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川崎でプレーする大先輩が病室にサプライズ訪問。次は日本一の瞬間を仲間と――夏の王者・静岡学園を牽引する主将の覚悟と決意

川崎でプレーする大先輩が病室にサプライズ訪問。次は日本一の瞬間を仲間と――夏の王者・静岡学園を牽引する主将の覚悟と決意


 夏の全国高校総体は静岡学園の初優勝で幕を閉じた。サッカー王国・静岡に覇権が戻るのは実に30年ぶり。当時2年生だった小野伸二を擁した清水商(現・清水桜が丘)が制して以来の日本一だった。

 試合後、舞台となったJヴィレッジスタジアムでは喜びを分かち合い、選手やスタッフで勝利の余韻を噛み締めた。大会前の怪我でチームに帯同していなかった10番の松永悠輝(3年)も近大附との決勝(2−1)に訪れ、記念撮影の時にスタンドから下に降りて仲間の輪に合流。負傷者が続出した中で逞しく戦ったチームメイトとともに、最高の笑顔で優勝の余韻に浸った。

 しかしーー。本来いるべき選手がもうひとりいない。キャプテンのMF足立羽琉(3年)だ。「足立だけは替えがきかない」と川口修監督が絶大の信頼を寄せるボランチの存在感は計り知れないのだが、決勝戦は不在。初戦となった大分との2回戦(8−0)の前半17分、足立は芝に右足首を引っ掛けて脱臼骨折の大怪我を負ったからだ。

 怪我をした瞬間に涙が溢れてくるほどの痛みを感じ、重症を悟った足立。即座にトレーナーに処置をしてもらい、救急車で病院へ向かった。
 
「まだ試合が終わっていなかったし、僕が交代した時は0−0。歓声とかでなんとなく点が入ったんだろうなっていう記憶はあるけど、とにかく結果を聞いて安心した。とにかく試合のことが一番気になっていたので」

 選手権にも間に合わない可能性がある大怪我を負ったなかでも、気にかけていたのは仲間のこと。パニックにも陥ってもおかしくない状況下で、チームメイトに対しての想いだけは変わらなかった。

 翌日にはチームを離れ、静岡市内の病院で診察を受けた結果、全治6か月と判明。この時点で最後の選手権に間に合わないことを伝えられ、川口監督と電話で会話をした時も冷静に言葉を交わすことができなかった。

「何も考えられなかった。もう、みんなとサッカーができない…」

 頭が真っ白になり、絶望の淵に立たされた。だが、その翌日に地元・川崎の病院でセカンドオピニオンを受けると、4か月でピッチに戻れると告げられた。落ち着きを取り戻し、次の目標が定まった足立は大津との準決勝(1−0)が行なわれた31日の午前中に手術。1日の決勝は川崎市内の病院から戦況を見守っていた。ただ、素直に優勝が嬉しかった反面、サッカー人として本音もあったという。

「嬉しかったけど、自分は現場にいない。悔しい気持ちが正直あったし、マジで今までのサッカー人生で一番悔しかった。そこにいたはずなのに、みたいな気持ちがあって。最初は優勝の瞬間をテレビで見た時は嬉しかったし、みんなも嬉しそうだったし。でも、悔しさだけは残っていた」
 
 仲間を思う気持ちに嘘偽りはないが、悔しさはある。だからこそ、選手権こそはという想いが沸き立っている。

 入院中には嬉しいサプライズもあり、リハビリへの意欲もさらに高まった。それが子供の頃から憧れていた大先輩との遭遇だ。

 手術後、静岡学園の2学年先輩で川崎に籍を置くDF野田裕人から連絡があった。一人でお見舞いに来るという話だったのだが、扉が開くと、そこには静岡学園の大先輩で野田のチームメイトでもあるMF大島僚太がいたのだ。
 
「地元が川崎で子供の頃からフロンターレファン。スクールにも通っていたので。高校の先輩とはいえ面識もなかったので、憧れの人が目の前にいてびっくりした」

 短い時間ではあったが、言葉を交わした事実は特別。サッカーに対する情熱は今まで以上に高まった。

 インターハイ優勝後、チームメイトとは顔を合わせていなかったが、8月14日に行なわれた「ECLOGA U-18 IN 埼玉」の最終日に仲間と再会。午前中にリハビリを済ませてから、家族の車でチームをサプライズ訪問した。神村学園、昌平、奈良クラブU-18といったチームを抑えて優勝すると、仲間の輪に入った足立もカップリフトに参戦。松葉杖を着きながら久々に仲間と同じ時間を過ごし、もう一度ピッチに立つ覚悟と決意が固まった。

 悔しさももどかしさもある。それでも過去を悔やんでも何も始まらない。もっと強くなって戻ってくることを誓ったキャプテンは、最高の景色を見るために最後の冬に向けて走り出した。

取材・文●松尾祐希(サッカーライター)

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配信元: SOCCER DIGEST Web

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