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毎熊克哉 & 近藤華インタビュー 透明人間の末娘を守り、家族は東京へ――笑いと愛情に満ちた父娘のロードムービー『見えない娘 THE INVISIBLES』

毎熊克哉 & 近藤華インタビュー 透明人間の末娘を守り、家族は東京へ――笑いと愛情に満ちた父娘のロードムービー『見えない娘 THE INVISIBLES』

ある中学校の2年生1クラスにカメラを入れたドキュメンタリー『14歳の栞』の竹林亮監督が、『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』を共に手がけた脚本家・夏生さえりと新たに挑んだ新作『見えない娘 THE INVISIBLES』は透明人間の子を持つ家族のハートフルロードムービーだ。生まれつき透明人間の三女と、他の2人の娘と共に島でひっそりと暮らしていたシングルファーザー【学】。ある時、亡くなった妻の母である大女優【エリ子】が入院したというので娘たちと東京へと向かうことになる。透明人間の【ひかり】を連れて一家は誰にもバレることなく無事に祖母の元へたどり着けるのか。

心配性の父親【学】を演じるのは毎熊克哉さん。男手ひとつで愛する娘たちを守ってきた父親を頼りなさを交えながら人間味あふれる演技で魅了する。今回はそんな毎熊克哉さんとしっかり者で妹想いの長女【風子】を愛おしく演じた近藤華さんにお話を伺います。

――最初に脚本を読んだ時の感想を教えてください。

毎熊 読んだ時は、単純に“面白いな”と思いました。まず、そもそもログライン (短くしたあらすじ) が面白いですし、起こる出来事も面白い、“全部が面白い”と思ったんです(笑)。それに映画に込められたメッセージもよく理解出来たんです。竹林亮監督と脚本の夏生さえりさんが伝えようとしていることが、脚本を読んで凄く分かりました。僕自身が演じる上で、色々と悩むことがもしあったとしても、「絶対に面白い映画になる」という自信がありました。

近藤 “どうやって透明人間を撮るんだろう? ”という思いが凄くありました。撮影現場はどんな感じなのかと。“透明人間役はCG撮影の際のグリーンの人が登場するのかな?”と最初は思っていたんですが、実際は全く違っていて。撮影の度に“こうやって撮るんだ! ”とビックリしていました。

――確かに脚本を読んでいるだけだと、撮影の時に透明人間である三女【ひかり】役の鈴木凜子さんがそこで演じていて後で消されているのか。もしくは、そもそもそこに誰もいない状態で皆さんが【ひかり】があたかもそこに居るかの様に演じているのか分かりませんよね。

毎熊 リハーサルの時には、実際に透明人間である【ひかり】役の(鈴木)凜子ちゃんがそこにいて、本番の時にはいないという撮影方法ですね。どのタイミングでその撮影方法を思いついたのか?ちょっと覚えていないのですが、でもリハーサルしか出ないのに、ずっと鈴木凜子さんがそこにいるというのは大変だっただろうと思います。

近藤 それにちゃんとそばにいて声で演じてくれていました。それも踏まえて演じやすかったです。やっぱりそこにいないとまず想像が出来ないので。逆にリハーサルの時に【ひかり】のことが見えていないはずなのにジャンケンをしてしまったりして、本番で“あっ! ジャンケン出来ない”と気づいたりすることもありました。リハーサルで見えていないふりをするのが大変でした。

毎熊 そうそう、さっきそれに気づきました。「見えないものを見るのは大変じゃなかったですか」と聞かれて、よく考えたら見えているのに見えていないふりをする方が難しいですよね (笑)。

近藤 そうなんです。逆の方が難しいです。

――そうなのですね。それに重力も感じないといけないですよね。あれも“さすが”と思いました。

近藤 車に乗るシーンとかありましたよね。リハーサルの時に実際に乗ってもらって練習をしたので、本番では“今はここにいて、それからこうなって、こうなる”みたいなことをちゃんと覚えておくようにしていました。

――なかなかない体験ですね。お話を聞いていると、結構アナログな部分もあるということですね。

毎熊 アナログの方がむしろ多いです。物が動くとかも全部、本当にベテランスタッフの方がテグスで引っ張ってやっているんです。その感じがやっぱり出ていていいですよね、アナログ感が。

