
開幕2戦未勝利のジュビロが向き合うべき現実。横浜FCとの差が内容にも結果にも表われた敗戦。主将の言葉に説得力「普通に負けた」
2026/27シーズンのJ2優勝、そしてJ1昇格を本気で目ざすジュビロ磐田にとって、開幕2試合は望んでいたスタートとはならなかった。
8月8日にホームで迎えたブラウブリッツ秋田との開幕戦は1-1の引き分け。続く16日の横浜FC戦は、大きな注目を集めたMUFGスタジアムで1-3の敗戦を喫した。
もちろん、横浜FC戦には判定を巡って磐田に不運な部分もあった。
特に2失点目につながった51分のPKは、メインスタンド上段の記者席から見てもペナルティエリアの外だったと判断できる場面だった。映像で見返せば、もちろん明白だ。
さらに終盤、2点を追う磐田は、岩武克弥の退場で10人の横浜FCを押し込むなか、キャプテンの藤原健介が蹴った直接FKがゴールラインを割ったようにも見えたが、得点は認められなかった。仮にあそこで2-3になっていれば、残り数分の景色は大きく変わっていただろう。
そういう意味で、ジャッジによって勝負の行方を左右されてしまった部分があったことは否めない。とりわけ1点差で迎えていた後半早々に、件のPKで2点差に広げられた影響は小さくなかった。
しかし、それを差し引いて90分を振り返っても、現時点での横浜FCとの差が内容にも結果にも表われた試合だったと言わざるを得ない。
磐田は難しい状況に追い込まれる以前から、横浜FCのビルドアップや左サイドの流動的な攻撃に対し後手に回り、自分たちが武器とするはずの前線からの圧力を十分に機能させられていなかった。
後半に数的有利となってからは押し込んだものの、J2優勝を掲げるチームという基準で見れば、「判定が違えば勝てたかもしれない」という総括だけで終わらせてはいけない一戦だった。
むしろ、横浜FCとの間に見えたチームとしての完成度の差こそ、磐田が真正面から受け止めるべき現実ではないか。
百年構想リーグから須藤大輔監督のもとで試行錯誤を重ねてきた横浜FCに対して、磐田は秋葉忠宏監督を迎えてまだチーム作りの途上にある。その時間的な違いは当然ある。しかし、J2優勝を目標に掲げる以上、「新体制だから」という事情もまた、勝負の世界では言い訳にはできない。
だからこそ、矢印を外側に向けてはいけない。この試合で象徴的だったのが、前半のプレッシングだ。
秋葉監督が就任してから繰り返し求めてきたのは、「超攻撃的、超アグレッシブ」なサッカーである。前線から相手に圧力をかけ、高い位置でボールを奪い、ゴールへ向かう。その姿勢自体が今季の磐田のアイデンティティになるはずだった。
ところが横浜FCの3バックを軸としたビルドアップに対して、磐田は誰がどこまで出ていくのかを整理し切れなかった。
相手のシャドーやウイングバックも含めて複数の選択肢を作られると、前線から後方までの矢印が揃わない。1トップで先発した太田龍之介も「プレッシングの部分は全体として揃ってなかった」と認めている。
「相手の枚数が多かったので、迷いがあった。バチッとハマるシーンがあまりなくて、ちょっと行きづらかったというのはありましたけど、そこはやっぱり試合中に修正しないといけなかった」
右サイドバックで先発した川﨑一輝も難しさを感じていた。
横浜FCの左サイドでは複数の選手が関係を作り、川﨑の周囲に「2枚、3枚いる」状況を作り出した。その対応に意識を割かれた結果、本来の武器である運動量を活かした攻撃参加も影を潜めた。
「守備をメインに考えてしまったところが大きい。今日の試合はそういう感じで入ろうと思ったので、それが引きすぎたかなというのはあります」
もちろん、試合が始まってから起きた問題を選手間で解決する力は必要だ。それができるチームこそ強い。しかし、状況に応じた解決を可能にするためには、その土台となる共通理解が不可欠でもある。「この場合は誰が出る」「相手がこう動いたら誰が受け渡す」という原則が共有されているからこそ、ピッチ上で応用が利く。
横浜FC戦では、そのベースの部分にもまだ整備すべき余地があることを露呈した。
秋葉監督も前半の戦いには強い不満を示している。
