。被害者と事件現場の接点が見えない中、捜査線上に浮かび上がるのは舞台演出家・浅居博美(松嶋菜々子)。加賀は独自に事件を追ううちに、やがて失踪した母へとつながる真実へたどり着く。そして、緻密に張り巡らされた伏線が少しずつ回収され、事件の裏に隠された“切ない真実”が明らかになる――。

前半はテロップを用いながら捜査の過程を丹念に追い、後半ではカットバックによって謎を解き明かしていく。そんな本作は『半沢直樹』シリーズや『VIVANT』シリーズを手掛ける福澤克雄が監督を務め、福澤監督ならではの演出や壮大な音楽、さらに実力派俳優陣による迫真の芝居が相まって、物語にさらなる深みを与えている。

事件の鍵を握る浅居を松嶋菜々子が演じ、山崎努、溝端淳平、田中麗奈らレギュラー陣も登場。ミステリー作品の緊張感に加え、それぞれの人生や祈りを軸にした濃密な人間ドラマが展開される。集大成にふさわしい感動作であり、加賀という人物の人間性を余すことなく映し出した一本だ。

■時を超えた手紙が紡ぐ感動ファンタジー「ナミヤ雑貨店の奇蹟」

“東野作品史上、最も泣ける感動作”と称される同名小説を映画化した「ナミヤ雑貨店の奇蹟」(2017年公開)。主演に山田涼介、共演に西田敏行さん、尾野真千子、林遣都、門脇麦、村上虹郎、寛一郎、成海璃子、萩原聖人と豪華キャストが名を連ねる。

2012年、悪事を働いた矢口敦也(山田)ら3人の若者が、一夜を明かすため廃業した「ナミヤ雑貨店」に忍び込む。すると店に突然、1980年を生きる魚屋ミュージシャン・松岡克郎(林)から悩み相談の手紙が届く。3人は戸惑いながらも、当時の店主・浪矢雄治(西田さん)に代わって返事を書くことに。手紙のやり取りを重ねるうち、相談者たちと自分たちとの共通点に気付き、やがてナミヤ雑貨店との繋がりも明らかになっていく――。

“手紙だけが時空を超える”という独創的な設定が魅力の本作。牛乳箱を介して届けられる手紙や、映画オリジナルとなる路面電車の演出によって観る者をファンタジーの世界へと誘う。2012年と1980年の異なる時代を生きる人々の人生が少しずつ交錯し、東野作品らしい巧みな仕掛けも張り巡らされている。人と人との絆や人生の選択を描きながら、“奇蹟”を1つのトリックとして成立させた構成は本作ならではの醍醐味と言えるだろう。

また敦也役を演じた山田は、奇妙な出来事に戸惑いながらも、人の人生と向き合う中で少しずつ変化していく青年の心情を繊細に表現。一方、西田さんは、亡くなるまで真摯に悩み相談に応えていた浪矢役を温かな人柄で優しく演じた。さらに、門脇演じるセリが歌い、林演じる松岡が口ずさむ山下達郎の主題歌「REBORN」も作品世界を彩り、時空を超えた不思議な物語をより印象深いものにしている。

■堀北真希が悪女を熱演、“究極の愛”と“人間の闇”を描いた映画「白夜行」

東野さんによる同名ベストセラーを映画化した人間ミステリー「白夜行」(2010年公開)。本作は、日本でのドラマ化(2006年)や韓国での映画化(2009年)などを経て制作された劇場版だ。

昭和55年、質屋店主が殺害される事件が発生した。決定的な証拠がないまま事件は幕を閉じるが、担当刑事・笹垣潤三(船越英一郎)は被害者の息子・桐原亮司(高良健吾)と、容疑者の娘・唐沢雪穂(堀北真希)に違和感を抱く。やがて成長した2人の周囲では不可解な事件が次々と発生するようになる――。

本作の見どころは、堀北真希と高良健吾が作り上げた雪穂と亮司という人物像にある。堀北は、自分の手を汚すことなく周囲を破滅へ導く“悪女”を、妖艶さと力強さを併せ持つ芝居で演じ切った。清純なイメージとのギャップを生かし、雪穂の危うさと底知れない闇を鮮烈に映し出している。一方、高良は雪穂に愛をささげる亮司を、狂気と苦悩を抱えながらもどこか人間味を感じさせる人物として熱演した。

また、船越英一郎演じる笹垣も物語を支える重要な存在だ。笹垣は過去に最愛の息子を失った悲しみを抱え、その思いを雪穂と亮司に重ねながら事件を追い続ける。単なる執念深い刑事ではなく、2人を救いたいという切実な思いが行動の原動力となっている。犯罪の真相だけでなく、加害者と被害者、その家族までも含めた人間の痛みや喪失に目を向ける視点が、東野作品ならではの奥行きあるドラマを生み出している。

東野さんが描き続けたのは、巧妙な謎解きだけではない。その奥にある人間の弱さや優しさ、愛情、そして人生そのもの。時代を超えて愛される作品の数々を改めて見返すことで、ミステリーの枠を超えた深い感動と、人の心に寄り添い続ける物語の力を実感できるだろう。

なお、動画配信サービス・Huluでは、8月1日より「祈りの幕が下りる時」「麒麟の翼 ~劇場版・新参者~」の見放題配信をスタート。さらに、「ナミヤ雑貨店の奇蹟」「白夜行 (2010)」「ある閉ざされた雪の山荘で」「さまよう刃」などの東野圭吾作品も多数配信中。

※山崎努の“崎”は正しくは「たつさき」

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