猫に関する素朴な疑問はいくつもあるが、いつか書いてみたいとずっと思っていたのが「前肢」のこと。要するに前足だ。前足といっても変に思わない人が多いかもしれないが、つい「手」と言ってしまうことがある。猫が前足を使って遊んでいる姿や顔を洗う姿を見ていると、足とは言えないからだ。
実際、足なのか手なのかと、疑問に思っている人がいないかググってみたら、やっぱりあった。「猫の前足は手か足か」…。
AIによる回答はこうだ。
「猫の前足は、日常会話では手とも足とも呼ばれますが、解剖学的には前肢(前足)とみなすのが一般的」
「生物学・解剖学的には猫は四足動物なので、前肢(前足)、後肢(後足)と表現します」
つまり、学問的に猫の前肢は「足」だ。
ただ、本来的にはそうなのであって、我々が日常で足と言おうが、手と言おうが、勝手にどうぞという気がしなくもない。そもそも「猫の手を借りたいくらい忙しい」という表現だってある。この場合「猫の足を借りたい」とは絶対に言わない。
そもそも我が家の10歳になる猫(写真)の場合、後足でバランスを取って立ち、前足の状態はどうみても足ではなくて手だ。そして別の2匹を猫じゃらしで遊ばせることがあるが、ジャンプして猫じゃらしをパンチしようとする。パンチすると表現することからしても、手ということになる。
ご飯をあげる時に犬に言って猫には言わないこと
そういえばもう30年以上も前、米俳優ミッキー・ロークが両国国技館でボクシングの試合に出たことがあった。この時、たまたま観戦していて、軽く手を出したパンチが当たって1ラウンドで相手をKOした。
会場で見ていると「パンチが当たった」のはわかったものの、あんなパンチでKOかと思ったのだが、翌日の新聞には「猫パンチ」の大きな見出しが躍った。けっして「犬パンチ」とは言わない。やはり猫の前肢は手に見える、または思えるということだろう。
ところで、犬と猫の前肢については不思議なところがある。犬にご飯をあげる際に「お手をしてから」と言うのは一般的だ。この場合、犬の前肢は手になる。お手をする猫はいるかもしれないが、しかしご飯をあげる前に「お手をしなさい」とは言わないと思う。
ただ、言えることは犬でも猫でも、前肢を足ではなく手と捉える人、捉えることがけっこう多いということだろう。これから猫について書く時は、前肢を特別な事情がある時以外は「手」と表現しようと思う。
8月19日に我が家の4匹の猫の話を書いた新刊「猫のいる人生」(新潮新書)が発売されます。ご一読下さい。
(峯田淳/コラムニスト)

