
映画『風の谷のナウシカ』はひとつの物語として完結したものの、マンガで描かれた膨大な物語やキャラクターの「映像化」への期待は今なお根強い? (C)1984 Studio Ghibli・H
【画像】「なるほど」「そりゃ無理だ…」 これが『ナウシカ』続編を阻んだキャラクターたちです(6枚)
「大人の事情」よりもっとシンプルな理由が?
アニメ映画としての『風の谷のナウシカ』(原作・脚本・監督: 宮﨑駿)の続編を期待する声は、現在に至るまであがり続けています。しかし、ついぞ「アニメ映画」としての続編は制作されませんでした。
あまり知られていないことですが、マンガ版『風の谷のナウシカ』は、映画版が公開された1984年以降も、連載が続けられました。映画公開から実に10年後の1994年に、ようやく『ナウシカ』という物語は幕を閉じたのでした。
その間に宮崎監督は『天空の城ラピュタ』『となりのトトロ』『魔女の宅急便』『紅の豚』と、数々のヒット作を制作してきました。
なぜ、映画『ナウシカ』の続編は実現しなかったのでしょうか。これに関して、宮崎監督は明確に、ある答えを用意していました。
その答えの前に、『風の谷のナウシカ』という作品の成立について簡単におさらいしましょう。『ナウシカ』というマンガ作品を宮崎監督が描くきっかけを作ったのは、当時、徳間書店の編集者だった鈴木敏夫プロデューサーです。鈴木氏のオファーに対し、宮崎監督は「マンガにしか描けないものを描きたい」という信念のもと、『風の谷のナウシカ』の連載を開始しました。
結果としてマンガ版『ナウシカ』には、アニメで動かすには非常に難しい質感、動きのものが次々に登場することになりました。
その最たるものが、「虫」です。『ナウシカ』には「王蟲」をはじめとする、巨大な虫たちがたくさん、それも大群で登場します。
飛行機や鳥と違い、虫はとにかく描き込みが大変です。顔、胴体の造りは複雑で動きも独特。脚の数は多い上、その一本一本に複数の「節」があります。王蟲にいたっては脚だけでなく、甲殻も伸縮します。まさに「アニメーター泣かせ」なのです。
そうです。『ナウシカ』の続編が作られない大きな理由のひとつが、この「虫」なのです。実際、宮崎監督は「スタッフがもう虫を描いてくれない」とインタビューで述べています。
映画『風の谷のナウシカ』において、最終的に王蟲は「風の谷」を完全に滅ぼしはしませんでした。物語のなかで、王蟲は未来への希望を残します。
他方、こんな見方もできます。王蟲という凄まじい作画コストの存在が、結果として『風の谷のナウシカ』の続編という未来を閉ざしててしまった……と。
もちろん、他にも映画『ナウシカ』の続編が作られない理由はいくつかあるでしょう。それでも王蟲をはじめとする「虫」の存在が大きな課題となっていることは確かです。
それを踏まえて『ナウシカ』に登場する「虫たち」を観てみましょう。その「迫力」がまるで違って見えてくることでしょう。
※参考書籍:『ジブリの教科書1 風の谷のナウシカ』(文藝春秋)
