
「108」はカイ機。「HG 1/144 ガンキャノン」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ
【画像4枚】のちにガンプラブームを巻き起こした、こちらが大河原邦男氏渾身のデザインです
ガンキャノンは「派手さが足りない」
リアルロボットアニメの先駆となった『機動戦士ガンダム』(1979年)の魅力的なメカニックを生み出したのは、日本初のメカ専門デザイナー、大河原邦男氏です。そのメカデザインについて、大河原氏の著書には、過酷な制作環境や大人の事情による「制作秘話」の数々が打ち明けられています。
主役メカは「ガンキャノン」だったかも?
実は、企画の初期段階で主役メカとしてデザインされたのは「ガンキャノン」です。
当初、戦闘ロボット「モビルスーツ」のモチーフとしては、ロバート・A・ハインラインのSF小説『宇宙の戦士』に登場する「パワードスーツ」が注目されていました。そして作画監督の安彦良和氏が、『宇宙の戦士』の挿絵用にデザインされたパワードスーツを自分なりに解釈して描いたのが、ガンキャノンのラフです。しかし大河原氏は、ガンキャノンには不服でした。
「大人向けのSF作品としては格好いいのですが、(中略)玩具屋さんで子どもが手に取ってくれるデザインでないといけない。そういう意味では『安彦版ガンキャノン』は、今まで子どもたちにウケていたメカの要素が足りなかった。簡単にいうと、主役メカにしては少し派手さが足りなかったんですね」(大河原邦男著『メカニックデザイナーの仕事論』光文社)
大河原氏は『ガンダム』に携わる以前から、サンライズ作品だけでなく、『ヤッターマン』などタツノコプロ作品はじめ多くの作品でメカニックデザインを担当しており、子供に受けるロボットの要素を誰よりも分かっていたのです。そのようにして急きょ、ガンキャノンに代わる主役メカが必要になりました。そこでデザインされたものが、現在の「ガンダム」の原型になりました。
初期のガンダムには「口」がついていた?
ガンダムの「目」の下には、顔全体を隠すマスクがあります。最初の顔のデザイン案には、ここに「口」が描かれていました。これは、前作1978年から1979年にかけて放送された『無敵鋼人ダイターン3』の流れを汲んだものです。
しかし、初期デザインを見た安彦氏から「なぜ口があるんですか、こういう話でメカは話さないでしょう」と指摘され、これをふまえ大河原氏は口を隠すデザインに変更したといいます。
さらに、それまで円柱と角柱が基本だったロボットデザインに、ふくらはぎを思わせるシルエットを加えるなどし、これを安彦氏が仕上げて、ガンダムはどんどん人間的に描かれるようになったそうです。
ハロもホワイトベースも前作の「デキが良すぎる没案」だった
主人公「アムロ・レイ」が作ったマスコットロボットの「ハロ」や、物語の舞台ともいえる母艦「ホワイトベース」は、『ガンダム』とは切っても切り離せないメカのひとつですが、本作のためにゼロから考案されたものではありません。これらは、実は前作『ダイターン3』の制作時に、すでにデザインが存在していました。
その現場で富野由悠季監督が「これ、いいデザインだから、今使うのはもったいないから取っておこう」と判断したといいます。そして温存されたこれらは、『ガンダム』で見事に開花したのでした。
※参考文献
・『メカニックデザイナーの仕事論』(著:大河原邦男/光文社)
