横浜DeNAベイスターズのオフィシャルスポンサーであるJCOM株式会社の冠協賛試合「J:COM 光 ナイター」が8月18日、横浜スタジアムで開催された。
この日の始球式に登壇したのは、神奈川県相模原市(M.Tボクシングジム)在住で、WBC世界3階級制覇を達成したプロボクサーの中谷潤人。
中谷はWBCスーパーバンタム級世界ランク1位に位置し、日本ボクシング界を代表するパウンド・フォー・パウンドの一角として世界を舞台に戦い続けるトップアスリートとして君臨している。
自身初となる始球式のマウンド。横浜スタジアムの大きな拍手と歓声に包まれながら、大歓声の中でマウンドに立った中谷選手は、世界王者らしい堂々とした佇まいでピッチャーマウンドへ向かった。
ベイスターズのユニホームに身を包み、一塁ベンチ脇から颯爽と登場した中谷は、華麗なフォームからキャッチャーの戸柱恭孝目掛けて右腕を振ったが、ボールは無常にも右側に逸れてしまった。
マウンド上で肩をすぼめ苦笑いを浮かべたが、見事に大役を果たした中谷に対し、スタンドからは惜しみない拍手が送られ、試合前の横浜スタジアムは大いに盛り上がりを見せた。
始球式を果たした直後、取材陣の前に姿を見せた中谷は「だいぶ力んだなと(笑)。やっぱボクシングに向いてるんだなって感じました」と、悔しさと照れくささが入り混じった笑顔で第一声。
自身のピッチングに点数を求められると、間髪入れずに「0点じゃないですかね」と即答。「ストライクを入れる気でいたんでね、ストイックなので」と厳しい自己評価の理由を説明し、「またチャンスがあれば頑張りたいです」と、マウンドでの雪辱を誓った。
戦いの場であるボクシングのリングとは一味違う横浜スタジアムでの環境には「すごく熱気がありました。マウンドに立たせてもらって、すごい緊張感があったので、こういうところで投げられている方はやっぱりすごいなっていうのを感じました」と、異競技のアスリートへ深い敬意を示した。
さらに、事前の想定と違った点として「リングは平坦なんですけど、マウンドは結構傾斜があったので、そこら辺の感覚というのが難しかったですね」と独特の傾斜による体の使い方の難しさを語った。
また野球の経験はなく、この初登板に向けてぶっつけ本番に近い状態ではあったものの、所属事務所の先輩であり、読売ジャイアンツやメジャーリーグで大活躍した上原浩治氏と食事をした際にピッチングのアドバイスを受けていたと告白。「体の使い方など教えていただいたのですが……なかなか実践までは難しかったです」と苦笑いを見せ、取材陣の笑いを誘った。
注目の次戦については「まだ次の試合は決まっていないですが、まずはこの階級で世界チャンピオンになるために頑張っていきたいと思います」と力強く本業への決意を新たにしつつ、笑顔で会見を終えた。
普段は拳一つで相手と向き合う中谷にとって、野球のボールを握ってマウンドから投げるのは初めての経験。それでも、世界の頂点を目指して鍛え抜かれた身体能力を感じさせるフォームには、スタンドから「おおっ」と驚きの声も上がった。競技は違えども、トップを目指して日々鍛錬を続けるアスリート。その姿勢は、わずか一球の投球にもにじんでいた。
この日は『横浜漢祭』と銘打たれたイベントの初日。熱く世界と戦い続ける中谷潤人の闘魂は、横浜スタジアム全体にしっかりと届けられた。
取材・文●萩原孝弘
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