
日本から、新たな「装甲恐竜」が誕生しました。
その名は「ニッポノペルタ・エゾエンシス(Nipponopelta yezoensis)」です。
といっても、化石そのものが最近発掘されたわけではありません。
北海道夕張市で見つかり、20年以上前からノドサウルス科の恐竜と考えられていた化石を改めて詳しく調べたところ、これまで知られていない新属新種だと判明したのです。
ニッポノペルタが生きていたのは、約9600万〜9400万年前の白亜紀後期です。
そして今回の命名によって、日本から正式に名前が付けられた初めての鎧竜類となりました。
研究の詳細は、北海道大学らにより、2026年8月21日付で学術誌『Cretaceous Research』に公開されています。
目次
- 20年以上正体不明だった「鎧竜」の頭骨
- 日本の鎧竜なのに、近い親戚は北米やヨーロッパにいた
20年以上正体不明だった「鎧竜」の頭骨
鎧竜類とは、その名の通り、体を硬い骨の板などで覆った植物食恐竜のグループです。
有名なアンキロサウルスもその仲間ですが、ニッポノペルタは「ノドサウルス科」という別の系統に属しています。
今回調べられたのは、北海道夕張市の日陰ノ沢層から見つかった頭骨の一部や椎骨、複数の歯です。
これらは2005年の時点ですでにノドサウルス科と報告されていましたが、具体的にどの属や種なのかまでは分かっていませんでした。
その理由の1つが、頭骨の重要な部分が岩石の中に隠れていたことです。
そこで研究チームは今回、3次元CTを使って化石の内部を調査しました。
すると、外側からは見ることのできなかった下顎の一部や2本の完全な歯、さらに左側の内耳などをデジタル上で復元することができました。
特に重要だったのが頭骨後部の形です。
そこには既知のノドサウルス科には見られない特徴の組み合わせが確認され、新しい属と種を設ける根拠となりました。
こうして「日本」を意味するNipponと、ギリシャ語で「盾」を意味するpeltaを組み合わせたニッポノペルタという属名が与えられました。
種小名のyezoensisは、北海道の古称である「蝦夷」に由来します。
日本の鎧竜なのに、近い親戚は北米やヨーロッパにいた
さらに興味深いのは、ニッポノペルタの「親戚関係」です。
チームがさまざまな鎧竜の特徴を比較して系統解析を行ったところ、ニッポノペルタは他のアジア産ノドサウルス類の近くには位置しませんでした。
むしろ、PawpawsaurusやPanoplosaurus、Edmontoniaなど、北米やヨーロッパで見つかっているノドサウルス類に近い系統だったのです。
そこでチームは、これらの恐竜の祖先が世界のどこに分布し、どのような環境を好んでいたのかも復元。
その結果、ニッポノペルタと近縁なグループの祖先は、北米やアジアにまたがる広い地域に分布していた可能性が示されました。
【チームが復元したニッポノペルタ・エゾエンシスのイメージ画像がこちら】
またノドサウルス科は、ほかの鎧竜と比べて海で堆積した地層から化石が見つかることが多く、沿岸部や河口付近の環境を好んでいた可能性があります。
ニッポノペルタについても、海の中で暮らしていたという意味ではなく、海岸や河口など海の影響を受ける陸上環境で暮らしていたと考えられています。
チームは、こうした沿岸環境を利用する性質が、ノドサウルス類が遠く離れた地域へ広がっていくうえで重要だった可能性を指摘しています。
北海道から見つかった1つの頭骨は、単に「日本に新しい恐竜が増えた」というだけの発見ではありません。
ニッポノペルタは、白亜紀の鎧竜たちがアジアと北米などの広い地域にどのように分布していったのかを考える、新たな手がかりとなったのです。
参考文献
New Species of Armored Dinosaur Identified in Japan
https://www.sci.news/paleontology/nipponopelta-yezoensis-15014.html
元論文
A new nodosaurid ankylosaur (Dinosauria: Ornithischia) from the Upper Cretaceous Hikagenosawa Formation in Japan reveals dispersal pattern of Asian nodosaurid ankylosaurs
https://doi.org/10.1016/j.cretres.2026.106477
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部

