
王者の風格。自分たちのやり方が正しいという確信。アーセナルはプレミア初戦で二連覇に挑む資格を十分に示した【現地発】
本拠地エミレーツ・スタジアムに「Stand up for the champions!(王者のために立ち上がれ!)」のチャントが鳴り響くと、スタンドのサポーターが次々に立ち上がった。スタジアム入口には金色の「Champions」の文字も掲げられていた。
昨季は22年ぶりにプレミアリーグを制したアーセナルにとって、リーグ覇者として迎えた新シーズンの初戦。ピッチを包んだのは、昨季終盤の張り詰めた空気ではなく、勝者の余裕だった。コベントリー・シティを3-0で退けた試合には、二連覇を狙うチームの充実ぶりが表われていた。
キックオフから主導権を握った。15分、敵陣でボールを奪い返すと、リッカルド・カラフィオーリの折り返しからカイ・ハバーツが先制。23分には新加入クリストス・ツォリスのクロスからブカヨ・サカが加点し、後半開始直後にはマーティン・ウーデゴーが3点目を奪った。その後も危なげなく試合を運んだ。
ツォリスは3400万ポンド(約74億円)で加わったギリシャ代表で、先制点でもプレスからのボール奪取に関わった。試合後の会見では、早くも元アーセナルのアレクシス・サンチェスと比較する質問が記者から出た。
ミケル・アルテタ監督は「加入して数週間の選手が、ボールを持つたびにこれほどの熱気を生み出している。彼自身が勝ち取った反応だ。非常に直接的で、絶えず鋭く仕掛け、何かを起こそうとしている」と話し、ゴール前でも多彩なプレーができると高く評価した。
コベントリーの力不足は差し引く必要がある。プレミアリーグ経験に乏しく、先発には新加入選手が5人並んだ。アーセナルからボールを奪えそうな場面でも、細かなパスや身のこなしでかわされ、寄せた選手の背後を使われた。
それでも、力の劣る相手をきっちり圧倒するのも強者の条件である。降格が決まっていたバーンリーに1-0で辛勝した昨季最後のホームゲームとは違い、今回は緊張に足を取られる気配がなかった。
なかでも目を引いたのがウーデゴーだった。昨季は負傷を繰り返し、プレミアリーグではわずか1得点。思うようなプレーができず、本人にとっては苦しい一年だった。
今季は違う。コミュニティ・シールドのマンチェスター・シティ戦(3-0)に続いて得点しただけではない。ボールを受ける位置、パスの速さ、味方を動かす判断が冴え、攻撃に滑らかな流れをもたらした。ウーデゴーが動けば、アーセナルの攻撃も動く。
昨季、ウーデゴー、サカ、ハバーツが揃ってリーグ戦で先発したのは一度だけだった。3人が健康な状態で並んだことも、昨季との大きな違いである。中継で解説を務めたジェイミー・キャラガーも、復調した主将への期待を隠さなかった。
優勝による精神面の変化も感じられた。昨季は22年ぶりのタイトルが近づくほど、選手にも観客にも不安が広がった。一度、頂点に立ったことで、自分たちのやり方が正しいという確信を得たのだろう。
ただし試合後、アルテタ監督はこれを「リラックス」とは表現しなかった。
「流れるようにプレーすることはできる。ただ、リラックスは違う。私はその言葉が好きではない。選手たちは何をすべきかを明確にし、よく連係し、はっきりした目的を持ってプレーする必要がある」
気を緩めたのではない。重圧から解放され、やるべきことに迷いがなくなった、と言えばいいだろうか。
二連覇への期待を高めるのは、先発だけではない。試合終盤にデクラン・ライスやウーデゴーを下げても、マルティン・スビメンディ、ミケル・メリーノ、エベレチ・エゼを送り出せる。ヴィクトル・ヨケレスや16歳のマックス・ダウマンには出番がなく、ブルーノ・ギマランイスも負傷で欠場していた。
さらに試合前には、アストン・ビラから加入したイングランド代表DFエズリ・コンサが観客に紹介され、その後はスタンドから試合を見守った。昨季以上に選手を入れ替えながら戦える陣容が整いつつある。
もちろん、昇格組との開幕戦だけで二連覇を論じるのは早い。この先にはビラやチェルシーとの試合が待つ。それでも、復調した司令塔、フィットネスを取り戻した主力、厚みを増した選手層、そして王者としての自信がある。
タイトルを守るのではなく、再び攻めにいく準備はできている。アーセナルは初戦で、二連覇に挑む資格を十分に示した。
文●田嶋コウスケ
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