
『となりのトトロ』静止画より (C)1988 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli
【画像】え、「もうバス停のシーンが完成してる」「女の子が違うけど」 コチラが『となりのトトロ』最初のイメージボード(70年代)です
可愛いけどけっこう違う
1988年に公開された宮崎駿監督『となりのトトロ』は、大人から子どもまで幅広い世代に愛される名作アニメです。宮崎監督は1970年代に日本アニメーションに在籍していた頃から、『トトロ』の構想を練っていました。そのためのイメージボード(作品の雰囲気や世界観をまとめるためのスケッチ)を何枚も描いています。
テレコム・アニメーションに移籍した1979年から82年の間には、当時流行していたTVの単発アニメスペシャル向けに企画を立てていました。そのタイトルが『となりのミミンズク』です。『となりのトトロ』そのままの部分もあれば、異なる設定もあります。どのようなものだったのでしょうか。
まず、ミミンズクは「トトロ」そのままのデザインです。この頃からイメージは固まっていたといえるでしょう。「中トトロ」と「小トトロ」の設定もあり、それぞれズク、ミンと名前がつけられていました。ズクは中トトロと異なり、黒一色で描かれています。フクロウ科のミミズクが、トトロのイメージソースになっていたのは間違いありません。
キャラクター設定を見ると、メガネをかけた父親が30才、おさげの幼女は5才、“おおとうさん”のミミンズクは1302才、“とうさん”のズクは679才、ミンは109才という設定です。「カンタ」そっくりの少年、胴体と足がある「まっくろくろすけ」も描かれています。この頃は姉妹ではなく、ひとり娘という設定でした。
別のイメージボードを見ると、幼女には「メイ(五月)」と名前のメモが書き込まれています。「五月」には「サツキ」という注意書きもありました。メイは黄色いワンピースを着た生き物好きの幼女で、ホウキを持ってまっくろくろすけを掃除しようとする絵などが描かれています。
また、父の考古学者という設定は「タツオ」と同じですが、細面のタツオと異なり、かなり四角い顔をしていました。父の顔の形について、宮崎監督はかなり悩んだそうです。
メイは家の庭でズクとミンと出会い、茂みのトンネルを抜けるとミミンズクたちの住処にたどりつきます。その後、一緒に散歩したり、釣りをしたり、カエルと合唱をしたりして遊んでいました。『となりのトトロ』のキービジュアルである、雨のなかバス停の前でミミンズクと一緒に立っているイメージボードもあるほか、「ネコバス」も描かれています。
また、いくつかのイメージボードには、白くて小さくて槍のようなものを持っている生き物の群れがいました。『トトロ』には登場しませんが、『もののけ姫』の「コダマ」や『君たちはどう生きるか』の「ワラワラ」につながっていったのかもしれません。
スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーのインタビューによると、これらのイメージボードに注目した鈴木プロデューサーが「トトロの映画を作りましょう」と提案したものの、宮崎監督は「映画にするのは難しい」と難色を示したそうです。
その後、映画制作が決定して、新たに90枚ほどのイメージボードが描かれました。このとき、主人公の少女は「サツキ」と「メイ」の姉妹に設定し直され、タイトルも『となりのミミンズク』から『となりのトトロ』に変わったのです。
なお、ミミンズクとは『トトロ』になる前の設定であり、一部で広まっている「トトロの本名はミミンズク」という説明は間違いなのでご注意ください。
