企業が従業員に対して支給する福利厚生の一つに「通勤手当」があります。自宅と勤務先の間の交通費を一定額支給してもらえるものですが、この通勤手当は年収に含まれるのか、また税金がかかるのかどうかを考えたことはありますか?一般には「給与とは別で年収には含まない」と、非課税として認識している人が多いようです。

実際のところ、通勤手当に非課税枠はありますが、課税される場合もありますし、給与と同じく年収とみなして考える場合もあります。意外と誤解していることの多い通勤手当について、今回は1つ1つ解説していきます。

通勤手当=基本は「非課税扱い、年収には含まない」

会社紹介などで「入社3年目社員の平均年収は約400万円です」と公開されている場合、一般に通勤手当は年収に含めていないことが多いです。一方で、役職手当や家族手当などは年収に含みます。これは「自分が使い道を自由に決められるかどうか」の違いです。通勤手当は受け取った金額がそのまま定期代やガソリン代に充てられる実費のため、年収とみなさないケースが多いのです。確かに、遠方から高額な交通費で出勤する人の方が、会社の近くに住んでいる人よりも年収が高いというのは不合理ですよね。

また、住宅ローンの申し込み審査の際、年収を申告しなければなりませんが、この場合も基本的に通勤手当は年収に含みません。ふるさと納税も同様です。ふるさと納税は年収によって控除の上限額が変わるため、専用サイトなどで納税額の上限を把握する際は、通勤手当を含めない年収を入力しなければなりません。特に通勤手当が高額な人が通勤手当込みの年収で試算すると、「本来の控除上限を上回る金額で、ふるさと納税をし過ぎてしまった」という事態も想定されますので、注意してください。

(広告の後にも続きます)

電車・バスの通勤手当の非課税上限は15万円


自動改札を通過するビジネスマン
【画像出典元】「stock.adobe.com/chachamal」

非課税扱いとなる通勤手当ですが、上限がないわけではありません。税制によりいくつかルールが定められています。

まず、電車やバスなど公共交通機関で通勤する場合は「1カ月当たりの合理的な運賃等の額」となっています。つまり、その運賃や定期代などの実費が非課税扱いです。また月額上限は15万円と定めてあります。

マイカーや自転車で通勤する場合は、距離に応じて以下のように非課税上限額が決まっています。

片道55km以上:31,600円
片道45km~55km未満:28,000円
片道35km~45km未満:24,400円
片道25km~35km未満:18,700円
片道15km~25km未満:12,900円
片道10km~15km未満:7,100円
片道2km~10km未満:4,200円
片道2km未満:全額課税

出典:国税庁「通勤手当の非課税限度額の引上げについて