球団創設90周年のシーズンに、中日がまたもや最下位の沼に沈んでいる。8月19日の広島戦に敗れて最下位へ転落すると、翌20日も1-2のサヨナラ負け。泥沼の4連敗となり、浮上の糸口がまるで見えない。
崩壊の引き金は、8月20日の9回裏だった。1-1の同点でマウンドに上がったアブレウは、一死からファビアンに四球を与えると、広島は俊足の辰見鴻之介を代走に送った。ここからアブレウは辰見を過剰に意識し始める。審判の「プレー」宣告前に牽制球を投じて無効にされ、その後も牽制を繰り返した。
坂倉将吾を空振り三振に仕留めたものの、続くモンテロには3ボール。ここでアブレウ自身がベンチへ申告敬遠を求めた。井上一樹監督は試合後、アブレウが一塁走者を嫌がったため、勝負にいけというよりも、投手が勝負したい方向を尊重したと説明している。
迎えたモンテロはこの試合で同点ソロを放っており、3ボールから甘い球を投げれば長打を浴びる危険性はあった。申告敬遠が愚策だったとは言い切れないものの、腑に落ちないのは、采配の起点がベンチの判断ではなく、投手だったことだ。走者に神経を使って牽制を繰り返したモンテロは3ボールと制球を乱し、勝負を嫌がった。その時点で監督が考えるべきは、要求に応じるかどうかではなく、「このまま任せて大丈夫か」だったのではないか。
申告敬遠によって、サヨナラの走者・辰見は労せず得点圏へと進む。続く佐々木泰への初球が捕逸となり、辰見は三塁へ。モンテロの代走で一塁にいた大盛穂にも二盗を許すと、フルカウントからの9球目が大きく外れ、四球と暴投が同時に成立した。
こうして中日は、一本の安打も許さないままサヨナラ負けを喫したのである。途中、バッテリーの意思疎通を案じた井上監督や通訳らがベンチを出たものの、ファウルラインをまたぎかけたところで審判から注意される一幕があった。マウンド上だけでなく、ベンチまで冷静さを失ったように映る光景だった。
「球団創設90周年90敗」ブラックジョークが再燃
「ああいう幕切れは予想しなかった」
井上監督はそう振り返るが、開幕戦の記憶が残るファンには空々しく響く。3月27日、同じマツダスタジアムで行われた広島戦。中日は5-1のリードを9回に追いつかれ、延長の末にサヨナラ負けを喫した。あの日、9回のマウンドにいたのもアブレウだった。
アブレウは開幕戦後に15試合連続無失点を記録しており、今回の起用そのものを責めるのは酷だろう。だが、同じ球場で同じ投手が再び9回に崩れた時、「予想しなかった」はどうなのか。異変の兆候を察知し、最悪の展開を防ぐことこそ、ベンチの役割である。
8月20日の試合終了時点で46勝65敗1分、残り31試合。一時は5位に浮上しながら、広島との直接対決で再び最下位へと引きずり降ろされた惨状を見れば、「90周年90敗」というブラックジョークが再燃するのも無理はない。
本拠地バンテリンドームのベンチでは、井上監督が試合中にピンク色のつり革を握る。開幕前には笑いを誘ったそのつり革も、最下位へ逆戻りした今となっては、勝利を掴めず、つり革だけを掴んでいると揶揄されかねない。「90周年に90敗」の語呂合わせだけは、現実にしてはならない。
(ケン高田)

