耳を疑う「事件」だった。8月20日、東武日光線の新鹿沼駅構内で、特急「スペーシアX2号」と除草作業中の作業員が接触し、4人が死亡した。東武鉄道によれば、除草作業は日中の列車がいない時間に行い、列車が近づけば作業員が退避することになっていた。
除草にあたっていたのは7人で、3人の見張り要員がいた。見張り役が列車の接近を確認したら除草作業員を退避させ、旗で運転士に合図する。それを見た運転士が警笛を鳴らす手順であり、これらの確認は行われていたという。
それでも悲惨な事故が起きたのはいったいなぜか。
鉄道事情に詳しいジャーナリストが疑問を呈する。
「事故原因が明らかになるまでは断定はできませんが、『列車が近づいたら退避する』だけではどうなのか。誰が列車の接近を監視し、7人全員の退避をどう確認していたのか。そこを詳しく知りたいですね」
東急電鉄はAIによる線路内の人物や障害物の検知を実証
実は鉄道業界ではすでにAIを安全対策に活用する動きが進んでおり、東急電鉄は今年6月からカメラやLiDARセンサー(レーザー光照射による距離と形の測定)を搭載した列車で、AIによる線路内の人物や障害物の検知を実証している。
今回の事故で東武鉄道がどのような装置を採用していたのかは、明らかになっていない。
浅草と日光を結ぶ観光ルートは、夏休みの国内旅行客に加え、訪日外国人の利用も多い。インバウンドが拡大する中、鉄道は重要な観光インフラだ。
「日本の鉄道は高い安全性を誇ります。だからこそ今後の検証では『見張りのミス』だけで終わらせず、人間がミスしても事故を止められる仕組みになっていたのかを検証すべきです」(前出・ジャーナリスト)
今回の事故は、その根本を問い直す機会になりそうだ。
(旅羽翼)

