ヨーロッパ各地で、過去の常識が通用しない山火事が相次いでいる。
ベルギー東部リエージュ州の自然保護区「ハイ・フェンズ」で8月14日に発生した火災は、約3000ヘクタールを焼失。2011年に約1400ヘクタールを焼いた同国最大記録を大幅に更新し、周辺では住民ら約600人が避難した。消火活動にはベルギー軍のほか、ドイツやルクセンブルク、オランダなども加わっている。
フランス南西部ジロンド県でも7月22日、巨大な山火事が発生。約4万2000ヘクタールが焼けて住宅240棟以上が被害を受け、一時は22万人が避難した。フランスの今夏は観測史上最悪の山火事シーズンとされ、スペインやギリシャでも記録的な火災が続いている。
なぜここにきて「史上最悪の山火事」が連発しているのか。環境問題ジャーナリストは、
「これらは消火が困難となる『第6世代火災』と呼ばれるもの。世界の火災学者が今、最も恐れている現象です」
火災を拡大させるループ構造が第6世代の特徴だといい、
「炎の熱で上昇気流が生まれ、高さ10~15キロ級の積乱雲『火災積乱雲』へと成長する。火災自体が激しい突風や落雷を発生させ、自ら新しい火を生み出してしまうんです」(前出・環境問題ジャーナリスト)
そしてこれには複合的な原因があるというのだ。環境問題ジャーナリストがさらに続ける。
「異常気象による高温と乾燥により、複数の巨大火災が同時多発したのが第5世代。そこから第6世代へ進化した理由に挙げられるのが『燃料構造の変化』です。熱波と少雨で森林が乾く一方、農村の過疎化や長年の消火優先策で、下草や枯れ木といった燃料が蓄積してしまった。そこへ強風が重なることで、火災が気象を支配するほどのエネルギーを持つようになりました」
消防隊の延焼予測がまるで役に立たなくなる
フランスの火災では、同国で初めて火災積乱雲が公式に確認された。雲から生じた落雷が、元の火元から離れた場所へ新たな火災を広げたとされている。
「風向きが短時間で激変し、火の粉が何キロも先へ飛ぶため、消防隊が立てた延焼予測がまるで役に立ちません。地上部隊は包囲される前に退避せざるをえず、航空機も濃煙や乱気流のため接近できない局面がある。火を消すどころか、人間が近づくことすら許されないんです」(現地特派記者)
実は日本も無関係ではないのだといい、
「日本では2月から5月の乾燥と強風の時期に山火事が多い。管理されない森林が増える中、記録的な少雨と高温、強風が重なれば、同様の巨大火災が起きる可能性は否定できません」(前出・現地特派記者)
今や山火事は「天気を作り出す災害」へと変わりつつあるのだ。
(川瀬大輔)
1977年生まれ。国内外のビジネス、スポーツ、政治、社会問題を取材するフリー記者。