「前半はもう前の圧力がまったくなかったんで、ハーフタイムで雷を落としましたから。トップ、両ワイド、もっと迫力を持って行けと。あれでは我々が求めているところじゃないですし、戦う姿勢ではない」
ただし、こうした問題は選手個々のメンタリティだけで解決するものではない。「もっと前から行こう」「もっとアグレッシブに戦おう」という意識を高めることは必要だが、相手が自分たちの想定とは異なる配置やボールの動かし方をしてきた時に、誰がどこへ出て、空いたスペースを誰が埋めるのか。その判断に迷いが生じれば、いくら前への意識を強く持っていても、チーム全体として連動したプレッシングにはならない。
だからこそ、トレーニングからの積み上げに加え、ミーティングや日頃からの選手間のコミュニケーションを通じて共通理解を深め、試合中に起こる「想定外」をできるだけ「想定内」に変えていく作業が必要になる。
それは守備だけの話ではない。ボールを奪った後に、どこを使って前進するのか。相手を押し込んだ時にどう崩すのか。リスタートをどうチャンスにつなげるのか。あらゆる局面で判断の基準を共有し、ピッチ上で迷う時間を減らしていかなければならない。
その土台があって初めて、選手たちはイレギュラーな状況に自分たちで解決策を見つけられる。秋葉監督が求める「超攻撃的、超アグレッシブ」という姿勢も、単純に走る量や気持ちの強さだけで実現するものではないはずだ。
戦うことを大前提として、その戦いをチームとしてどう機能させるのか。横浜FC戦で問われたのは、まさにその部分だった。
後半開始から乾貴士と為田大貴を投入すると、磐田の前への圧力は強まった。さらに桑原航太、ジョアン・ヴィクトルらを送り込み、横浜FCに退場者が出てからは相手陣内へ押し込んだ。
しかし、秋葉監督が言う通り、それでは遅い。
「本来は後半に持っている、あの姿が我々の姿です。もっと言えば、0-1になったからあの姿になったら遅い。やはり開始の笛とともに、あの後半の姿を出せるようにしないといけない」
秋葉監督の就任によって、明確にベースアップしている部分もある。目の前の相手と戦う。球際で負けない。ボールを失えば切り替える。そして最後まで走る。
現代サッカーの三原則とも言える「球際、切り替え、ハードワーク」という部分では、52位に終わった百年構想リーグから変化が見える。日々のトレーニングの強度も上がり、選手間の競争も激しくなった。
だが、ここを混同してはいけない。それはJ2優勝への武器である以前に、優勝を争うための大前提である。
磐田だけがハードワークするわけではない。相手も走るし、球際でも戦う。しかも各クラブは自分たちのベースを持ったうえで、「ジュビロ磐田にどう勝つか」をスカウティングし、具体的なプランを準備してくる。
横浜FCがまさにそうだった。
須藤監督は試合後、磐田について「秋葉監督になってインテンシティが非常に上がっていて、球際の強さ、走ること、切り替えの早さ」を警戒していたことを明かした。そのうえで、こう振り返っている。
「その相手の土俵でも打ち勝ちながら、我々らしくボールを動かして、何度もゴールへ向かうことができたと思います」
この言葉は重い。
磐田が自分たちの強みにしようとしている部分を横浜FCは真正面から受け止め、そこで互角以上に戦いながら、自分たちが百年構想リーグから積み上げてきたスタイルまで表現した。
戦うだけでは足りない。戦ったうえで、相手をどう上回るのか。そこまで到達して初めて、J2優勝を狙うチームになれる。
だからこそ、試合後の藤原の言葉には説得力があった。
「普通に負けたと思いますし、ああいう逆境を跳ね返すぐらいのチームじゃないと、J1でも戦っていけないと思うので。今は自分たちにベクトルを向けて、また来週に向けて、チーム全員でもう一回、一からやっていかないといけないかなと思います」
PK判定について思うところは当然あったはずだ。それでもキャプテンは敗因をそこへ預けなかった。
「崩れない、自分たちが崩れないようにっていうのは意識したんですけど、続けて2失点してしまって、自分たちであの試合を壊したっていうふうに思いますし、甘さが出たかなと思います」
