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開幕2連敗、8失点。浦和に今、必要なのは「前へ走ること」ではなく「前へ出るための道」を作ること。矢印だけでは目的地にたどり着けない

開幕2連敗、8失点。浦和に今、必要なのは「前へ走ること」ではなく「前へ出るための道」を作ること。矢印だけでは目的地にたどり着けない


 開幕戦はガンバ大阪に3-4で競り負け、続くサンフレッチェ広島戦は1-4の完敗。曺貴裁監督が率いる浦和レッズは、2026/27シーズンの開幕から2連敗、2試合で8失点という厳しいスタートを切った。

 2節終了時点で19位。数字だけを見ても重いが、それ以上に深刻なのは、失点の多さが偶発的なものではなく、現在のチームが抱える構造的な問題と結びついているように見えることだ。

 G大阪戦では22分にマテウス・サヴィオが退場し、70分近くを10人で戦いながら3得点。一時は逆転する粘りも見せた。数的不利でも運動量を落とさず、前へ出続けた姿には新体制の可能性が確かにあった。

 だが、11人対11人で行なわれた広島戦では、その可能性の裏側にある問題を容赦なく突きつけられた。1-4で敗れた事実以上に、チームとしての完成度で明確に上回られたことを重く受け止めるべきだろう。

 曺監督が浦和で目ざしている方向そのものは分かりやすい。前からボールを奪いに行く。奪えば前へ運ぶ。人数をかけてゴールへ向かう。相手の出方を待つのではなく、自分たちからアクションを起こしてゲームを動かす。

 浦和が2026/27シーズンから曺監督を招聘した以上、この「前への矢印」がチーム作りの出発点にある。だから2連敗したからといって「もっと後ろで守ればいい」「とにかくボールを持って試合を落ち着かせればいい」という話でもない。それはまた別のサッカーだからだ。

 低い位置にブロックを作って守るにも、ボールを保持してゲームをコントロールするにも、それぞれ立ち位置、距離感、選手の役割、ボールの動かし方がある。それを日々トレーニングしていないチームが、試合の途中から突然別のスタイルへ変わっても、簡単に機能するものではない。

 現時点で浦和が探すべきなのは、「前への矢印」とは別の道ではない。その矢印を勝利へつなげるための方法論である。
 
 まず深刻なのは守備だ。

 前からプレッシャーをかけるサッカーに運動量が必要なのは当然である。しかし、運動量を要求することと、運動量に依存することはまったく違う。

 相手の選択肢をチームとして限定し、狙った方向へ追い込み、そこで一気に距離を詰める。そのために走るのであれば、選手の運動量には明確な目的がある。

 一方で、最初のプレスを外されて、空いたスペースを別の選手が走って埋める。その選手が動いたことで生まれた穴を、さらに別の選手が走って埋める。この連鎖になれば、守備は戦術ではなく個々の運動能力と瞬間的な判断に依存する。広島戦では、その危うさが何度も表われた。

 浦和が前から奪おうとしたところを広島は冷静に外し、逆サイドまで使って前進した。16分の鈴木章斗の先制点も、浦和からすればピッチを広く使われた末に大外から狙われた形だった。45+2分の塩谷司の勝ち越し点も含め、広島は浦和の守備の矢印を見ながら空いた場所を使い続けた。

 誰が相手のボールホルダーへ出るのか。その瞬間、誰が次のパスコースを消すのか。最初のプレスを突破された場合、どこでいったん守備を再設定するのか。逆サイドへ振られた時、何を捨て、何を絶対に締めるのか。

 そうした基準がチームとして整理されていなければ、「前から行く」という言葉だけが独り歩きし、最後は誰かが全力で戻って帳尻を合わせるしかなくなる。

 これは90分の1試合だけでも危険だが、長いシーズンを考えればなおさらだ。走力を、相手を追い込むためではなく、崩された後の穴を塞ぐために大量消費するサッカーに、どれほど再現性があるのか。暑さや連戦、コンディション低下が加わった時に同じことを続けられるのか。開幕2試合で8失点という数字は、その疑問を突きつけている。
 
