英スタッフォードシャー大学を中心とする国際研究チームによる、この8月に発表された驚愕の論文がある。学術誌「International Journal of Cultural Property」に公開されたもので、これが欧米のオークションファンを騒然とさせているのだ。
実は今、SNSやオンラインオークションなどネット市場の闇で、人間の骨や動物の遺体といった「ミイラ」が平然と売買されているという。
研究チームが、オンライン上に投稿された128点を分析してみると、そのうち13点に真菌(カビ)のコロニー形成を疑わせる不気味な変色や付着物が確認されたのである。
ホラー映画なら、ここからゾンビが蘇って……となるわけだが、現実の脅威はもっとミクロで、そこには今も生き続ける古代の微生物が存在。それが「ミイラの呪い」のごとく、現代人に襲いかかってくる可能性が高いという。
科学ジャーナリストが解説する。
「近年の科学的調査によって、ミイラ化した遺体は単なる干からびた物質ではなく、極めて頑丈な微生物の動的生態系を維持していることが分かっています。例えば、5300年前の自然氷河ミイラ『アイスマン・エッツィ』の体内外からは、当時の過酷な寒冷環境に適応した複数の真菌種が検出されました。これらは数千年間も極限環境で休眠状態にありながら、わずかな水分や環境の変化をきっかけに、再び活動・増殖する能力を維持していたことが明らかになっています」
通常の郵便で海を渡り配送員や倉庫作業員が……
歴史的な防腐処理にはヒ素や水銀、鉛といった猛毒の化学物質が使われているケースも少なくない。そのため、どのように処理されたか分からないようなミイラを、防護服もなしに素手で触る、あるいは部屋のインテリアとして無造作に飾ることはすなわち、健康被害をもたらすバイオハザードを自宅に招き入れるようなものとなる。
科学ジャーナリストが続ける。
「ネットで落札された人間のミイラは、通常の郵便で海を渡っているケースがあります。そうなると、中身を知らない配送員や倉庫の作業員、税関の職員たちが、安全措置もなしに危険な胞子をまとう梱包材に触れている可能性が出てくる。古くは1970年に、ポーランドで王墓を開けた科学者たちが相次いで急死した事例がありますからね。古代人の眠りを乱し、それを売買する代償はあまりにも大きいということです」
SNSでワンクリックするだけで、ミイラが届けられる時代。しかしそこには、未知の病原菌リスクが付きまとう。いつの時代も死者への冒涜など、あってはならぬこと……。
(ジョン・ドゥ)

