現地時間8月12日(日本時間13日、日付は以下同)、ラッセル・ウエストブルックが自身のソーシャルメディアで引退を表明し、18シーズンにわたるNBAキャリアを終えた。
193㎝・91㎏のポイントガード(PG)は、レギュラーシーズン通算1301試合で平均20.9点、6.9リバウンド、8.0アシスト、1.6スティールをマーク。3ポイントをはじめとするロングレンジのショットこそ波があったとはいえ、全盛時はプルアップから放たれるミッドレンジジャンパーと超人的な身体能力から繰り出すドライブで相手守備陣を翻弄し、数多くのハイライトシーンを生み出した。
翌13日、1980年代に206㎝の超大型PGとして一世を風靡したマジック・ジョンソン(元ロサンゼルス・レイカーズ)は、自身のXアカウントでウエストブルックのキャリアをこう称えていた。
「殿堂入りにふさわしい、並外れたキャリアを築き上げたラッセル・ウエストブルックの引退に、私は心からお祝いしたい。ラッセルはNBA史上最も身体能力の高いポイントガードで、その圧倒的な実力によってレギュラーシーズンにおけるトリプルダブルの歴代最多記録を打ち立てた」
ウエストブルックはレギュラーシーズン通算2万7176得点でPGの歴代トップ(全体14位)、通算9025リバウンドはガードの選手で歴代最多(全体60位)、さらにNBA歴代5位の通算1万351アシストを記録し、コートを去った。
マジックが指摘したように、シーズン通算トリプルダブル数は138回のマジック(歴代4位)、181回のオスカー・ロバートソン(元シンシナティ・ロイヤルズほか/歴代3位)を抜いて209回で堂々トップに立っている。
「毎晩コートに立って全力を出し切ること。それが、俺が常にプライドを持ってこなしているもの。そうしたことができる機会に恵まれて感謝しているし、それが決して当たり前だとは思っていない」
5年前にウエストブルックがそう口にしたとおり、毎晩コート上でアグレッシブな姿勢を崩さず、チームが勝利するために全身全霊を尽くして戦い抜いた。トリプルダブルを記録した試合で153勝56敗(勝率73.2%)の驚異的な戦績を残したことが、その偉大さを如実に表している。
NBAではデリック・ローズ(元シカゴ・ブルズほか)、ジョン・ウォール(元ワシントン・ウィザーズほか)といった驚異的な身体能力を持つPGが複数いた。ただし、両選手ともケガによって全盛時の身体能力を失い、そこからアジャストすることに苦戦してきた。
一方のウエストブルックは、2013年プレーオフで当時ヒューストン・ロケッツのパトリック・ベバリーと接触したことでヒザの半月板を損傷。翌2013-14シーズンまで長引く大ケガを背負うも、そのシーズン(46試合)を除くとどのシーズンでも57試合以上に出場してきた。サクラメント・キングスでプレーした昨季も含めて“ウエストブルックのプレー”を最後まで貫いたことも特筆すべきだろう。
リムを破壊してしまいそうなほど迫力満点のダンクを炸裂し、幾度も観衆を沸かせた男には、ショットセレクションやターンオーバーなどネガティブな声も聞かれた。それでも、己の信じる道、そのプレースタイルを世界最高のプロバスケットボールリーグで完遂したと言っていい。
カリフォルニア州ロングビーチで生まれ、大学時代まで同州で過ごしてきたウエストブルックは、NBAでロサンゼルスを本拠地に置くレイカーズとクリッパーズでもプレーしてきた。
全盛時を過ぎ、チームケミストリーを構築できずに機能しなかったとはいえ、マジックはウエストブルックがコート外でこなしてきたことも高く評価していた。
「ラッセルについて私が何よりも尊敬しているのは、彼が決してこのゲームに対して不誠実な姿勢をとらなかったこと、そして数多くの慈善活動を通じてロサンゼルスに恩返しをしようとしてきた情熱にある。彼と彼の家族に、神の祝福がこれからもありますように」
将来のバスケットボール殿堂入りが確実視されるウエストブルック。シーズン通算トリプルダブル数の記録は、一昨季にデンバー・ナゲッツで共演したニコラ・ヨキッチ(198回/歴代2位)が上回ることになりそうだが、4度の“シーズン平均トリプルダブル”は並大抵のことではない。いずれ、ウエストブルックが成し遂げた偉業の数々が、今よりも高く評価される日が訪れるのではないだろうか。
文●秋山裕之(フリーライター)
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