噛めば噛むほどに旨味が広がる、言わずと知れた名品「都こんぶ」。酢昆布ならではの強烈な酸っぱさと、溢れ出す昆布の旨味。あの絶妙な掛け合わせは、まさに唯一無二だ。真っ赤な小箱パッケージも、ノスタルジックで可愛らしくて秀逸。
そんな見慣れたはずの都こんぶが先日、スーパーのいつもと違う場所に鎮座していた。見間違いかと思い二度見する。そこは菓子売り場ではなく、酒コーナー。しかも箱ではなく「缶」になっている。缶に書かれた文字は……『都こんぶサワー』?
異色すぎるコラボに頭が追いつかない。なんだこの、飲む勇気を試されるお酒は。
・都こんぶの存在感
酒コーナーの最も目立つ場所に「おすすめ」の文字と共に並べられていた『都こんぶサワー』。スーパーで1本税込168円。
あの旨味は飲んでも美味しいものだろうか、いまいち想像できない。わからないのであれば、自分の舌で確かめるまでだ。缶を手に取り、レジへ向かった。
帰宅後検索してみると、都こんぶを販売する中野物産が自ら製造したわけではないらしい。酒類の開発に精通した国分西日本と富永貿易が協業して生み出した商品だという。なるほど、美味しく飲める形にアレンジされているのかもしれない。期待と不安が入り混じる。
さっそくグラスに注ぐ。色はクリアな透明。しかし香りは……思った以上にガチで「あの酢昆布」だ。ツンとくる強烈さはないものの、嗅ぎ慣れた酸っぱい香りがふわっと広がる。飲むのをほんの少し躊躇してしまうほどに。
意を決して口に運ぶと、なんとなく予感はしていたが、味までもが驚くほどしっかりと「都こんぶ」だった。本物ほどの強烈さはないが、じんわり広がる酸味と独特のコク。普通のサワーではまず出会えない、不思議な味わいだ。勢いよくグビグビ飲めるタイプではないが、時間をかけて味わうにはアリと言える。
アルコール度数は3%と控えめ。食前酒や、口の中をリセットしたいときにも良いかもしれない。形を変えてサワーになっても、変わらぬ存在感を放つ『都こんぶ』の、個性の強さに驚かされる。
・ドライの酎ハイに酢昆布を入れてみる
しかし、ふと思う。ドライの酎ハイに『都こんぶ』を漬ければ、似たような味になるのではないだろうか。
そこでタカラ「焼酎ハイボール」を用意し、都こんぶを一片投じてみる。立ち上ってくる香りは、先ほどのサワーにかなり近い。そのまま数分置き、馴染ませてみた。
飲んでみると、思った通り、割と近い味わいだった。なんなら酢昆布をかじったその口で、酎ハイを流し込んでも似たような味になるのだけれど。それほどまでに『都こんぶサワー』の完成度が高いということでもある。
国分西日本と富永貿易の、都こんぶに対するこの解像度の高さは何なのだろうか。わざわざ商品化まで漕ぎ着ける熱意を見るに、開発者たちも重度の都こんぶファンなのだろうか?
さて、最後に『都こんぶサワー』の隣に並べられていた『都こんぶ梅酢サワー』(税込168円)にも触れておきたい。名前の通り、ベースのサワーに梅酢を加えたもののようだ。ここにきて、さらに酸味を足すのかと一瞬怯んだが、案外酸味が強まった方が飲みやすいのかもしれない。
グラスに注ぐと、先ほどとはうって変わって鮮やかなピンク色。梅の爽やかな香りがプラスされ、口当たりの良さそうな雰囲気を醸し出している。
口に運ぶと思った通り、ノーマル版よりも格段に親しみやすい味だ。酢昆布特有のくせよりも梅酢の風味が勝っていて、すんなりと喉を通っていく。
それでいて、奥にはしっかりと都こんぶらしい出汁のような旨味も潜んでいる。よくある梅系のサワーとはちょっとした違いがあり面白い。飲みやすさという点からは『都こんぶ梅酢サワー』を飲んでから、ノーマルへとステップアップする順番が正解だっただろうか。
いずれにせよ、お酒になってもらしさがブレることのない、ほかにはないサワーだった。変わり種サワーを攻めたい人はもちろん、都こんぶを愛してやまないすべての人に一度試してみてほしい。
