「退職所得の受給に関する申告書」とは?記入方法や注意点を解説!

退職金を受け取る前に知っておくべき重要な手続き、それが「退職所得の受給に関する申告書(退職所得申告書)」の提出です。提出しないと、退職金の手取り額が減ってしまう場合もあります。今回は申告書の書き方や注意点などについて詳しくみていきましょう。

そもそも退職所得とは?

退職時に支給される「退職金」は、税法上は「退職所得」と呼ばれます。退職時に一括して支給される「退職一時金」や、退職後何回かに分けて支給される「退職年金」、さらに勤務先の企業が倒産した場合に「未払い賃金立替払制度」により国から弁済される未払い賃金なども「退職所得」に含まれます。

【あわせて読みたい】退職金の一番お得な受け取り方は?「一時金」と「年金」どちらが良いか解説!

退職所得も給与所得と同じく、所得税の課税対象であり、その金額に応じて所得税を収めなければなりません。退職所得の金額は、原則として以下の計算式で求めることとされています。

[収入金額(源泉徴収される前の金額)− 退職所得控除額]× 1/2 = 退職所得の金額

ただし、従業員自身が保険料や掛け金を負担する確定給付企業年金などから支給される退職一時金については、その支給額から従業員が負担した保険料又は掛金の金額を差し引いた残額を、退職所得の収入金額とします。

続いて、上記の計算式で必要な「退職所得控除額」の求め方を見ていきましょう。
退職所得控除額の求め方は、勤続年数が20年以下の場合と20年超の場合とで異なり、原則として、それぞれ次の計算式で求めることとされています。ただし、障害者になったことが原因で退職した場合の退職所得控除額は、上記の計算式で算出した額に、100万円を加えた金額となります。

勤続年数20年以下の場合の退職所得額の計算例

例えば、勤続年数が15年4か月の人の退職所得控除額は、上の表の上段の計算式を使って、次のとおり、求めることができます。なお、勤続年数の端数(1年未満の日数)は切り上げで計算することになっており、勤続年数が15年4か月の場合は、16年として計算します。

■勤続年数が15年4か月の人の退職所得控除額
40万円×16年=640万円

したがって、勤続年数が15年4か月の人が2,000万円の退職金を受け取った場合の退職所得の金額は、計算式により次のようにして求めることができます。

■勤続年数が15年4か月の人の退職所得金額
(2,000万円−640万円)×1/2=680万円

勤続年数20年超の場合の退職所得額の計算例

続いて、勤続年数が20年超の場合の計算例を見てみましょう。例えば、勤続年数が45年の人の場合は、勤続年数が20年を超えているので、上の表の下段の計算式を使って、次の通り求めることができます。

■勤続年数が45年の人の退職所得控除額
800万円+70万円×(45年−20年)=2,550万円

したがって、勤続年数が45年の人が4,000万円の退職金を受け取った場合の退職所得の金額は、
収入金額(源泉徴収される前の金額)−退職所得控除額×1/2=退職所得の金額
の計算式により、次のようにして求めることができます。

■勤続年数が45年の人の退職所得金額
(4,000万円−2,550万円)×1/2=725万円

【あわせて読みたい】退職金はいくらもらえる?退職金の計算方法と注意点など

(広告の後にも続きます)

退職所得の受給に関する申告書(退職所得申告書)とは?

続いて、退職所得にかかる所得税額についてみていきましょう。退職所得は、原則として他の所得と分離して所得税額を計算します。
ここで大きな意味を持つのが、「退職所得の受給に関する申告書」です。「退職所得の受給に関する申告書」は、退職所得の支給を受ける人が、所得税法第203条1項各号に掲げる事項(氏名や勤続年数など)を記載し、退職金支給前に勤務先の企業等(退職所得の支払者)に提出する書類のことで、退職が近づくと勤務先から配布されるほか、国税庁のホームページからダウンロードすることができます。

この申告書に必要事項を記入して勤務先に提出すると、勤務先の担当者が所得税額や復興特別所得税額(※)を計算し、退職金の支払の際に、退職所得の金額に応じた所得税等の額が源泉徴収されることになるため、原則として退職金の支給を受ける本人が確定申告をする必要がなくなります。なお、提出後の申告書は勤務先で保存されることになっており、税務署から特別の請求があった場合を除き、本人が税務署に提出する必要はありません。

※2013年1月1日から2037年12月31日までの間に支払を受ける退職手当等については、所得税とともに復興特別所得税が源泉徴収されます