乾はレフェリングに対して強い不満を示した一方で、最終的には自分たちの強さへ話を戻している。
「もちろん、そこから逆転しろよって言われたら、そこまでなんですけど、そういうチームになれるように自分たちはやっていきたいと思いますし、強くなっていかないといけない」
ジャッジに影響されたかもしれない。しかし、前半から横浜FCのビルドアップを捕まえ切れなかったことや、プレッシングに迷いが生じたこと、自分たちの時間を十分に作れなかったのは事実だ。
何よりも、高い目標を掲げるなら、想定外の出来事が起きた時にも試合を壊さない強さが必要になる。
秋葉監督も試合後、そこを強調した。
「ここで下を向いたり、矢印を外に向けてバラバラになることだけは、僕が監督をやっている限りはあり得ませんし、許すことはありません」
判定を含めて、自分たちではコントロールできないものは存在する。それを受け入れたうえで、その状況すら上回る力を身につける必要がある。
「これがJ2だと思っていますし、VARもありません。このなかでも本当にはねのけて、勝ちまで持っていく。その強さ、賢さ、ずる賢さも含めてやらなければ、こういう結果になってしまう。これを何かのせいにしても、何一つ良いことはありませんし、いつまでたっても良くなりませんから」
ただ、ここでも重要なのは「はねのける強さ」を精神論だけにしないことだろう。
相手の配置を読み、プレスの基準を共有し、ボールを奪った後の出口を作り、押し込んだ時の崩しを磨く。セットプレーの攻守を含め、試合のあらゆる局面で選手たちが共通の判断基準を持つ。
そうした日々の積み重ねがあるからこそ、試合中に予期せぬことが起きても迷わずプレーできる。
秋葉監督自身も、その答えをトレーニングに求めている。
「寝て起きて急に強くなるわけでも、急に逞しくなるわけでもない。日々どれだけ自立しながら高みを目ざしてやれるかだと思います」
今季の磐田が目ざしているのは、J2に残ることでも、プレーオフ圏に滑り込むことでもない。
J2優勝だ。
そう考えれば、開幕2試合で勝てなかったという結果だけを見る必要はない。それ以上に重要なのは、なぜ勝てなかったのかを正しく捉えることである。
前線からのプレスをどう整理するのか。相手が想定とは異なる配置を取った時にどう修正するのか。ボールを保持した時にどう相手を動かし、ゴールへ結びつけるのか。攻守の切り替えをどう得点機会へ直結させるのか。そして、想定外の判定やアクシデントが起きても、試合そのものを手放さないために何が必要なのか。
秋葉監督の言葉を借りれば、「必ず90分かけて圧力をかけ続ける。もう最初から『俺らは行くんだ』という、もっともっと二度、三度、四度、五度と行く」だ。
その姿をビハインドになってからではなく、キックオフから出せるチームにならなければならない。
開幕から1分け1敗。38試合のシーズンは始まったばかりで、現時点の順位や勝点差を必要以上に悲観する段階ではない。
しかし、「まだ2試合だから」で済ませていい内容でもない。
J1昇格のライバルになり得る横浜FCとの直接対決で、現時点でのチームとしての完成度の差を内容と結果の両方で突きつけられた。
それが国立で見えた現在地だ。だからこそ、秋葉監督が繰り返す「矢印」の方向が重要になる。
「この苦しい状況は誰も助けてくれませんから、しっかりと自分たちではねのける。どんな状況だろうと、こういうゲームで勝点1、もしくは逆転まで持っていく。何があっても、はねのける強さを身につけたい」
次節はヤマハスタジアムに徳島ヴォルティスを迎える。
そこで求められるのは、単なる今季初勝利だけではない。横浜FC戦で突きつけられた課題にどう向き合い、トレーニングとコミュニケーションによってどれだけ「想定外」を減らし、キックオフから自分たちのフットボールを押し出せるのか。
判定への悔しさも、国立で感じた完成度の差も、すべて自分たちが強くなるための材料に変えられるか。開幕2戦未勝利という現実以上に、ここから問われるのはそこだ。
取材・文●河治良幸
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