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”前例のない触角”をもつ「1億年前」のホタル近縁種、琥珀から発見

”前例のない触角”をもつ「1億年前」のホタル近縁種、琥珀から発見

琥珀から発見された1億年前のホタル近縁種とそのイメージ / Credit:Yan-Da Li(NIGPAS)et al., Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences(2026). CC BY 4.0

昆虫の触角は、周囲の匂いやフェロモンを感知する重要なセンサーです。

しかし約1億年前には、現在知られている甲虫には見られない構造の「アンテナ」を持つ昆虫が生きていました。

中国科学院の南京地質古生物研究所(NIGPAS)などの研究チームが琥珀から発見したホタルの近縁種には、1つの触角節から形の異なる4本の枝が伸びていたのです。

彼らによると、このような触角構造は現生種にも化石種にも前例がありません。

この研究成果は、2026年7月29日付で『Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences』に掲載されました。

目次

  • 1億年前の琥珀から見つかった「4本枝」の奇妙な触角
  • 複雑な触角で「メスの匂い」を探していた可能性

1億年前の琥珀から見つかった「4本枝」の奇妙な触角

今回研究されたのは、ミャンマー北部カチン州の琥珀に閉じ込められていた雄の甲虫です。

この琥珀は白亜紀中頃のもので、昆虫が生きていたのは今からおよそ1億年前とみられています。

研究チームは、この甲虫を新属新種と判断し、Icaroramus perisiと命名しました。

標本の体長は約11.2ミリです。

体の特徴を詳しく調べたところ、ホタルなどを含む甲虫のグループに属し、その中でも現在は絶滅しているCretophengodidaeという科に暫定的に分類されました。

ただし研究チームは、系統関係にはまだ不確実な部分があり、この分類については慎重に考える必要があるとしています。

そして、この昆虫を特別な存在にしているのが頭部から伸びた触角です。

Icaroramusの触角は全部で12の節からできており、第4節から第11節では、それぞれの節から4本もの枝が伸びていました。

しかも、単に同じ形の枝が4本並んでいるわけではありません。

節の根元から伸びる1対は長く、先端がやや広がっており、比較的粗い毛に覆われています。

一方、節の中ほどから伸びるもう1対は短く細いうえ、より細かな毛を備えていました。

一般に、枝分かれした触角を持つ甲虫でも、1つの節から伸びる枝は1本、あるいは1対です。

ところがIcaroramusでは、形の異なる2対の枝が同じ節から伸びています。

研究者らはこの構造を「quadriheteroramose(1つの節から4本の異なる形態の枝が伸びる構造を意味する表現)」と呼んでおり、同じ構造は現生種と化石種を含め、これまで知られている甲虫では確認されていません。

では、この昆虫はこの異様に複雑な触角を何に使っていたのでしょうか。

複雑な触角で「メスの匂い」を探していた可能性

Icaroramusの触角を理解する手掛かりになるのが、「昆虫にとっての触角の役割」です。

昆虫の触角には、空気中の化学物質を感じ取る小さな感覚器官が多数存在します。

触角が枝分かれすれば表面積が広がり、より多くの感覚器官を配置できるため、微量な化学物質を捉えるのに有利になると考えられています。

実際、現在生きているホタルやその近縁種では、フェロモンによる配偶者探しに強く依存する種ほど、長く枝分かれした触角を持つ傾向があります。

反対に、発光のような視覚的な合図を配偶者探しに使う種では、触角が比較的単純になる傾向が知られています。

そこで研究チームは、Icaroramusの雄も、この複雑な触角で雌が発するフェロモンを捉え、相手を探していた可能性が高いと考えています。

さらに、長い枝と短い枝では表面の毛の形にも違いがありました。

そのため、それぞれが異なる種類の化学物質や、異なる距離から届く化学信号の検出を担っていた可能性もあります。

ただし、化石では個々の感覚器官の種類や配置までは詳しく確認できないため、この「役割分担」については現時点では仮説です。

そしてIcaroramusには、もう1つ興味深い特徴がありました。

腹部には、発光器官とみられる構造も残されていたのです。

そうなると、「ホタルのように光を使って相手を探していたのでは?」と思うかもしれません。

しかし、これほど発達した触角を持っていることから、研究者らは配偶者探しではフェロモンが主役であり、光はむしろ捕食者を遠ざける警告信号として使われていた可能性を重視しています。

ただし、光が求愛にも補助的に利用されていた可能性は否定できません。

興味深いことに、Icaroramusと同じ4本枝の触角を持つ甲虫は現在知られていません。

約1億年前の琥珀に残されたIcaroramusの奇妙な触角は、現代には残らなかった生物の「設計」がかつて存在していたことを示す、貴重な証拠なのです。

参考文献

Amber fossil reveals firefly relative with unprecedented antennae
https://phys.org/news/2026-08-amber-fossil-reveals-firefly-unprecedented.html

元論文

A firefly relative that smelled and glowed: evidence for complex signalling systems in Cretaceous lampyroids
https://doi.org/10.1098/rspb.2026.0295

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

配信元: ナゾロジー

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