MLB公式サイトは日本時間8月21日、公式サイト記者が選ぶ「今季の打者ランキングトップ10」を更新した。ドジャース・大谷翔平は前回の5位から3位にランクアップ、ホワイトソックス・村上宗隆内野手も前回9位から7位に評価を上げた。
記事を書いたアンドリュー・サイモン記者は大谷について、次のように論評している。
〈今季もう一球も投げなかったとしても、指名打者だけで4年連続のMVPを獲得できるほど特別な才能の持ち主である。月曜日のクアーズ・フィールドでの4安打、2本塁打の活躍を見ればいい。ランキング2位のクロウ=アームストロング(カブス)がナショナルリーグのMVP争いで主導権を握ったからといって、大谷の打撃が冷え込んだわけではない。直近20試合では打率3割5分、出塁率4割9厘、長打率7割3分8厘、8本塁打を記録している〉
オールスター戦欠場後の、後半戦の打撃成績を絶賛したのである。本塁打は右方向、センター、左方向にきれいに打ち分けており、軸足の左膝が回復しているのがわかる。
ロバーツ監督はオールスター休暇中の大谷の左膝治療について、膝関節に溜まった水を抜かずに、関節の動きを滑らかにする高分子ヒアルロン酸製剤「オルソビスク」を注射したと明かした。
「オルソビスク」は米マサチューセッツ州にある中堅医療機器メーカー「アニカ・セラピューティクス(Anika Therapeutics)」が製造する高分子ヒアルロン酸製剤。アメリカ国内ではジョンソン・エンド・ジョンソンのグループ企業が販売しており、参考価格は1本(30mg/2mL)約666ドル、約10万円だ。日本国内で変形性膝関節症に使われるヒアルロン酸製剤の薬価は数百円である。
ヒアルロン酸の原料には一般的にニワトリのトサカが使われるが、「オルソビスク」の原料は感染症の原因にもなる「連鎖球菌」が、自分の身を守るために作り出したバリア成分。菌の発酵で作り出された高分子のヒアルロン酸のみを抽出した、高分子高濃度のバイオ製剤だ。ゼリー状というよりグミに近い高濃度ヒアルロン酸を膝関節内に注入し、膝関節液の粘弾性を補う効果がある。
極太注射針使用で麻酔を使っても激痛を伴う
一度、膝を痛めて炎症を起こすと、炎症物質が膝関節内のヒアルロン酸を分解。軟骨同士がこすれ、より痛みと炎症が悪化するという悪循環が起きる。そこに前述のグミ状のヒアルロン酸「オルソビスク」を入れると、1〜2週間をかけて自分の関節液と混ざって痛みと炎症が治まり、膝の動きが良くなる。
個人差はあるが、1回注入すると効果は半年続くといわれ、後半戦はもちろん、9月をメドにした二刀流復帰、プレーオフ、ワールドシリーズまで持続するとみられる。
粘度が高いため、患部に注入する際にかなり太い注射針を使わねばならず、麻酔を使っても激痛が伴うのが欠点だ。反面、動物由来ではないバイオ製剤なのでアレルギーを起こす頻度は低く、さらに半年に一度の注射で痛みがなくなるなら、日本国内でも10万円を出して「オルソビスク」を使いたい患者はいるかもしれない。
毎週毎週、高齢者が低濃度ヒアルロン酸を打ちに病院を受診するのが日本の開業医、整形外科外来の「ビジネスモデル」。日本国内の医療業界、製薬業界の既得権益が障壁となり、「オルソビスク」が日本国内で承認される予定は今のところない。
(那須優子/医療ジャーナリスト)