近藤 本来はクッションの中の機械の仕掛けで座面が凹むようになっているのですが、機械の不調で凹まないことがあったりして。クッションに【ひかり】が座っているはずなのに凹んでないな、と思いながらそのまま演技を続けていたりして、面白かったです。

――ロードムービーの中で色々な癖のある人と出会います。友近さん演じる【喫茶店の店員:水野】だったり、寺島進さん演じる【タクシー運転手:倉田】だったり、宇野祥平さん演じる【警察官:権田原】だったり、個性あふれる俳優さん達が出演されています。共演されていかがでしたか、思い出に残っているエピソードなども教えてください。

近藤 寺島進さんは本当に優しい方でした。出演されてきた映画の印象から“怖めの方かな‥‥”と思っていたんですが、実際にお会いしたらすごく優しい方で。タクシーの中で長い期間、3人で一緒にいたので、最後には3人娘のおじいちゃんみたいな感じになっていました。三女【ひかり】役の(鈴木)凜子ちゃん、次女【音々】役の(矢山)花ちゃんが寺島さんをどんどん遊びに誘っていたので、私もその輪に入っていく感じでしたね。

毎熊 あれは本当に印象的でした。僕はずっとリハーサルから娘役の3人と一緒にいるので、そこにタクシー運転手として寺島さんが入ってきて、また空気感が変わった時に車内では結構ラフな会話のやりとりがありました。前の席には僕と寺島さん、どちらかというと顔が怖い大人達が座って、後ろに3人が座っていて。(鈴木)凜子ちゃんがやたらと気軽に話しかけていてね。軽い感じで「寺島さんってさ」みたいに話すんですよ (笑)、決して僕には言えない軽い感じで。(矢山)花ちゃんですら「寺島さん、おはようございます」(真面目な声で) と自然にそうなるのに。

近藤 そうなります! そうなっていました (笑)。

毎熊 「え? 何で? 何で? 」という感じで(鈴木)凜子ちゃんが寺島さんに聞くんですよ。そうしたら寺島さんも「いや~、俺も分からないな~」と答えていて、それを聞いているのは面白かったです。

――アドリブなどもあったのですか。

毎熊 アドリブはほぼないんじゃないかな‥‥、ないと思います。

――確かに、透明人間役の凜子ちゃんの台詞もありますからね。好きなシーンを1つ挙げるとしたらどこですか。

近藤 お茶をこぼしそうになるシーンです。

――友近さんパートですね。

近藤 あのシーンは好きですね。もともと友近さんが好きだったので、顔がスローモーションでウワ~ッてなるところとか“面白いな”と思いながらずっとニヤニヤしていました。

毎熊 好きなシーンは、いっぱいあるからな~、何だろう。意外と東京のシーンかもしれません。ずっとロードムービーで、完全な順撮りではないですけれども、東京に着いた辺りは後半の撮影でした。僕は東京に住んでいるので東京はよく分かるんですが、初めて地方から東京に出てきた時に思った「東京だ!」みたいな気持ちをちょっと思い出しました。それに家のシーンとか4人でいるところは、4人だけの世界で完結しているんですが、本当に東京や新宿とかで透明人間の【ひかり】とはぐれてしまったら、想像していたよりも“もう見つけられないかも、終わった”とすごく思えたんです。

――自分の子どもが小さい頃によく迷子になったので、あのシーンを観て思い出して涙があふれました。近藤さんは俳優業を始めて、「こういう俳優になりたい」「こうなったらいいな」という目標みたいなものは、今の時点でありますか。

近藤 “ふと思い出すシーンに私がいたらいいな”と最近は思っています。私はドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』(主演:松たか子)がすごく好きなんです。その中でブロッコリーでたたき合うというシーンがあるんですけど、私はブロッコリーを見ると必ずそのシーンを思い出すんです。そんなふうにふと生活の中でパッと思い出すシーンに自分も居たらいいなと思っています。

