今回のテーマは「テニスラケットのルール規制」。一般に販売されるラケットは、基本的に国際ルールに準じて製造されていますが、フレームにもストリング(俗に言うガット)にも、ちゃんとルールがあります。それらを整理してみましょう。
プロ選手たちは強烈な打球の応酬に負けないため、ラケットをカスタマイズして使うことが多いですね。選手によっては、プレー環境に応じてストリングのテンションはもちろん、フレームのバランスまで使い分けることもあります。
19世紀後半に現代テニスが形作られた頃、ラケット自体にルールはありませんでした。テニスが競技として広まって、ようやくコートの大きさやネットの高さが統一されましたが、ラケットの形などは自由。
でも20世紀に入る前には「ラケットって、こういうものだよね」という感じで、自然に、何となぁーく定まっていったのです。ラケットがウッド製だった時代に、フェイス面積が「70平方インチ」。フレームの長さは現代と同じ「27インチ」というのが、使いやすいということに落ち着いていました。
ところが1970年代に、プリンスが“デカラケ”を発表したことで、初めて国際組織がザワつきました。
「デカいラケットなんて使えないよ」とタカをくくっていたら、それで育った若手選手たちがどんどん強くなっていくじゃないですか。これは何とかしないと...ということで、初めてラケットへの規制が始まり、その後も特異な形状や特殊な仕掛けが生まれるたびに「あれはどうしようか?」と検討されるようになったわけです。
ラケットフレームのサイズで規制されるのは「全長」と「フェイスの大きさ」。「フェイス面積」ではなく、「天地左右の幅」です。それ未満なら、いくら小さくても問題なしです。
デカラケ後、厚ラケが台頭しますが、規制を受ける前に厚すぎるものは自然に消えていったので、規制されるに至らず、フレーム厚に関しては現在もフリーです。
あとは「プレー中に主軸の慣性モーメントを著しく変化させるもの」「電池などのエネルギー源を搭載するもの」はダメです。フレームが四角形でも多角形でも、凸凹があっても、それを含めて規定サイズ内であればクリアです。
またフレームに使われる素材についても、いまだ規制されたことはありません。木製だったのが、金属製、グラスファイバー製、カーボン製になっても規制を受けていません。
ただし今後、これまで想像もつかなかった素材が登場して、ビックリするほど他社との性能的違いが生じたら、そこで初めて規制が検討されるでしょう。
フレームへの規制が意外に緩やかな一方で、ストリングについてはなかなか細やかな規制があります。例えば、ラケットの打球面に2セット以上のストリングを張ることは許可されていません。
実際に、フェイスの表裏に1セットずつのストリング面を持つラケットが作られたことがあり、卓球のラケットのように表裏で飛び性能が異なるようにできるのですが、これは「2セット」になるのでいけませんね。ここでいう「1セット」とは「縦ストリング×横ストリング」という意味で、それが縦横のマス目が正立した四角形でなければならないという暗黙の了解もあります。
また「ストリング面はおおむね均一で平坦に編まれるか、接着されていなければならない」という規定もあります。これについてはもっと細かく規制され、「ストリングパターンは、中央部が周辺よりも“疎”であってはならない」のです。つまり中央部が“密”なパターンは認められていますが、その逆はダメということです。
さらに、ストリングによって表/裏の両面が違う特性を発揮するようなものはルール違反とされます。縦横ストリングを編まずに、縦ストリングのズレを極端に大きくする「スパゲティラケット」は禁止です。これはかつて国際大会に使われ、大問題を引き起こして禁止されました。
テニス道具に関するルール的な考え方の根本は「道具が飛び抜けた性能を持ってしまうことで、プレーヤー自身の能力以上の効果を発揮させるようではいけない」ということです。
多くのラケットやストリングが『○○性能がスゴい!』など、飛び抜けた性能をアピールする宣伝文句などもありますが、あくまで一定範囲内であることがテニスという競技の均等性を守るわけで、そこからはみ出すほどの性能ではないことを知っておきましょう。
現在、市販されているラケットは、ほぼ全てが国際ルールに反しないようにメーカーが作っていますから、どれを使っても公式大会に出場できるはずです。でも、もしあなたが古~いラケットを使っていたとしたら、現在のルールでは違反として使用を禁止されるかもしれません。
対戦相手に「それって違反じゃありませんか?」と指摘されたら、大会主催者の判断を仰がねばなりませんから、あまりに古いモデルの場合は気を付けましょう。
「僕は大会に出ないから、どんな規制も関係ない!」とおっしゃる方...それは確かにそうでしょうが、徐々にお仲間が減っていくんじゃないでしょうか。
楽しく円満に、テニスライフを満喫するのがいいですね。
文●松尾高司(KAI project)
※『スマッシュ』2025年5月号より抜粋・再編集
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