第63回を迎えた「全日本学生室内テニス選手権大会」が8月7日から東京・有明テニスの森室内コートで開催され、16日に男子シングルス・ダブルスの決勝が行なわれた。大学テニスは例年、夏に「全日本学生選手権(インカレ)」、冬に全日本学生室内(インカレ室内)を開催してきたが、今年は両大会の時期を交換。真夏の炎天下に屋外でプレーする危険を考えれば、今後に向けて1つの指針となる試みと言えよう。
有明の室内コート8面で進行するため、大会期間を16日間に延長し、男女を数日ずらして実施。16日に男子が先行して最終日を迎えることとなった(女子は22日)。注目の男子シングルス決勝は、第1シードの髙妻蘭丸(筑波大学4年)と第8シードの本山知苑(早稲田大学3年)が対戦。本山が4-6、7-6(4)、6-4で逆転勝ちし、初優勝を飾った。
タイトルに懸ける思いがより強かったのは4年生の髙妻だろう。関東学生は夏春と制している髙妻だが、全国大会の優勝にはテニス人生を通して縁がなく、インターハイや昨年のインカレ室内も準優勝。「やはり全国は重みが違う。大学ではインカレで優勝したい思いで4年間やってきた」と語る
一方の本山はダブルスでは全日本ジュニア、インターハイの2冠を手にしたが、大学ではタイトルがなく、特にシングルスは苦戦してきた。「まさか自分が優勝なんて」と無欲で決勝に臨んだ。
試合序盤はそんなメンタルの差が出たのか、髙妻が気合のこもった攻めで突っ走る。強力なサービスからスピンの効いたフォアを広角に振り、甘いボールは分厚く叩いてウイナーを量産。「サービスとボレーが自分の強み」という本山に対し、「前に出させないように意識した」という髙妻の先手攻撃が奏功し、6-4で第1セットを先取する。
しかし第2セット中盤から流れが変わる。「勝ちが見えてラケットが振れなくなり、球が浅くなった。気持ち的に引いたところがある」と髙妻。タイトルへの執着が強いゆえの心の揺れだった。加えて、持病でもある腰痛が試合中にひどくなり、サービスやコートカバーに影響が出てくる。
「どんどん前に出てプレッシャーをかけ続ける」という姿勢を貫いていた本山は、この機を逃さなかった。「最初は緊張して雰囲気に飲まれたが、自分のやるべきことをやろうと集中した」と言うように、サーブ&ボレーやリターンダッシュも含め、長いラリーに持ち込まず積極的に前に出て、ポイントを重ねる。特にポジションを大胆に前に上げてのリターンは、威力が落ちてきた髙妻のサービスを狙い撃ちした。
第2セットはタイブレークの末に本山が奪還。第3セットは3-3まで均衡が続いたが、第7ゲームで髙妻が2本のダブルフォールトを犯してサービスダウンし、ついに力尽きた。「最後、欲しいところで弱気になってダブルフォールが出た」と髙妻。
ここで初めて優勝を意識したという本山は、5-4からのサービングフォーザマッチをダブルフォールトでスタートするが「まだ終わっていないと気持ちを切り替えて」、最後まで強気のプレーを継続し勝ち切った。「本当に信じられない」――無欲でつかんだ大学初タイトルだった。
シングルスに続いて行なわれた男子ダブルス決勝は、本山が島笙太(早大2年)とのペアで2冠を目指したが、眞田将吾/ジョーンズ怜音(慶應義塾大学4年/3年)が立ちふさがる。特に光ったのは眞田の切れ味鋭いプレーで、超高速のリターンと突き球、反応の速いボレーで主導権を掌握。ジョーンズも堅実なプレーで支え、6-4、6-2で早慶対決を制し、初優勝を飾った。
2人は幼なじみで、「12歳の時に組んで優勝し、10年ぶりにタイトルを取れて感慨深い」と眞田。ジョーンズは「(真田の)引退までに取りたい気持ちがあった。ダブルスが得意ではない自分を、将吾がキャリーしてくれた」とパートナーに感謝した。
◆男子シングルス決勝
○本山知苑(早稲田大学3年)[8] 4-6 7-6(4) 6-4 髙妻蘭丸(筑波大学4年)[1]●
◆男子ダブルス決勝
○眞田将吾/ジョーンズ怜音(慶應義塾大学4年/3年)[8] 6-4 6-2 本山知苑/島笙太(早稲田大学3年/2年)[6]●
※[ ]内の数字はシード順位
取材・文●渡辺隆康(スマッシュ編集部)
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