 方法論の不足は攻撃にも見える。現在の浦和は、ゴール前へ人数をかける意識自体は強い。しかし、肝心の「そこまでどうやってボールを運ぶのか」が十分に整理されていない。

 前方に4人、5人と選手が入ったとしても、その選手たちへ良い状態でボールが届かなければ、人数の多さには意味がない。むしろ前へ人を送り込んだ結果、中盤にボールを受けられる選手が減れば、ボールホルダーの選択肢は少なくなる。無理に縦へ入れて失えば、今度は後方に広大なスペースが残る。

「前へ人数をかける」と「攻撃に厚みを作る」は同じではない。広島戦でも、縦の関係が噛み合った時には前進できた。南野遥海から金子拓郎へボールが入り、最後に渡邊凌磨がフィニッシュした30分の攻撃などは1つの形だった。

 問題は、それがチームとして何度も再現できるものになっていないことだ。ボールを奪ったら誰が最初のラインを越えるのか。誰が中間で受けるのか。その間に誰が相手を引きつけるのか。最終的にどの選手を、どのエリアで勝負させたいのか。

 そこまで逆算した前進の経路が必要になる。現在、その不足を個人能力で補っている代表格が金子だ。右サイドの金子にボールが入れば、自ら相手を外して前へ進める。背負った状態から前を向くこともできるし、ドリブルによって局面を変えられる。それは間違いなく浦和の武器だ。

 しかし、だからこそ危険でもある。ビルドアップの出口で金子を使い続ければ、本来もっとゴールに近い場所で活かしたい彼の能力を、自陣や中盤からチームを前進させる仕事で消費することになる。

 ボールを引き出す。相手を剥がす。前へ運ぶ。そのうえで最後の局面にも入る。1人のアタッカーにそこまで要求するのは重すぎる。金子が“何でもやらなければならない”状態は、金子が優れている証明であると同時に、チームとして前進する仕組みが足りない証明でもある。
 
 浦和が本当に彼を活かしたいのであれば、金子が前を向いた瞬間には、すでにゴールが近くにある状態を増やすべきだろう。その意味で、1つの鍵になり得るのがサミュエル・グスタフソンだ。

 後方からボールを引き出し、相手と味方の位置を見ながらボールを動かす。一本で無理に縦へ入れるのではなく、横を使って相手をずらし、次に縦へ入れる状況を作る。現在の浦和に不足している感覚を持つ選手の1人だ。

 だが、「ビルドアップに困っているからグスタフソンを入れればいい」というほど単純ではない。

 グスタフソンが横へ動かした瞬間、周囲がすでに前へ走り切っていたら次の受け手はいなくなる。逆に周囲が縦パスだけを待てば、彼が相手を動かす意味もなくなる。大切なのは、グスタフソンが持っているゲームの感覚をチームへどう組み込むかである。横パスは逃げではない。より良い状態で縦へ進むための準備にもなる。

 その感覚を、現在の「前へ、前へ」という浦和のスタイルと接続できれば、前への矢印を曲げることなく、前進する方法を1つ増やすことができる。

 ただし、それを取り入れれば別の問題も生まれる。ボール保持時の配置を変えれば、ボールを失った瞬間の守備配置も変わるからだ。

 現在ですらプレスを外された後のスペース管理に問題を抱えるチームが、攻撃だけを改善しようとして立ち位置を変えれば、トランジション時のリスクをさらに増大させる可能性がある。だから、守備と攻撃を別々の問題として直していては間に合わない。

 前から奪う。奪った後にどう前進するのか。そのためにどのように配置するのか。そこで失った瞬間、誰が最初に守備をするのか。そして再び前から奪える状態へどう戻すのか。

 そこまでを1つの循環として設計できて初めて、「前への矢印」はサッカーになる。そもそも「なぜ曺貴裁なのか」という問いは消えない。そして、現在の問題を曺監督だけの責任として処理するのも違う。むしろ厳しく問われるべきなのは、監督を選び続けてきたクラブ側だ。
 
