日々のごはんのポジティブなエネルギー。

嫌なことを忘れられたり、元気をもらうことも多々ある。食べること、料理することにはそんな圧倒的なパワーがあります。しかも毎日のことだからこそ、気楽に楽しみたい。そんなムードが全体から伝わってきます。なんていったって書名が料理〝大会〞ですからね! 材料の記載も作り方の手順もなく、ごく短い文だけのレシピもあるのが象徴的。手早く作るためには丁寧に分量を量ってはいられない、その日によって味が微妙に違うけれど、主婦の料理はそれでいい、と冒頭で潔く言い切っているところも、料理本編集の仕事をしている人間として背中を押される思いです。誰かのためにごはんを作る、そのあたたかなエネルギーが全面から出ている、いまやとても貴重な佇まいの本だと思います。

『平野レミ・料理大会』 著 平野レミ (講談社)

赤澤かおり Kaori Akazawa
ハワイと料理の分野に強い編集者、ライター。編集した最新書に『Sean’s Hawaii Ultimate Dining Guide 366 ハワイローカルグルメ完全ガイド』(朝日新聞出版)、近著に『人生にはいつも料理本があった』(筑摩書房)。

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illustration : Shapre text : Mick Nomura (photopicnic)