
「『感動しました』とよく言ってもらいますけど…」日本でサッカーを“文化”に。上田綺世の熱い思い「W杯が1つの分岐点になったらいい」【現地発】
フェイエノールトの上田綺世の今季初ゴールは、豪快なダイビングヘッドだった。
8月16日、ホームのゴアヘッド戦でDF渡辺剛とともに先発した上田は、1-0のリードで迎えた38分、ハジ・ムサがクロスを入れると同時に相手DFの前に走り込んで身体を投げ出すと、ドンピシャのヘッドでゴールネットを揺さぶった。
「ゴール前で前に入るのか、後ろを取るのか、そういう駆け引きは得意という話をしています。ようやく今日は自分のスイートスポット、自分が仕事しやすいポジションにボールが何本か入ってきました。それが1つ点につながって良かったです」
フェイエノールトはその後、2点のリードを守り切れず、2-2の引き分けに終わった。後半、バレンテのスルーパスに抜け出し、GKと1対1になったシーンで上田がしっかりシュートを決めていれば、3点差のセーフティリードを奪えるはずだった。
「そうです。前半に外したのもそう。僕がこの2つのシーンで決めないといけなかった。チームとしてもチャンスはそれ以外にもあったので、そこ(で決め切れなかったの)が今日の試合の結果のすべてかなと思います」
開幕のスパルタ戦(1-0)、そして今回のゴアヘッド戦で上田が打ったシュートは合わせて6本。ゴールの確率は6分の1だが、そのシュート、もしくはシュートに至るまでの過程にはそれぞれに味があり、きっかけ1つでゴールを量産しそうな雰囲気だ。
そのうちの1本が、スパルタ戦での胸トラップからの左足ボレー。シュートはミスキックとなりバーを越していったが、イメージとフィーリングは決して悪くない。
「そうですね。“噛み合い”とよく言っていますけど、噛み合ってくれば点も増えるんじゃないかなと思います」
Jリーグもオランダリーグと同時に開幕し、第2節ではJ1、J2、J3の各カテゴリーで観客動員数の記録を塗り替えた。北中米W杯の熱と、夏休みの相乗効果がJリーグを盛り上げている。その熱を冷ましてはいけない。
「サッカーを日本でブームではなく、文化にしていくことが、日本が将来、ワールドカップで優勝したり、世界のトップになっていくためには必要だと思うんですよね。4年に1回の盛り上がりではなく、継続してサッカー文化を根付かせていくことが日本の課題だと思います。
そのためにはJリーグが盛り上がらなきゃいけないし、そこから海外に出て行った選手が世界で活躍して、日本の人にもっとサッカーに注目してもらって、もっとサッカーに興味を持ってもらわないと、(せっかくの熱が)冷めてしまう。
ワールドカップが終わって、まだ熱がある今、Jリーグがもっと盛り上げていかなきゃいけないし、もっともっとJリーグのレベルが上がって、若い選手がどんどん出てきて、僕ら代表でプレーしているような選手がもっともっとステップアップして、チャンピオンズリーグのような主要大会で主力として出て、優勝するような選手が仮に数人出てきたら、日本人が世界でもっと評価されると思うんですよね。
個人的な目標はそれぞれありますけれど、日本サッカー界全体としては、そこを目ざしていかないといけない。ワールドカップ優勝を掲げる以上、個人の活動あっての日本代表ですので、そこのレベルアップが何をおいても必要だと思います」
アスリートとしての上田の思考は“目の前のことをフォーカスし、一つひとつクリアーしていくこと”だ。昨季に得点王になったのもゴールを積み重ねた結果であって、目標として掲げていたわけではない。
しかし、そんなサッカー選手の“今”は、“次の世代”につながる投資でもある。日本のどこかで、「自分も上田選手のようにヨーロッパで得点王になりたい」「自分も上田選手のようにワールドカップで得点するようなストライカーになりたい」と夢見る子が、やがて10年後、15年後、Jリーガーとなり、なかには世界に羽ばたく選手も出てくるだろう。
サッカーというスポーツはそのことを繰り返すことによって、国としての競技レベルや文化レベルが上がっていくのではないだろうか。
「ワールドカップが、見ていた人の1つの分岐点になったらいいと思います。だからこそ、僕らがああいう舞台でより良い結果を残さないといけなかった。『感動しました』ということはよく言ってもらいますけど、僕らは優勝を目ざしてたんで、もっと上に行くことにトライし、それを実現していければ、日本サッカーのレベルがさらに上がっていくと思うんですよね。その結果、選手にとって代表に入る門が狭くなっていく。僕らもどんどんステップアップできたら、より代表の価値が上がっていく。
僕は今月、28歳になりますけど、次の大会の話をすれば32歳の夏。もちろん僕は目の前のことを一つずつやっていって、次のワールドカップに出られたらいいと思ってますけど、ポジションを取られておかしくない年齢だと思う。むしろ、その方がもしかしたら日本サッカーにとってはいいかもしれない。
だけど僕も『この4年間でレベルアップできたことを今回の大会で実感した』といろんなところで言ってますけど、またこれからの4年間で成長できると思う。だから次の大会にも出たいと思ってます。
日本サッカーのレベルがその4年間でまた上がって、優勝がもっと現実的な目標に感じてもらえたら、サッカーが文化になるのかなと思います」
冷ましてはいけない日本サッカーの熱。そのことを語る上田の口調は熱かった。
取材・文●中田 徹
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