 浦和はリカルド・ロドリゲス体制を終え、その後にマチェイ・スコルジャ、ペア=マティアス・ヘグモ、再びスコルジャ、田中達也を経て、今季から曺監督を迎えた。それぞれの監督に能力があるかどうかという話とは別に、その志向するサッカーの振り幅は小さくない。

 だからこそ問われる。浦和は、どんなチームになりたいのか。監督が代わればサッカーが変化すること自体は当然だ。ただ、監督が変わるたびにチーム作りの前提そのものまで大きく変わるのであれば、選手編成を含めた積み上げは難しい。

「なぜ曺貴裁なのか」

 この問いに最終的に答える責任は、曺監督ではなく彼を選んだクラブにある。浦和をどんなクラブにしたいのか。そのために曺監督の何を必要としたのか。そして今季だけではなく、その先にどういうチーム像を描いているのか。

 結果が出ない時ほど、その説明は必要になる。開幕2試合を見て、最も慎重にならなければいけないのは、「エネルギーはある」「前へ出る姿勢はある」「選手は戦っている」という評価で、現状を包み込んでしまうことだろう。

 もちろん、それらは必要だ。ただ、J1で優勝や上位進出を狙うクラブにとって、走ること、戦うこと、諦めないことはプラスアルファではなく前提条件である。

 G大阪戦で10人になっても3点を奪った。それは評価できる。しかし3-4で負けた。広島戦でも前へ行こうとした。しかし1-4で敗れた。プロのトップレベルでは、「頑張った結果、何ができたのか」まで問われる。
 
 前へ行こうとしたこと自体ではなく、前へ出たことで相手の選択肢を何回、奪えたのか。人数をかけたことではなく、その人数によって何回、決定機を作れたのか。走った距離ではなく、その走力をどれだけ相手を困らせるために使えたのか。現時点で楽観材料は多くない。

 2連敗、8失点。広島戦は退場者もなく、11人対11人でチーム力の差を突きつけられた。前線からの守備は整理不足で、攻撃の前進方法も限定的。状況判断やゲームマネジメントにも問題があり、個人の運動量と金子らの局面打開力への依存も大きい。

 さらに、その背景には近年、繰り返されてきた監督交代とクラブのスタイルの振れ幅という、今季だけでは解決できない問題まである。そこはもう、現場サイドだけで解決できることではない。それでも、あえて希望を見出すなら、少なくともチームが向かおうとしている方向だけは曖昧ではないことだろう。

 G大阪戦で10人になってもゴールへ向かい続けた姿は偶然ではない。広島戦でも南野、金子、渡邊が縦につながったように、選手の意図が一致した時には相手ゴールへ迫る場面を作れている。つまり、ゼロから方向を探す必要はない。必要なのは、その方向へ進む「道」を作ることだ。

 前への矢印を弱めるのではなく、矢印をどこへ向けるのかを決める。全員が闇雲に前へ走るのではなく、誰が前へ出て、誰がその背後を支えるのかを決める。金子が1人で前へ運ぶのではなく、金子を勝負させたい場所までチームとしてボールを届ける。

 グスタフソンを起用するなら、彼1人に試合を作らせるのではなく、彼の持つ「相手を動かしてから前進する」という感覚をチームの武器にする。どうやって「前へ」という思想を、具体的なプレー原則にまで落とし込めるか。そこが曺監督に課された仕事だ。

 開幕2連敗というだけなら、まだ38試合中の2試合にすぎない。しかし、2試合で8失点した内容まで「まだ2試合」で片づけることはできない。浦和に必要なのは、さらに気持ちを強くして前へ走ることではない。前へ出るための道を作ることだ。

 守備では、誰が、いつ、どこで奪うのか。攻撃では、誰が、どこを経由してゴール前までボールを運ぶのか。そして攻撃と守備をどう1つにつなぐのか。

 矢印だけでは目的地にたどり着けない。その矢印で通る道を曺監督が示せるか。そして「なぜこの道を選んだのか」をクラブが説明できるか。今の浦和に問われているのは、まさにそこだ。

取材・文●河治良幸

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配信元: SOCCER DIGEST Web

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