太り気味の人のほうが長生きをする



――栄養の大切さは実感しつつも、更年期になると体形が気になってしまいます。

和田先生 「中年太り」という言葉があるように、ダイエットを心がけている思秋期世代は多いものです。2006年ごろから「メタボ」という言葉が使われるようになり、今ではすっかり定着してメタボ健診がおこなわれるようになりました。

実際、厚生労働省のホームページには、メタボになると心臓病や脳卒中のリスクが高くなる旨が書かれています。こうした理由から、見た目に加えて健康上の理由からもダイエットを意識している人はかなりの数にのぼるでしょう。

しかし、実はこれを覆す統計データが厚生労働省によって発表されています。宮城県の40歳以上の住民約5万人を対象に、12年間にわたって「体形別の平均余命」を調べたところ、一番平均余命が長かったのは40歳の時点で太り気味だった人なのです。

――ということは、無理にダイエットをする必要はないということでしょうか?

和田先生 私はダイエットをすると老けると考えます。なぜかというと、必要な栄養を十分に摂取することができないからです。

例えば、一般的には高めの血圧やコレステロール値はよくないといわれています。でも、私がこれまで医師として多くの患者さんを診てきた経験からいうと、血圧はやや高めのほうが頭がさえる方が多い。年齢とともに動脈の壁はどうしても厚くなりますから、血圧が高いほうが脳に酸素が送られやすいんです。

また、コレステロールの大半は体内で作られるので意外と食事の影響を受けないんです。コレステロールはホルモンや神経伝達物質の材料となったり、血管の弾力性を上げたりする働きがあり、体に欠かせない成分です。

私個人としては、メタボ対策で食べたいものを我慢してストレスをためるよりは、好きなものを食べて充足した気持ちでいることのほうが健康面では重要なのではないかと思っています。

※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。
※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。

<著書>



『50歳の分岐点 差がつく「思秋期」の過ごし方』和田秀樹著 大和書房/1300円+税

取材・文/熊谷あづさ(50歳)
ライター。1971年宮城県生まれ。埼玉大学教育学部卒業後、会社員を経てライターに転身。週刊誌や月刊誌、健康誌を中心に医療・健康、食、本、人物インタビューなどの取材・執筆を手がける。著書に『ニャン生訓』(集英社インターナショナル)。

著者/和田秀樹先生
1960年大阪市生まれ。東京大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在は精神科医、ルネクリニック東京院院長、立命館大学生命科学特任教授、川崎幸病院精神科顧問、一橋大学経済学部・東京医科歯科大学非常勤講師。著書にベストセラーの『80歳の壁』(幻冬舎)など多数。高齢者専門の精神科医として30年以上にわたって現場に携わっている。