相談等件数7年連続増“リベンジポルノ”被害の8割超が女性…交際期間に「撮影同意」した相手に罪を問える?【弁護士解説】

リベンジポルノによる性被害の増加が止まらない。警察庁のまとめでは2023年の相談等件数は前年比4.9%増となる1812件で過去最多となった。2016年から7年連続の増加だ。警察庁は要因として会員制交流サイト(SNS)の普及をあげている。

交際相手の性的画像等を復讐(ふくしゅう)のため、流出させる行為。それがリベンジポルノだ。ネットの浸透で誰にも見られたくない性的データを、それを保持する者なら誰でも拡散可能になったことで“脅迫材料”としての強度が増し、被害増加に拍車をかけている。


「相談等件数の年度別推移」(警察庁HPより ※平成 26 年は、私事性的画像被害防止法の施行日(11 月 27 日)以降の件数)

警察庁によると、2023年の相談内容で最多だったのは、画像を「所持されている、撮影された」が最多で769件、次いで、「公表すると脅された」が676件、「公表された」が374件で続いている。


「年度別の相談等内容の推移」(警察庁HPより)

被害者のうち、1527人は女性で84.3%、一方で加害者は1374人が男性で75.8%を占める。また、被害者の年齢は20歳代が40.8%で最多、次いで19歳以下が30.8%で、20歳代までで合わせて71.6%となっている。

被害者と加害者の関係は、最も多いのが元を含む交際相手で880人(48.6%)、ネット関係のみの友人関係が383人(21.1%)で続いた。

こうしたデジタル機器や情報通信技術を用いた性暴力のことをデジタル性暴力被害者支援センターは、「デジタル性暴力」と定義。同センターは、具体的にどういった行為がそれにあてはまるのか、いくつか例示している。

撮影や頒布をする
頒布することを脅しに使う
性的な画像等を保存しつづける
フェイクポルノをつくる

どの行為も卑劣だが、「頒布することを脅しに使う」は例えば、「別れたらバラまくぞ」などと脅して相手に付け込む、リベンジポルノの典型的事例といえる。こうした被害に遭った際、性的な動画・画像がどのような状況で撮影されたのか。被害者が受ける感情は、それによっても差異が生じるだろう。

撮影状況別の罪の違い

実際、どのようにして性的データが相手の手に渡ったのか。入手までの経路や経緯によって罪はどのように変わるのか。性被害の弁護実績が豊富な本庄卓磨弁護士に、各ケース別の罪の違いを聞いた。

◇恋愛関係にあり、撮影に同意していた場合

恋愛関係にあれば、交際期間なら、撮影に同意してしまっても仕方がない側面はあるかもしれない。それだけにやはり、重い罪には問いづらいのか。

「法的にはリベンジポルノ防止法(私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律)が定める『公表罪』または『公表目的提供罪』に該当する可能性があります。公表罪であれば、3年以下の懲役または50万円以下の罰金。公表目的提供罪に該当すれば1年以下の懲役または30万円以下の罰金となります」

「公表罪」は、インターネット上での性的データの公表、ばらまき行為、「公表目的提供罪」は、LINEなどで拡散を目的として特定少数者に性的データを提供する行為などが該当する。

◇交際相手に同意なく撮影されていた場合

この場合は、盗撮も含め、撮影自体が無断で行われており、より重い罪が科されそうだが。

「このケースではリベンジポルノ防止法違反のほか、性的姿態撮影等処罰法(性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律)が定める『撮影罪』または『提供罪』に該当する可能性があります。撮影罪は3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金。

提供罪は①性的画像を特定・少数の者に提供した場合、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金②性的画像を不特定・多数の者に提供または公然と陳列した場合、5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金またはその両方となります。公開範囲が広いほど罪が重くなります」

※拘禁刑:懲役と禁錮を一本化して新たに創設された刑罰で、令和7年6月1日から施行される。

◇脅されて性的データを提供してしまった場合

このケースはより犯罪色が濃い印象だが、やはり罪はそれだけ重くなるのか。

「リベンジポルノ防止法違反のほか、脅迫罪や強要罪に該当する可能性があります。脅迫罪は2年以下の懲役または30万円以下の罰金。強要罪なら3年以下の懲役となります。

複数の罪を犯した場合、それらは併合罪として扱われることがあり、そうなると次の量刑が上限となります。

懲役は①最も重い刑を1.5倍したもの、②それぞれの刑の上限を合計したもの、のうち軽い方。罰金はそれぞれの刑の上限の合計となります」

「リベンジポルノの被害に遭った」と一口に言っても、そのやり口、悪質性、拡散の範囲などによって罪の重みには違いがあるということだ。

本庄弁護士はさらに、「上記のほか、撮影対象者が18歳未満の場合には、児童ポルノ禁止法(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律)に違反する可能性があります」と補足した。

リベンジポルノによる被害者は若年層も少なくなく、不用意な送付などにより性的データが流出するケースも目立っており、十分な注意が必要だ。

被害に遭うリスクを減らすための心得

どのような入手方法であれ、相手が性的なデータを手にしてしまえばそれを一瞬で拡散できてしまう。それが、リベンジポルノの恐ろしさだ。だからこそ注意すべきことがあると本庄弁護士は助言する。

「できるだけ早く対応することが重要です。被害を放置した場合、何度も拡散されてしまうなど被害が拡大する可能性があるためです。警察庁も拡散防止のために、できる限り早めに相談するよう呼びかけています」

「撮らせない」「撮られない」「自分で撮って送らない」

では、そもそも撮影されないために注意すべきことはあるのか。「常にリスクがあることを頭に入れておき、むやみに撮影を許可しないことです。どうしても断りづらい状況なら、せめて顔が写らないようにするなど、個人が特定できる態様で写らない。また、SNSの利用を通じてトラブルに発展するケースも多いため、SNSの多用は控え、そのうえで利用に伴う一般的なリスクについて気を付けてください」(本庄弁護士)

警察庁は、被害防止のために、自分の下着姿や裸の写真を「撮らせない」「撮られない」「自分で撮って送らない」と呼びかけている。やはり、流出させないことが最大の被害防止につながるといえる。

そのうえで、本庄弁護士は被害に遭ってしまった場合の適切な対処の仕方を示した。

「ここまでケース別で説明しましたが、リベンジポルノといってもその状況によって該当する法律が異なります。どのような対応が最善かを判断するためには、個別具体的な事情を踏まえて民事・刑事の両面から検討する必要があります。そのため、まずは専門家である弁護士に早めに相談してほしいですね。ナーバスな内容ですが、弁護士には守秘義務があるため、相談内容が外に漏れる心配はありません」