「日本の文化を世界へ」と鳴り物入りで始まった国家プロジェクトが、寂しい幕引きを迎えようとしている。
経済産業省は官民ファンド「クールジャパン機構」について、2027年度予算の概算要求で新たな投資原資を求めない方針を決定。廃止の方向で調整に入った。
クールジャパン機構は第2次安倍政権下の2013年11月に発足。アニメや日本食、ファッション、地域産品などの海外展開を支援し、これまで83件に約2040億円を投じた。
ところが2025年度の累積損失は540億円に拡大。出資金1513億円のうち1406億円を政府が負担していただけに、追加資金への理解は得られないと判断されたのだ。
そのわずか4日後、日本のコンテンツをめぐる超大型計画が、海外から飛び込んできた。
フランスとサウジアラビアは8月24日、パリ北西部のセルジー・ポントワーズ近郊に「ドラゴンボールZ」の世界観を核とするテーマパークを含む大型娯楽施設を建設することで合意。総事業費は60億ユーロ、日本円で約1兆円に達し、2万2000人の雇用を生むと見込まれている。
この通称「ドラゴンボールパーク」に資金を出すのは、サウジ政府系の娯楽・投資会社「キディヤ」だ。同社は2024年にもリヤド近郊で、世界初の「ドラゴンボール」をテーマとした大型施設の建設プロジェクトを発表している。
最強コンテンツを持ちながら肝心なところは他国にもっていかれる
コンテンツビジネスに詳しいジャーナリストは、
「いかに日本の役所がコンテンツ商売で無力だったかを痛感します」
として、次のように語るのだった。
「クールジャパン機構は『日本らしいもの』を幅広く支援しようとして、政策目的と収益性の焦点がぼやけてしまった。役所の審査を重ねるうちに意思決定は遅くなり、失敗案件からの撤退は後手に回るばかり。一方で、キディヤは世界中に固定ファンがいるドラゴンボールに狙いを絞り、入場料、物販、ホテル、飲食まで一体で稼ぐ設計をブチ上げました」
日本のウマ味は限定的だ。
「皮肉なのは、キディヤも政府系企業だという点。ドラゴンボールパークの建設により、日本の権利者にはライセンス料こそ入るものの、約1兆円の投資、雇用、観光消費の主役はフランスとサウジ。日本は世界最強のコンテンツを持ちながら、最もオイシイところを他国に持っていかれているわけです」(前出・ジャーナリスト)
あまりにもったいない、マヌケな話なのだ。
(川瀬大輔)
1977年生まれ。国内外のビジネス、スポーツ、政治、社会問題を取材するフリー記者。

