
『となりのトトロ』の後半、困り果てたサツキのためにトトロがネコバスを呼び出したシーン (C)1988 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli
【画像】「そもそも何だったんだ…」 これが『となりのトトロ』ポスターで謎だった「サツキでもメイでもない少女」です(4枚)
天才も描けない映像があった?
2026年8月21日、「金曜ロードショー」で『となりのトトロ』(1988年公開)が放送されました。TV放送は今回が20回目になります。誰もが知る不朽の名作ですが、実は宮崎駿監督が「入れたかったのに、どうしても描けなかった」幻のシーンがあるといいます。
その場面は、物語の終盤です。メイがいなくなり、サツキが必死に探し回った末、トトロに助けを求めるシーンです。映画では、サツキの訴えを受けたトトロがネコバスを呼び、ネコバスがメイのいる場所まで連れていってくれます。
宮崎監督には、ここにもうひとつの演出プランがありました。後年のインタビューで、こんな説明をしています。
「トトロが千里眼でメイの居場所を見せるシーンを入れたかったんです。トトロが、自分の目の間にサツキを置くと、ギュンと一気に遠くの風景が見えるんです。サツキの視野がトトロの視野に乗って一気に広がって、メイを見つけるというシーンを入れたかったんです」
もし実現していたら、観客もサツキと一緒に、トトロの不思議な視界を体験するような、印象的な場面になっていたでしょう。
ではなぜ、そのシーンを入れなかったのでしょう。宮崎監督はこう続けています。
「どういうふうにやったらいいのかわからない。たぶんCGを使えるようになっていたら、違ったんでしょうけど」
当時のアニメーションは手描きが基本でした。頭に思い描いた「視界の飛躍」を映像として具体化し、しかも観客に伝える方法が見つからなかったのです。そして、見つからないまま、時間切れで断念したといいます。

呼ばれたネコバスが駆けてくるシーンの直前、「幻」となったシーンがあった? (C)1988 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli
しかも宮崎監督は、このシーンについて「『トトロ』の制作が終わってからも、ずっと考えています」と語っています。完成から何年たっても、どう映像化すればよかったのか、考え続けていたのです。
『となりのトトロ』には、ほかにも入れたいシーンがもっとあったそうです。例えば、畑仕事などの田舎の日常、学校生活、村の人との交流など。引っ越してきたサツキとメイの暮らしを、もっと丁寧に描きたかったのでしょう。しかし、尺が長くなるため、最低限に留められたといいます。
ネコバスが走り出すあの場面の前に、もしかしたらサツキは一瞬だけ、トトロの目を通して遠くのメイを見ていたのかもしれない。そんな幻のシーンを知ったうえで『となりのトトロ』を見返すと、あの名場面が、いつもとは少し違って見えてくるかもしれません。
※資料『ジブリの森とポニョの海』(角川書店)
『ジブリの教科書3 となりのトトロ』(文春文庫編集部)
