日本公開から15年。4Kリマスターされた『ムカデ人間』のリバイバル上映が8月21日(金)に初日を迎えた。シネマート新宿では、“ムカデ人間の先頭”カツロー役の北村昭博と映画評論家の江戸木純が舞台挨拶に登壇。グッズの販売も行われ、『ムカデ人間』を愛するファンとこれから心酔する(かもしれない)ムカデビギナーで大盛況となった。
劇場ではハイター博士のクールなスタンディがお出迎え。オリジナル版公開当時にも行われた“ムカデ割引”(3人つながって写真撮影すると鑑賞料金が一人1000円)が実施されており、キュートな顔ハメを利用しての撮影も可能だ。体勢はちょっとキツいかも。
ムカデ割引の写真はここに貼られていく 初日の午前中の時点ですでに4組いた模様
ごった返すフロア ここにいる皆が『ムカデ人間』を好きなのか……!
充実のムカデショッピング
パンフレットやTシャツ、トイレットペーパー(!)などの物販はもちろんのこと、“ハイターソーダ”なるドリンクや、“ムカデ人間クッキー”も販売されており、まるでムカデ人間の祭典といった趣。舞台挨拶回の上映前にはグッズ購入の長蛇の列ができていた。なかでも、ぷくぷくシールとキーホルダーは早々に売り切れてしまったという。
トイレットペーパーがグッズになる希少な映画
「中西怪奇菓子工房。」謹製の“ムカデ人間クッキー”、連結グミ付きの“ハイターソーダ”
もぎりはハイター博士が担当
チケットのもぎりをしている男性は、白衣にあのサングラス……なんとハイター博士ではあるまいか。映画が始まる前から作品の世界観を味わってもらおうという粋な計らいに、劇場側のムカデ愛を感じずにはいられない。博士にもぎってもらえば、自分がムカデ人間に“適合”したかのような気分を味わえることだろう(味わいたいかどうかは別として)。
適合者を見抜く目つきでチケットをチェックするハイター博士
舞台挨拶 宣伝や撮影の裏話も
大きなスクリーン1での上映が終わり、絶望的なラストを見届けたばかりの観客の熱い拍手に包まれ、カツロー役の北村昭博と映画評論家の江戸木純が登場。
ロサンゼルス在住で日本のムカデファンに会えるのを楽しみにしていた北村は、大勢の観客を前に「皆さんにお会いできてすごく嬉しい。15年前に公開された映画が今でもこんなに多くの人に観てもらえるなんて」と感無量の様子。観客と一緒に本編を鑑賞していたといい、クリアになった4K映像で撮影時の芝生の感触や“寒さ”(ほぼ裸のため)の感覚までもが蘇ってきたと語った。
ハイター博士の変態性を押し出した名キャッチコピー「つ・な・げ・て・み・た・い」の考案者だという江戸木は、本作を買い付け、惜しくも2年前に亡くなった叶井俊太郎氏とのやりとりを振り返りつつ、「“こんな映画が日本で上映できるのか”というところから始まった作品だけど、15年間も愛され続ける作品になるとは」と驚きを見せた。
『ムカデ人間』成功の秘訣は“自由”にあり?
『ムカデ人間』はなぜ日本で人気を博したのか? 江戸木は、出演者である北村が宣伝に協力的だったことや、ポスターの独自性が効いたのではと分析。海外ではいかにもホラー映画らしいポスターで売り出されていたが、日本では劇中に登場するユルめの“ムカデ人間イラスト”をフィーチャー。デザイナーにポスターを自由に作らせる叶井氏のスタンスがうまくハマったと予想した。
それを受け、北村は“アーティストの自由にさせる”というのはトム・シックス監督のスタンスでもあると指摘。『ムカデ人間』の撮影現場では本物の医者が待機しており、外科医であるハイター博士を演じたディーター・ラーザー氏は、医者とコミュニケーションをとりながら自由に役作りをしていたそうだ。撮影期間中、ディーターは完全にハイター博士になりきっており、控え室でも共演者と一切話さず黙々と青汁を飲んでいたという裏話も飛び出した。
「ディーターさんとの仕事が血肉になっている」と北村 愛が伝わってくる
アーティスト気質のトム・シックスは気高くてちょっとヘン
そうして作られた本作について、江戸木は「低予算の自主制作映画と思われがちだが、しっかりお金と時間をかけて作られていて、今観てもまったく古びていない」と語る。一作目を観た当時、これを手掛けた監督はハリウッドからお声がかかり、大作を撮るようになるだろうと予想していたという。
北村はこれに同調しつつ、「トムは本当の意味でアーティストで、ビジネスを考えない人」と説明。ハリウッドからリメイクの話や監督のオファーが多数来たものの、「自分のオリジナル以外撮る意味がない」とバッサリ切り捨ててしまったという。
そんな気高いトム・シックスだが面白い一面も。北村は『ムカデ人間3』の頃、トムと一緒にイーライ・ロス監督(『ホステル』『グリーン・インフェルノ』)のホームパーティーに招かれた際の珍エピソードを披露。そこで『シックス・センス』の名子役として知られ、今も俳優として活動しているハーレイ・ジョエル・オスメントに遭遇したのだが、彼を見たトムは素材としての可能性を見出したのか「俺が彼を有名にしてやる……」と呟いたそう。北村は「もうめちゃくちゃ有名だから!」とツッコミつつ、「そういうことを言ってしまえるのがトムのキャラクター」と笑った。余談だが、ハーレイはムカデ人間ではなくセイウチ人間を創造する『Mr.タスク』という映画に出演している。
自分のポリシーを曲げないトム・シックスは、どんどん過激さを増していく『ムカデ人間』3部作を完成させ、その後に作った『The Onania Club』が倫理的な問題で公開の目処が立たずお蔵入りに。先日、大病と映画監督からの引退を明かし、引退作であるドキュメンタリー『The End of Tom Six』を発表したばかりだ。しかし、トムの人となりを知る北村は「引退が本当かどうかは半信半疑」だといい、何かを企んでいるのではと予想。江戸木も「トム・シックスが今後どうするかに期待して注目したい」と締めくくった。
『ムカデ人間4K』公開中

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