毎熊 すごくいい言葉ですね。

――毎熊さんは、今年の第35回日本映画プロフェッショナル大賞の『「桐島です」』で主演男優賞を受賞されました。今後の目標などあれば教えてください。

毎熊 今の近藤さんの言葉が良すぎて‥‥、いやぁ難しいですね。実は何も考えていないと言えば、考えていなくて (笑)。自分たちは、日々、映画の仕事をしたり、今日みたいにインタビューに答えている日があったりしていますが、街を歩いている人の中には、映画を全く観ない人もいると思いますし、たまにしか観ない人もいると思います。でもふと映画を観て「あの映画がすごく好きだ」とか、会話の中に自分が出演している映画が登場すればいいなと思っています。実際、皆が映画を観ているとは思えないですし。でもあまり映画を観ていない人との居酒屋とかでの会話の中で「あの映画、良かったんだよ」と言われたらすごく嬉しいです。その良かった映画に自分が出演している映画が入っているといいなと思います。

――俳優を続けてきて、克服できていない部分やうまくいかない部分とかありますか。

毎熊 克服ですか?癖とかならいっぱいあります。でも、その癖はちょっとマニアックな部分かもしれませんが (笑)。

――セリフは苦労なく覚えられるんですよね。

毎熊 早くはないですけど、セリフは覚えられます。克服?何でしょうね。そうですね、もともと顔が…。目が細くて、唇が薄くて、“ちょっとどうかな?”って時に眉間が寄るのも、たぶん竹林監督はそこを見て当て書きをされたんだと思うんです。怒っているとかではなくって、ただ“何だったっけ? ”と思っている時に勝手になっちゃっているんです。顔自体にハッピーがあまりないんです (笑)。写真とか撮影する時も本当に穏やかな気持ちでカメラを見ているんですけど、「もうちょっと柔らかい表情で」と言われてしまうんです。ものすごく柔らかい気持ちでいるんですが伝わらなくて。柔らかな気持ちをあえて顔で作っていないと人には柔らかく見えないんです。そういうのは今もまだ克服できていないという感じです (笑)。

近藤 私は「ここはコメディだよ」というところで、笑わせられるようなセリフの言い方ができるようになりたいです。何か暗い部分を秘めている役を演じることが結構多いので、コメディにも挑戦していきたいと思っています。

毎熊克哉さんが終始困った顔で娘を心配する父親を演じるというのは新鮮であり、その頼りなさから一緒に東京まで旅をしているかのような気分にまでなれるのです。しかも3人娘はタイプの違う性格で、長女の責任感の強さを表情や立ち姿で体現する近藤華さんの演技は、胸に迫るものでした。みんなで末っ子を守りながら、子どもたちもそれぞれ悩みを抱えていることを丁寧に綴った脚本は、個性あふれる登場人物により笑いが加わり、愛情が詰まっていて家族で観てほしい温かな映画になっています。透明人間だけれどホラーじゃなくて、人の気持ちを知るお話。それも制作チームの優しさからではないでしょうか。

取材・文 / 伊藤さとり
撮影 / 奥野和彦

毎熊克哉 Makeup Designer:MARI / スタイリスト:カワサキタカフミ
近藤華 ヘアメイク: 井手真紗子 / スタイリスト:道端亜未

作品情報 映画『見えない娘 THE INVISIBLES 』

もしも、生まれた娘が透明人間だったら? とある島で、ひっそりと暮らす父と三姉妹の家族。この家族には、ちょっと変わった秘密があった。それは、末娘のひかりが生まれつき“透明人間”であること。娘たちを朗らかに育てた母親が亡くなった後、心配性の父は、三姉妹を人目から隠すように暮らしていた。そんなある日、東京で暮らす大女優の祖母が入院したという知らせが入る。祖母に、ひかりが透明人間であることを打ち明けられないまま、家族は東京へと出発することに。

監督:竹林亮

出演:毎熊克哉、鈴木凜子、近藤華、矢山花、寺島進、余貴美子、友近、濱田祐太郎、宇野祥平、円井わん、浅沼晋太郎、坂口涼太郎、板尾創路、加藤雅也、映美くらら

配給:PARCO、CHOCOLATE Inc.

©THE INVISIBLES Production Committee

2026年8月28日(金) 全国公開

公式サイト mienaimusume

配信元: otocoto

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