2024年のはじまりに見舞われた、能登半島地震。
あれから半年以上が経ってもなお、その爪痕は深く残ったまま。
ライフワークとして、絵本の読み聞かせを行っている俳優・南果歩さんが現地を訪ねました。

南 果歩さん
1964年、兵庫県生まれ。7月12・13日は東京文化会館小ホールにて舞台『木のこと The TREE』に出演。近著にエッセイと撮りおろしフォトをまとめた『乙女オバさん』(小学館)、絵本『一生ぶんのだっこ』(講談社)がある。

東京から来ました!絵本を読んでもいいですか?

能登半島の中ほどにある石川県七尾市。穏やかな内海に面した街へ、電車を乗り継ぎ、大きなスーツケースを引いてやってきた南果歩さん。その中はお気に入りの絵本でいっぱいです。

「子どもって、お客さんがやって来るとちょっと嬉しいでしょ? 誰かが来て、絵本を読んでくれた〜なんてはしゃいでくれるから、私も一緒に楽しむ気持ちで訪ねて行っています」

東日本大震災のあと、果歩さんは東北や熊本など被災地での絵本の読み聞かせを続けています。今回、七尾市には知人を通して縁がつながり、訪問が叶いました。

最初に向かったのは、田鶴浜こども園。

果歩さんが、子どもたちの顔を見ながら「何歳〜?」と尋ねると、いっせいに「4さ〜い!」「5さ〜い!」という声や、指3本をかかげる反応が返ってきました。

元気な子どもたちに、果歩さんが選んだ一冊目の絵本は『みんなうんち』。タイトルを聞いただけでキャハハーッと笑うかわいい声が響き渡ります。

「もっと近くにきて〜」という果歩さんの手招きに、子どもたちがいそいそと前へ出てきて、ぎゅっと距離が縮まりました。「みんなのお顔がよ〜く見えるよ」と、うれしそうな果歩さん。

つぎの七尾幼稚園では、最後の一冊になると子どもたちから「え〜」と残念がる声があがり、多数決をとってもう一冊読むことに。
果歩さんが「おしまいがよかった人は寝ててもいいからね。自由だよ〜」と声をかけると、楽しそうに寝転ぶ子の姿も。

最後の能登島小学校では、1年生から6年生までの全校生徒が迎えてくれたので、果歩さんは絵本のほか、詩『生きる』を朗読。
その澄んだ声に、大人も子どもも耳を傾けていました。

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子どもたちの反応に場がゆるんで大人もにっこり

どの場所でも、果歩さんは子どもたちに語りかけ、キャッチボールを楽しんでいました。

「ちょうちょはどうして、ここにとまったの?」「うれしいから!」「この子は誰に会いたいのかなあ?」「おばあちゃん〜」「だんごむし!」子どもたちの言葉はのびのびと素直で、一緒に聞いていた先生方やお母さんたちも思わず笑顔に。

そんな様子が見られると、果歩さんは少しホッとします。

「震災後は大人のほうが、いっぱいガマンしていたり、疲れが溜まっていたりしますよね。私が絵本を読みに行くことで、少しでも気分転換になったり、辛い日常から離れられる時間になればいいなと思っています」