サツマイモは痩せ地でもよく育ち、収穫量も多いため家庭菜園のスタートにぴったりの野菜です。病害虫の発生が少なく、ほとんどメンテナンスの手間がかからないのもメリット。近年では品種改良が進み、甘さに特化したもの、食感を追求したものなど、さまざま。数種類のサツマイモを栽培して、味比べを楽しむのもいいですね。この記事では、サツマイモのプロフィールや基本情報、種類、育て方まで、幅広くご紹介していきます。

サツマイモとは


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サツマイモは、ヒルガオ科サツマイモ属の根菜類です。原産地は中南米で、生育適温は16〜36℃、イモの肥大には20〜30℃が適しています。温暖な気候を好み、日本では主に西日本で栽培されています。栽培のスタートは、十分に気温が上がって遅霜などの心配がない5月頃から。乾燥した土壌で痩せ地を好み、肥料を施しすぎると、かえって地上部のつるばかりが茂ってイモが太らない「つるボケ」の現象を起こしてしまいます。

サツマイモは、17世紀頃に、東南アジアから中国を経て沖縄・九州に伝わったとされています。中国から伝わったイモとして、九州では「唐芋(からいも)」と呼ばれることが多く、本州では鹿児島から伝わったイモとして「薩摩芋(さつまいも)」と呼ばれるようになりました。サツマイモはやせ地でもよく育ち、収穫量も多いことから、天候不良による飢饉から何度も人々を救ってきた歴史があります。特に享保の飢饉では、本州では飢饉による餓死者が多数出たにもかかわらず、既にサツマイモが普及していた九州ではほとんど死者が出なかったことで、にわかに注目されるようになりました。凶作時の救荒作物として、一気に全国規模で栽培が広がっていったのです。当初は飢饉時のお腹を満たすためのイモでしたが、栽培が広まるにつれて味の改良が進むようになり、甘みの強い品種が生み出されて、食味のよい「おやつ」へと進化を遂げました。江戸時代には石焼きイモ屋が人気を博し、庶民に愛される存在だったようです。

サツマイモは、意外にもビタミンC、ビタミンEを多く含み、美容・美肌に効果があるとされています。またβ-カロテンやビタミンB1、B2、B6のほか、カリウム、鉄分などのミネラル成分も豊富。整腸作用のあるセルロースの含有量も多く、便秘の解消が期待できます。

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サツマイモの種類


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サツマイモは人気の食材だけに、その品種数は大変多いのが特徴です。形に注目してみれば、細長い形、ずんぐりとした紡錘形、やや短めの円筒形があります。果肉の色に注目すると、ベージュ、黄金色、オレンジ色のほか、紫色なども。味もさまざまで、糖度が高いもの、食感がねっとりしているもの、ホクホクしているものなどがあります。ここでは、その食感に注目して分類し、サツマイモの多様な品種についてご紹介していきます。

ホクホク系

【紅あずま】

長紡錘形でイモの揃いがよく、大きく肥大して収穫量も多いので人気が高い品種です。皮の色は鮮やかな赤紫で、果肉はクリーム色。粉質の食感で、じっくりと加熱すると甘みが増します。

【紅小町】

長紡錘形で果皮は鮮やかな紫色、果肉は淡い黄色。貯蔵すると果肉が濃くなります。甘くて食味がいいので、焼きイモやふかしイモにすると絶品。

【高系14号】

高知県で生まれた品種です。紡錘形で、鮮やかな紫色の果皮、クリーム色の果肉。程よい上品な甘さが魅力です。砂質土壌での栽培に向いています。

【パープルスイートロード】

ややスマートな紡錘形で、果皮は紫色。果肉は紫色で、アントシアニンを多く含み、あっさりとした甘みが感じられます。ふかすと色も味も濃くなるのが特徴的。

【鳴門金時】

紡錘形で、果皮は鮮やかな紫色、果肉は黄色で、大変ポピュラーに出回っている品種です。しっとりとホクホクのバランスがよい食感で、甘みも強いので人気があります。

しっとり系

【べにまさり】

紡錘形で、果皮は赤、果肉は淡い黄色。甘みが強くて柔らかく、特にじっくり蒸して食べるのがおすすめ。収穫量が多く、早く収穫できる特性があります。

【シルクスイート】

ずんぐりとした短紡錘形。赤紫皮は肌合いがなめらかで、果肉は濃い黄色。収穫直後は粉質の食感ですが、貯蔵することにより、粘質でシルクのような食感を楽しめます。

【ひめあやか】

コロンとした短紡錘形で、濃い赤紫の果皮、クリーム色の果肉。しっとりとした舌触りで、食べきりの「姫サイズ」が特徴です。病気に強く、栽培しやすい品種です。

【アメリカ芋】

皮色はベージュ色、果肉は淡いクリーム色。昔ながらの品種で食感がよく、根強い人気を誇っています。乾燥しやすい土壌に向く性質です。

ねっとり系

【安納芋】

短紡錘形をしており、皮色はくすんだ紅色で、果肉は淡いオレンジ色。ねっとりとした食感で濃厚な甘みが口に広がります。食感のよさは群を抜き、サツマイモ界のスター的存在。

【べにはるか】

ふっくらとした長紡錘形で、赤紫の皮色に、淡い黄色の果肉です。ねっとりとした食感で、甘みが強いのが特徴。収穫時は形が大きさの揃いがよく、安定した収穫量が得られます。

【クイックスイート】

長い紡錘形で、赤紫の皮色、クリーム色の果肉。他の品種に比べて糖度が最高値に達する温度が低いため、電子レンジで調理しても十分な甘さが得られます。