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明確な完成度の違い。アーセナルがシティに3発快勝。より整った状態で開幕戦を迎えるのがどちらかは明らかだった【現地発】

明確な完成度の違い。アーセナルがシティに3発快勝。より整った状態で開幕戦を迎えるのがどちらかは明らかだった【現地発】


 イングランドの新シーズンは、毎年この一戦から動き始める。

 前季のプレミアリーグ王者とFAカップ王者が顔を合わせるコミュニティ・シールドが8月16日、カーディフで行なわれた。例年の会場であるウェンブリー・スタジアムがコンサートに使われるため、今年はウェールズへ舞台を移しての開催。アーセナルがマンチェスター・シティを3-0で下し、通算18度目の優勝を飾った。

 22年ぶりにリーグを制したアーセナルが、王者としてシーズンを迎えるのは2004-05シーズン以来となる。8月21日のコベントリー・シティ戦から連覇への挑戦が始まる。開幕戦の5日前に見えたのは、昨季からチーム作りを続ける王者と、新たな出発点に立ったシティの完成度の違いだった。

 英紙『デーリー・テレグラフ』が「試合は事実上、ピッチの片側だけで行なわれた」と記した通り、アーセナルが主導権を握り続けた。ゴール期待値(xG)は2.19対0.77。しかもアーセナルのxGには、得意とするセットプレーから生まれたものが1つもなかった。シティが精彩を欠いていたことは差し引くべきだが、相手が見せた隙を逃さない鋭さがあった。

 鮮烈な印象を残したのが、3400万ポンド(約68億円)でクラブ・ブルージュから加入したクリストス・ツォリスだ。

 カイ・ハバーツの得点を頭で正確にお膳立てし、3点目ではドリブルで守備陣を引きつけてマーティン・ウーデゴーへ渡した。コミュニティ・シールドで1試合2アシストを記録したのは、1996年のデイビッド・ベッカム以来である。

 24歳の歩みは順調ではなかった。2021年に加入したノーリッジでは、3年間で30試合3得点。だが、フォルトゥナ・デュッセルドルフへの期限付き移籍で37試合24得点を挙げ、昨季はベルギーリーグで17得点、23アシストを記録した。イングランドでつまずき、ドイツとベルギーで力を蓄えて戻ってきた。

 爆発的な速さで相手を置き去りにするタイプではないが、持ち味は、ゴールへ近づくほど慌てないことだ。ミケル・アルテタ監督も「残り20~30メートルの場所で非常に落ち着いている。周囲の選手を使うことも、自分で攻撃を終わらせることもできる」と評価する。プレシーズンからの好調を、シティとの公式戦にも持ち込んだ。

 そのツォリスと呼吸を合わせたウーデゴーも、攻撃の中心にいた。中盤と前線の間でボールを引き出して攻撃の速度を決め、最後はGKが倒れ込むのを待って逆へ流し込んだ。昨季は負傷などの影響で継続して調子を上げられなかったが、プレシーズンからの好調は途切れなかった。
 
 2人の攻撃を下支えしたのが、ニューカッスルから7500万ポンド(約149億円)で加入したブルーノ・ギマランイスだった。

 中央だけでなくサイドに生じた危険にも素早く反応し、ボールを奪えば慌てずに攻撃を組み立て直す。前進できる場面では、安全な横パスに逃げず、相手のラインを越えるボールを入れた。マイルズ・ルイス=スケリーと役割を入れ替えながら中盤を支え、ウーデゴーが高い位置を取るための時間と空間を作った。

『ジ・アスレティック』が「本当にアーセナルでの初先発だったのか。とてもそうは感じられなかった」と評したのも無理はない。ただ、ギマランイスは予定通り前半だけで退き、交代後には右太ももにアイスパックを巻く姿が確認された。負傷の程度は明らかになっていないが、開幕を前に状態は気になる。
 
 それでも、後半から代わって入ったのはデクラン・ライスである。さらにブカヨ・サカ、ヴィクトル・ヨケレス、エベレチ・エゼもベンチにいた。アルテタ監督が中盤の「柔軟性と多様性」を強調したように、新戦力の加入は先発陣の質を高めるだけでなく、長いシーズンを戦うための選択肢も増やしている。

 今季の「ビッグ6」で、昨季開幕時と同じ監督が率いるのはアーセナルだけだ。元チェルシーのパット・ネビンは「これは6か月のチーム作りではない。6年間の積み上げだ」と話した。強みは補強した選手の能力だけではなく、すでにある骨格に必要な力を加えられていることにある。

 対照的に、ジョゼップ・グアルディオラ退任後の初公式戦に臨んだシティは、攻守が嚙み合わなかった。プレスを外されるたびに中盤がむき出しになり、ボールを持っても試合を落ち着かせられない。グアルディオラ時代には当たり前だった安定感が失われていた。

 1億1600万ポンド(約231億円)で獲得したエリオット・アンダーソンは中盤で影響力を示せず、60分に交代。アーリング・ハーランドも怖さを欠き、53分に退いた。2人にとって北中米W杯後、この夏初めての実戦だったことや、チーム編成がまだ途中であることは考慮すべきではある。エンツォ・マレスカ監督も「痛い敗戦だが、まだ始まったばかりだ」と強調した。
 
 1試合で新体制の成否は判断できないが、攻守の基準を作り直しているシティと、6年間の蓄積に新戦力を組み込んだアーセナル。両クラブの明暗は鮮明だった。

 コミュニティ・シールドは、リーグの行方を占う確かな物差しではない。プレミアリーグ創設後、この大会を制して同じシーズンにリーグも優勝したのは、34例中8例にすぎない。

 それでも、ツォリスが2点を演出し、ウーデゴーが躍動し、ギマランイスが45分間で中盤に新たな強さを加えた事実は残る。3-0が示したのは、シーズンを通した実力差ではなく、8月16日時点での現在地の違いだった。その差がリーグ終盤まで続くかは分からないが、より整った状態で開幕戦を迎えるのがどちらかは明らかだった。

文●田嶋コウスケ

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配信元: SOCCER DIGEST Web

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