
地元メディアは定位置確保を予想。イプスウィッチで前田大然は次のフェーズへ。「通用するか」から「どこまで数字を残せるか」に【現地発】
8月21日に開幕する2026-27シーズンのプレミアリーグ。今夏、セルティックから昇格組イプスウィッチに加入した前田大然は、プレシーズンを通じて左サイドで先発を重ね、開幕スタメンの有力候補に浮上している。大型補強を進めた新天地で、28歳の日本代表FWはどんな役割を担うのか。現地評価とともに、現在地を追った。
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プレミアリーグ開幕を目前にして、前田の立ち位置がはっきりしてきた。
7月25日のイプスウィッチ加入後、プレシーズンマッチでは左サイドを任され、試合を重ねるごとに存在感を高めている。新天地への適応を探るというより、すでに開幕スタメンの有力候補として扱われている。
前田の評価をさらに高めたのが、8月15日に行なわれたプレシーズン最後のウニオン・ベルリン戦だった。22日のサンダーランドとのプレミア開幕戦を見据えた最終テストで、前田は先発。背後への抜け出しやシュートに加え、味方の得点につながるクロスを入れるなど、左サイドから攻撃に絡んだ。
クラブのニュースサイト『TWTD』は、前田を「The excellent Maeda」と評し、ゲイリー・オニール監督も「前半の大然は、左サイドで良かった」と評価した。
さらに地元紙『East Anglian Daily Times』からは「前田は左ウイングの座をほぼ手中に収めた」とまで評された。加入から約3週間。プレシーズンで先発を重ねるなかで評価を高め、地元メディアから定位置確保を予想する声まで出ているのだ。
前田は加入直後から、主に左サイドで継続的に起用されてきた。ウィコム戦(8月1日)ではシュートがゴールポストを叩き、左SBのレイフ・デイビスとの連係も早くから好意的に受け止められた。
ラージョ・バジェカーノ戦(8月8日)では左から何度もゴール前へ進入し、決定機を作った。プレシーズンで得点こそなかったものの、攻撃への関与は徐々に増え、SBのデイビスとの縦関係も形になり始めている。
実際、元セルティックFWのクリス・サットンは、前田を「イプスウィッチにとって非常に賢明な補強」と評価している。カウンター時のスピードと背後への動きは「他に類を見ない」とし、守備面での貢献や、チームにもたらすエネルギーも高く評価した。そのうえで「セルティックは彼を手放すべきではなかった」とまで語っている。
ただ、イプスウィッチが前田に期待しているのは、持ち前のスピードや前線からの守備だけではない。セルティックでは2024-25シーズンに公式戦33得点を挙げ、PFAスコットランド年間最優秀選手にも選ばれた。スコットランドで大きく伸ばした得点力を、プレミアリーグでも発揮できるか。28歳で迎える新たな挑戦では、そこも見どころになる。
もちろん、イプスウィッチで簡単にポジションが与えられたわけではない。この夏、クラブは昇格組とは思えない規模の補強を続けている。英紙『ガーディアン』によれば、新戦力への投資額は1億ポンド(約216億円)を超え、純支出額はプレミア4位。クラブ史上最高額の2650万ポンド(約57億円)で獲得したエメルソンをはじめ、元フルアムのイサ・ディオプとサシャ・ルキッチ、元バーンリーのフロレンティーノらプレミア経験者を加えた。昨季はストラスブールで12得点・9アシストを記録した元ブライトンのフリオ・エンシソも加入した。
前線にはエメルソンやエンシソ、ジェイドン・フィロジーン、ジャック・クラークらが揃い、競争は激しい。その中でも前田はプレシーズンを通して先発起用が続き、左サイドで一歩リードした状態で開幕を迎えようとしている。
イプスウィッチにとっても、今回は2年前とは違うプレミア挑戦になる。前回はチャンピオンシップで伸び盛りだった選手を中心に補強し、力の差を埋めきれず、わずか1年で降格した。その反省から、今回は経験と即戦力を重視した補強へ大きく舵を切った。
一方で、新加入選手が多いだけに、チーム作りには時間も必要になる。プレミアに引き上げたキアラン・マッケナ監督が昨季限りで退任し、新たに就任したオニール監督が、大幅に入れ替わった戦力を短期間でまとめられるかは未知数だ。
『ガーディアン』の記者陣による予想でも、イプスウィッチは降格圏の19位。大型補強によって期待値は上がったが、残留争いが厳しいことに変わりはない。
そのなかで、前田の強みが生きる可能性は高い。イプスウィッチは昨季のチャンピオンシップで、高い位置で奪ったボールの22.2%をシュートまでつなげた。この数字は「リーグ平均10.4%」の倍以上で、ボールを奪ってから一気にゴールへ向かう攻撃を得意としていた。
加入時から、前田の走力やプレッシングはイプスウィッチの戦い方に合うと評されていた。プレシーズンでは左サイドでデイビスとの関係を築き、背後へ走り、ゴール前にも顔を出した。期待されていた特長が、少しずつ実戦の中でも表われ始めている。
28歳で迎える初のプレミアリーグ。加入時に問われたのは「通用するか」だった。プレシーズンを終えた今、焦点は開幕スタメンを掴み、その場所を守りながら、「どこまで数字を残せるか」に移りつつある。
前田の挑戦は、すでに次の段階へ進んでいる。
文●田嶋コウスケ
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