
どうやらフクロウは、他のカップルの「交尾中の声」にも聞き耳を立てているようです。
リュウキュウコノハズクのオスは交尾中に特徴的な声を発しますが、その意味はこれまでほとんど分かっていませんでした。
そこで北海道大学の研究チームが、野生の個体に非つがい個体の交尾声を含む音声を聞かせたところ、オスもメスも交尾声を含まない音声より強く鳴き返しました。
この結果は、交尾声が交尾相手だけでなく周囲の個体にも向けられたメッセージである可能性を示しています。
研究成果は2026年8月22日付で科学誌『Animal Behaviour』にオンライン掲載されています。
目次
- フクロウはなぜ交尾中に「ぴりりりりり」と鳴くのか?
- 他カップルの「交尾声」にオスもメスも強く反応
フクロウはなぜ交尾中に「ぴりりりりり」と鳴くのか?
交尾中に声を出す「交尾声」は、さまざまな哺乳類や鳥類で知られています。
しかし鳥類の音声研究は、求愛やなわばり主張に使われる「さえずり」が中心で、交尾声の役割はほとんど検証されてきませんでした。
研究チームが注目したのは、沖縄県南大東島に生息するフクロウ、リュウキュウコノハズクです。(画像はこちら。※プレスリリースPDF)
この鳥では、オスが交尾中に「ぴりりりりり」という目立つ交尾声を発します。
なぜ、交尾中にわざわざ周囲へ聞こえる声を出すのでしょうか。
これまでには、別の異性へのアピール、なわばりの主張、つがいの絆を強める、といった仮説が提案されてきました。
もし異性へのアピールが主な役割なら、オスの交尾声にはメスが特に強く反応すると予想されます。
一方、なわばりを示す信号なら、競争相手の存在は雌雄どちらにも関係するため、オスもメスも反応すると考えられます。
そこで研究チームはまず2022年2月から6月、繁殖用の巣箱の下にレコーダーを置き、産卵前、産卵中、抱卵中、育雛中の4段階で一晩中の発声を記録しました。
さらに2023年3月には産卵前のつがいを対象に、交尾声を含む音声と含まない音声を再生し、鳴き返しの強さを比較しました。
その結果、交尾声は産卵前だけに確認され、再生実験では交尾声を含む音声にオスもメスも強く反応しました。
つまり、このフクロウは交尾声を他の声と区別し、その有無によって行動を変えていたのです。
では、なぜこの結果が「なわばり主張」という解釈につながるのでしょうか。
より詳しい結果を次項で見ていきます。
他カップルの「交尾声」にオスもメスも強く反応
まず交尾声が確認されたのは、2月から4月の産卵前だけでした。
通常の頻度は平均0.198回/時間で、一晩では平均2.58回でした。
さらに少なくとも産卵54日前から交尾声が確認されたことから、研究チームは1度の繁殖で100回以上交尾している可能性があると推定しています。
そして再生実験では、自分のパートナーではない個体の交尾声を含む音声を聞いたとき、オスとメスの双方がより強い発声反応を示しました。
細かく見ると、発声反応の開始に関する指標ではオスの方が大きな変化を示しましたが、鳴き返しの回数と反応の継続時間には、はっきりした雌雄差は確認されませんでした。
つまり交尾声は、メスだけを引きつける性的な合図というより、オスにもメスにも重要な情報として受け取られていたのです。
さらに、なわばり内で他個体のデュエット声を再生すると、オスが交尾声を発する頻度は通常の0.198回/時間から1.45回/時間へと増加しました。
他個体の声を聞いた状況で交尾声そのものが増えたことも、この声がなわばりを示す信号として使われている可能性を後押しします。
研究チームは、交尾声によって他個体の侵入を防ぎ、つがいのなわばりを守ることや、オスにとってはメスが他のオスと交尾するのを防ぎ、父性を確保することにつながる可能性を挙げています。
また、本研究は鳥類で交尾声に対する反応の雌雄差を調べた初めての研究であり、「さえずり」以外の音声コミュニケーションを明らかにした点でも注目されます。
ただし今回、交尾声を聞いた侵入個体が実際に退散するのか、交尾声によって他個体との交尾が減るのかまでは直接調べていません。
また、この研究は南大東島のリュウキュウコノハズクを対象としたもので、同じ機能が他の鳥類にも広く当てはまるかは今後の検証が必要です。
今後、交尾声を聞いた個体が実際にどのような行動を取るのか、またこの声にどのような情報が含まれているのかを調べることで、鳥たちの音声コミュニケーションはさらに詳しく見えてくるでしょう。
交尾中の「ぴりりりりり」は、単なる鳴き声ではなく、周囲のライバルに自分たちの存在を知らせる重要な信号なのかもしれません。
参考文献
交尾中に鳴くことには意味がある!~哺乳類や鳥類でよく知られる交尾声の機能をフクロウ類から検証~
https://www.hokudai.ac.jp/news/2026/08/post-2423.html
元論文
Ryukyu scops owl exhibits strong vocal responses to copulation calls produced by nonpartner individuals
https://doi.org/10.1016/j.anbehav.2026.123682
ライター
矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。
編集者
ナゾロジー 編集部

