
「僕がやらかして負ける可能性もあった」欧州カップ戦で劇的な決勝点をマーク…日本代表CBが痛感した“紙一重”「賭けに勝ったんです」【現地発】
ヨーロッパリーグ・グループフェーズ進出を懸けたプレーオフ。その第1レグでシント=トロイデン(STVV)は8月20日、ホームでオモニア・ニコシア(キプロス)を1対0で下した。
決勝ゴールは実に劇的なもの。0対0で迎えた後半アディショナルタイム4分、左からのクロスに谷口彰悟がスライディングでファーへ突っ込み、気迫のボレーを決めた。
「狙い通りでした。セットプレーから少しスクランブルになり、そのためスペースがありました。オフサイドにならないように我慢しながら、そのスペースにタイミングよく入ることだけを意識してました。思い通りのボールが来たので、合わせることができました。0対0で終わるのと1対0で終わるのでは大違いなので、得点が取れたことは、個人としてもすごく嬉しいです」
当然、この日のヒーローは谷口。大王わさびスタイエン・スタディオンは「ターニグーチ、ターニグーチ」のチャントで沸いた。
「盛り上がりましたね(笑)。あんまり僕は声援を受けるタイプではないので。“谷口コール”はちょっと新鮮でした。嬉しかったです」
守ってはクリーンシート。自身のゴールによる“ウノ・ゼロ”の勝利はセンターバック冥利に尽きる。ただし後半10分から15分にかけて、谷口の背後をオモニア・ニコシアに突かれ、STVVは三度、大ピンチに陥った。本人も試合後、そこを課題として振り返った。
「前半でけっこう疲れちゃって、試合途中でもう替わろうかなと思ったところもありました」
STVVとの契約を昨季いっぱいで満了し退団した谷口は結局、7月28日に古巣と再契約。まだコンディションが万全ではないなか、2節を終えたベルギーリーグでの出場は1試合、わずか3分にとどまっている。オモニア・ニコシア戦が始まる前、谷口はフレデリック・デ・メイヤー監督と「行けるところまでいこう」と確認しあっていたという。
「(ハーフタイムに疲労を監督に伝えたが交代せず)それで後半の入りが僕の中ではふわっとしちゃった感じがあり、少しピンチを招いたところはあったので大きく反省したい。ただ『ここを我慢したら行けるかな』と思いながらやってたら慣れてきたので… 。まあ紙一重でしたね。僕がやらかして負けてた可能性もありましたし。でも今回はなんとか自分で決めて勝つことができたので、『賭けに勝った』と思いました」
35歳のベテランDFは、5分間のグラつきから見事に自身を立て直した。
「自分に『もう一回ちゃんとやらないとダメだよ』と言い聞かせながらやってた。ずるずるミスが続くような試合は今まで何度も経験してきました。その立て直し方、持って行き方は、これまで何回もやってきました」
谷口がフル出場した、その舞台裏をデ・メイヤー監督が明かす。
「彰悟は経験豊富で、私も全幅の信頼を寄せています。試合開始時には『まずは45分試してみよう。大丈夫なら60分、行けそうなら70分まで』と伝えていました。ハーフタイムに彼が『かなり疲れている』と言ったので、『あと15分頑張ってみよう』と話しました。
彰悟はリーグのベストプレーヤーのひとりですから、監督としてはピッチにできるだけ長く残しておきたいもの。そして後半の15分が経過した後に『まだ行けるか?』と状態を確認すると、彼が『行ける』と答えたので最後まで任せました。彼は自分の身体とコンディションをよく理解していますし、だからこそフル出場できたのです。そして幸運なことに、終了間際にゴールを決めてくれました」
谷口のエリアからピンチを招いたあの5分。指揮官はどう分析するのか。
「確かに彰悟のポジション側から2、3回チャンスを作られましたね。あの時間帯は彼と右バック(ロベルト・ヤン・ヴァンウェセマール)の連携がうまくいっていなかったのが原因だと思います。相手の22番(ムアメル・タンコビッチ)はサイドに流れるのを好む速い選手で、彰悟が彼をマークするために外へ追いかけなければならない場面がありました。そのため相手に何回か決定機を与えてしまいましたが、その後修正し、再びポゼッションを高めて試合をコントロールできるようになりました。守備に回る回数が減り、ボールを保持できるようになったことで、彰悟にとってもプレーしやすい状況になりました。
彰悟はこの試合でかなり走りましたが、持ち前の経験を活かして周囲に指示を出してくれました。時には相手を追いかけ、時には体力を温存する必要があったなか、彼は見事に役目を果たし、素晴らしいパフォーマンスを見せてくれました」
STVVのオーナー企業、DMM.com社の最高執行責任者、村中悠介氏は試合当日、胸の内をXに投稿していた。
「いよいよ今夜です! 創立102年目にして、シントトロイデンのクラブ史上初のUEFAヨーロッパリーグ・プレーオフ。日本企業が経営するクラブとしても初めての欧州の舞台に立ちます」
その歴史的ゲームを、STVVは日本人キャプテン、谷口彰悟の活躍で見事に勝利した。
「その思い、ある種の責任というのはもちろん理解してこの試合に臨んでました。自分たちがヨーロッパリーグ(のグループフェーズ)に行くことができれば日本のサッカー界にとってかなり大事なことになるし、大きなニュースになると思います。そこを担えることに、すごく責任感もあるし、楽しみでもあり、かなり緊張感もありました。だからこの試合にはかなりの覚悟を持って臨みました」
谷口彰悟が主役として輝いた夜だった。
取材・文●中田 徹
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