テニスの不正行為を監視する第三者機関「ITIA」(国際テニス・インテグリティ・エージェンシー)から、ドーピング検査で陽性反応を示したとして暫定的な出場停止処分を科された男子元世界ランキング13位のニック・キリオス(オーストラリア/現919位)。波紋が広がる中、昨年2月に現役を引退した女子元世界1位のシモナ・ハレップ氏(ルーマニア/34歳)が公式インスタグラム(@simonahalep)のストーリーズ(24時間で自動消去される投稿)で発信した意味深なメッセージが注目を集めている。
ITIAによると、キリオスは今年6月22日、「マヨルカ選手権」(スペイン・マヨルカ/芝コート/ATP250)の期間中に検体を提出。その後、世界アンチ・ドーピング機構(WADA)の認定検査機関が、コカインの代謝物であるベンゾイルエクゴニンの存在を確認した。本人もコカインを使用した事実を認めており、「大きな過ちを犯した。その責任は全て自分にある」と謝罪している。
報道を受け、ハレップ氏は投稿で名指しこそしなかったものの、キリオスに向けたとみられる次のような言葉を綴った。
「倒れている人を決して蹴ってはいけない。人生とは不思議なもので、立場が逆転することがある。そしてさらに不思議なことに、事故と自らの選択との違いを明らかにすることもある」
周知の通りハレップ氏は、2022年の「全米オープン」(四大大会)で採取された検体から禁止物質が検出され、翌23年に4年間の資格停止処分を受けた。本人は意図的な摂取を一貫して否定し、その後スポーツ仲裁裁判所(CAS)への訴えによって処分は9カ月に短縮されたが、当時キリオスは含みのある言葉でハレップ氏を次のように批判していた。
「テニス選手は怪しいものを摂取するのをやめるべきなのかもしれない。1日の終わりに鏡で自分を見て、『そうだ、自分は正しいことをした』と言えるようにするべきだ。それはそんなに難しいことではない」
またキリオスは、ドーピング問題に揺れたヤニック・シナー(イタリア/男子現1位)やイガ・シフィオンテク(ポーランド/女子現5位)にも厳しい言葉を投げかけるなど、これまで一貫してクリーンなスポーツの実現を強く訴えてきた。しかし今回、自らもドーピング違反の当事者となったことで、過去に他選手へ向けた言葉が自身に跳ね返ってきた格好だ。
無論、個々のドーピング問題は事情が異なり、単純に同列に扱うことはできない。それでも今回の行為とこれまでの言動を踏まえれば、キリオスへの批判は避けられそうにない。ハレップ氏の「人生とは不思議なもので、立場が逆転することがある」という言葉は、現在の31歳が置かれた状況を何とも皮肉に映し出している。
文●中村光佑
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