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実在した口から「出産」するカエルーー絶滅から復活させるプロジェクト

実在した口から「出産」するカエルーー絶滅から復活させるプロジェクト

※ 画像はイメージです/ Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

母親の口から、小さなカエルが次々と飛び出してくる。

まるでSFのようですが、かつてオーストラリアには、本当にそんな方法で子どもを育てるカエルが存在していました。

その名前は「カモノハシガエル(学名:Rheobatrachus silus)」

彼らは卵を自分の胃に飲み込み、子どもが小さなカエルになるまで胃の中で育て、最後には口から外へ送り出していました。

知られている限り、この「胃を子育ての場所として使う」という繁殖方法を持っていた脊椎動物は、この属の仲間だけです。

しかし、その驚くべきカエルたちは1980年代までに姿を消してしまいました。

ところが現在、40年以上冷凍保存されてきた標本を使い、この絶滅したカエルをよみがえらせようとする試みが続いています。

豪ニューカッスル大学(University of Newcastle)が関わる「ラザロ・プロジェクト」です。

そして研究チームはすでに、絶滅したカエルのDNAを持つ初期胚を作り出すところまで到達しています。

目次

  • 胃で子どもを育て、最後は「口から出産」していた
  • 40年前の冷凍標本から「死んだDNA」を再び働かせる

胃で子どもを育て、最後は「口から出産」していた

一般的なカエルは、水中に卵を産み、そこでオスの精子と受精させます。

孵化したオタマジャクシは水中で成長し、やがてカエルへと姿を変えていきます。

しかし胃内育児ガエルは、そこからがまったく違いました。

メスは受精した卵を自分で飲み込み、胃の中に取り込んでしまうのです。

卵はそこで孵化し、オタマジャクシから小さなカエルへと成長します。

そして十分に成長すると、母親の口を通って外の世界へ出てきました。

つまりこの期間、通常なら食べ物を消化するはずの胃が、子どもを守る「育児室」のような役割を果たしていたのです。

【子供を口から出す母ガエルの画像がこちら】

この奇妙な生態が知られていたのは、オーストラリア・クイーンズランド州に生息していたカモノハシガエル(R. silus)と、その近縁種(R. vitellinus)の2種でした。

カモノハシガエルは1973年に科学的に記載されましたが、1981年までには野生から姿を消し、飼育されていた最後の個体も1983年に死亡しました。

もう一種も1984年に発見されたばかりでしたが、その後ほどなくして姿を消しています。

両種の絶滅には、両生類に深刻な感染症を引き起こすツボカビが関与したと考えられています。

こうして、地球上でも類を見ない「胃で子どもを育てるカエル」は、発見からわずかな期間で人間の前から消えてしまったのです。

しかし研究者たちは、この奇妙な生き物を完全に諦めたわけではありませんでした。

40年前の冷凍標本から「死んだDNA」を再び働かせる

絶滅したカモノハシガエルを復活させようと始まったのが、「ラザロ・プロジェクト」です。

その最大の武器となったのが、40年以上にわたって冷凍保存されてきたカモノハシガエルの標本でした。

【実際の標本の画像がこちら】

チームが試したのは「体細胞核移植(SCNT)」と呼ばれるクローン技術です。

これは、絶滅したカエルの体細胞からDNAの入った核を取り出し、別のカエルの核を除いた卵細胞へ移植する方法です。

チームは、遠縁のオオバードガエル(Mixophyes fasciolatus)の卵を使い、数百回にわたって核移植を試みました。

残念ながら、絶滅したカエルをそのままオタマジャクシや成体まで育てることには、まだ成功していません。

しかし、重要な前進がありました。

移植した卵の一部が分裂を始め、「胞胚」と呼ばれる非常に初期の胚の段階まで発生したのです。

しかも調査の結果、その胚には確かに絶滅したカモノハシガエルの核DNAが含まれていました。

チームはこれについて、「どうやら私たちは“死んだ”DNAを複製させることができたようです」と説明しています。

40年以上前に死んだカエルの細胞核が、別種の卵の中で再びDNAを複製し、胚発生を始めたわけです。

ただし大きな問題も残っています。

保存されているカモノハシガエルの標本は1個体だけで、しかも幼体だったため、精子や卵といった生殖細胞は残されていません。

さらに研究を難しくしているのは、冷凍細胞だけではありません。

チームが比較のために新鮮なカエルの細胞核を使って体細胞核移植(SCNT)を行った場合でさえ、当初は生存可能な個体を作ることができませんでした。

つまり、絶滅種を復活させる前に、まず「カエルで核移植を成功させる技術そのもの」を改善する必要があったのです。

そこでチームは、体細胞核移植(SCNT)の条件を見直し続け、最近ではオーストラリア産の別のカエルをクローン化し、オタマジャクシの段階まで生存させることに成功したといいます。

現在も技術の最適化が続けられており、十分な成功率が得られれば、再びカモノハシガエルの冷凍細胞を使った実験に挑戦する予定です。

絶滅種復活というと、マンモスのような大昔の動物が注目されがちです。

しかしラザロ・プロジェクトが相手にしているのは、わずか40年ほど前まで生きていたカエルです。

しかも手元には、実際の個体から保存された細胞があります。

それでも、死んだ細胞のDNAから健康な個体を作り出すことは簡単ではありません。

現在のところ復活した胃内育児ガエルはまだ1匹もいません。

それでも、かつて死んだカエルのDNAが再び複製され、胚の形成を始めたことは確かです。

もし技術的な壁を乗り越えることができれば、いつの日か再び、母親の口から小さなカエルが姿を現す光景を見ることになるのかもしれません。

参考文献

Frog That “Gave Birth” Out Of Its Mouth Went Extinct In 1983. Could The “Lazarus Project” Bring It Back With A 40-Year-Old Frozen Specimen?
https://www.iflscience.com/frog-that-gave-birth-out-of-its-mouth-went-extinct-in-1983-could-the-lazarus-project-bring-it-back-with-a-40-year-old-frozen-specimen-84402

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

配信元: ナゾロジー

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