「日本一悪い男」と揶揄された福岡県議会の「絶対的ドン」こと蔵内勇夫議長が、ついに白旗を揚げた。8月24日に突如として、議員辞職の意向を表明したのだ。翌日に東京で、全国都道府県議会議長会会長としての「最後の大仕事」を終えた後、自らバッジを外すという。
蔵内氏は7月23日に官邸に乗り込んだ際には、高市早苗首相と面会した後、記者団から「日本一悪い男」との悪評について「謙虚に受け止めている」と殊勝に語り、首相からの言葉を問われると「『頑張れ』というような目で見ていただいたと思う」とうそぶいていた。
さらに8月17日の県議会臨時会では「辞職勧告決議案」というカチ込みに対し、自民党県議団が数の暴力(動議)で採決を潰すという露骨な抗争劇を演じたばかり。県政混乱のケジメとして「しかるべき時期に議長職は辞すが、議員の身分は捨てねぇ」と強弁していた。自民党県連会長時代も「辞める」と言いながら居座っていたドンだが、逃げるように舞台を降りることになった。ついにドンの命脈は尽きたのだ。
西日本新聞は福岡県での政争について、かつては自民党の麻生太郎副総裁、そして山崎拓、古賀誠の両元幹事長による争いから、現在は麻生氏と蔵内氏、そして武田良太元総務相による「新・三国志」時代になったと形容した。
「中央政界のドン」麻生太郎は次の衆院選に出馬せず引退!?
では空白地帯となった福岡のシマ(縄張り)をめぐる「新・三国志」で、最後にほくそ笑むのは誰か。真っ先に名が挙がるのは、中央政界のドンである麻生氏だ。
しかし御年85の長老は次の衆院選には出馬せず、引退すると囁かれている。ならば、かつて蔵内氏の長男が出馬した衆院選で敵対した武田氏が、漁夫の利を得るのか。武田氏は蔵内氏のスキャンダルにほくそ笑んでいるといわれるが、その武田氏も前々回の衆院選で落選の憂き目に遭うなど、足場は決して盤石ではない。
そんな中、永田町と福岡の政界で急浮上しているのが、福岡市の高島宗一郎市長だ。「次の市長選には出馬しない」と明言した若き首長に対し、自民党内からは国政への殴り込みを熱望する声が日増しに高まっている。
仁義なき福岡の跡目争いはドンが失脚した今、次なる抗争の火蓋が切って落とされた。
(岡田哲司/政治ジャーナリスト)

