「嵐」会社設立の真意とは? 5人が“株主”となるメリットを弁護士が解説

旧ジャニーズ事務所の人気アイドルグループ「嵐」のメンバー5人が先月10日、「株式会社嵐」を設立したことを連名で発表した。また、「株式会社嵐」はジャニーズ事務所からマネジメント業務を引き継いだ「STARTO ENTERTAINMENT」(以下、STARTO)とエージェント契約を結んだことも明らかになった。

嵐は2021年からグループとしての活動を休止していたが、発表には「これまで以上に主体性をもち、これまで以上に主体的に判断をし、これまで以上に主体的に行動したい。そして何よりも、日々応援して下さるファンの皆さまに、より近くに感じてもらいたい。より積極的でありたい。そんな想いから5人で何度も何度も話し合い、会社を設立致しました」と未来の”動き”を感じさせるコメントが添えられた。

嵐のデビュー25周年となる今年、5人が連名で会社設立を発表したことを受けて、ファンらは「連名のコメントがどれ程嬉しいか」「5人一緒なのがほんとに嬉しい」「これは活動再開期待できるんじゃないか!?」などとポジティブな反応をSNS上に寄せた。一方で、5人が会社を設立した理由や目的、今後の活動内容などはわかっていない。

嵐にとって「会社設立」はどんなメリットがある?

エンターテインメント業界の法律に詳しい中野雄高弁護士は、嵐が会社を設立したメリットについて次のように説明する。

「報道などによると、株式会社嵐は嵐のメンバー5人が出資して設立されたそうです。つまり、5人は株式会社嵐の株主ということになります。

株主とは、いわば会社の持ち主(オーナー)であり、会社の社長などといった経営者よりも上にいる“会社組織で最上位の存在”です。5人は、これまでは事務所の所属アーティストにすぎなかったわけですが、今後は所属アーティスト兼事務所のオーナーということになります。

そのメリットは、自分たちのことは自分たちで決めることができる、ということに尽きるのではないでしょうか。所属アーティストは、言ってみれば会社の商品といえますが、これからは会社の持ち主として、自分たちを“どう売っていくか”を決められるわけです。

『STARTO』とのエージェント契約の内容について詳細は不明ですが、いわゆる営業行為を委託しつつ、決定権を自分たちで握って、これまで以上に自由な活動を展開していくのではないでしょうか」

他のグループが「会社設立」続かないワケ

旧ジャニーズ事務所所属のグループでは、TOKIOが2020年に会社を設立している。会社設立のメリットが多ければ、先輩であるTOKIOの背中を見た他のアイドルグループが続々と設立してもおかしくない。しかし、現時点で嵐以外から会社設立の話は聞こえてこないのはなぜだろうか。

「会社に“所属”するか、会社を“所有”するかの違いと考えればわかりやすいと思います。

会社を所有することは、ある意味で“冒険”です。成功すれば大きなリターンを得られますが、失敗した時のダメージも大きいでしょう。一方で、会社に所属している限りでは大きなリターンはないかもしれませんが、同時に大きなリスクを負うこともありません。

こうした背景から、ある程度以上の大きな売り上げが見込めるアーティストでないと、会社設立には踏み切れないのではないでしょうか」(中野弁護士)

メンバーが取締役にならなかったのは「賢明」

なお「株式会社嵐」の取締役には、弁護士が就任。5人は役職についていないようだ。これついて、中野弁護士は「良い判断だと思う」と評価し、理由を続ける。

「取締役は、株主から会社の経営を任された人のことをいいます。嵐のメンバーはあくまでもプロのアイドル。会社経営のプロではありませんから、そこはエキスパートへ任せたのではないでしょうか。

ちなみに嵐のメンバーは今後、株主として株主総会を開催し、その場で取締役から経営の報告を受けることになります」

デビュー25周年、さらにその先に向けた“足掛かり”ではないかとウワサされる会社設立。中野弁護士も「なんの計画もなければわざわざ会社化することはないと思う」と話す。

「むしろ、今まで以上に大きな計画があるからこそ、自分たちでコントロールしやすくするために自分たちの会社を作ったと考えることもできますので、今後の嵐の動きに期待したいと思います」(中野弁護士)