平日は孫の面倒、週末は留守番

二世帯の生活が落ち着いたころ、Aさんの生活は、平日は孫の面倒をみて、週末は旅行に行く娘たちを見送り1人で過ごす日々が続きます。

平日は孫と過ごせると思いつつも、登下校の見守りや、習い事の送迎等、1人でこなすには精神的にも体力的にもキツイと感じることもしばしば。なのに、娘夫婦は労うこともなく、週末になると旅行に行きAさんは留守番。だんだんと疲弊してきます。しだいに寂しさが増してくるようになりました。

「なんのために二世帯にしたのだろう……」経済的にも年金月17万円とアルバイト程度に働いている給与8万円程度と、月25万円の収入があります。しかし、孫のおやつ代や送迎にかかるガソリン代等、生活費以外に出費がかさんでいるにもかかわらず、娘夫婦からは1円も生活費どころかお小遣いをもらったことはありません。

Aさんと同じ年代の友人は夫婦や子どもの家族と旅行にいったり一緒に食事したりと、楽しく過ごしているのに、自分だけ孤独に取り残された気分になり、ついにAさんはある暴挙ともいえる行動にでます。

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寂しいから再婚する!

ある日、Aさんは娘夫婦に話があると呼び出します。

「自分は二世帯に住んでみんなと楽しく過ごせるかと思っていた。毎週のように週末1人で過ごすなら、再婚して自分は自分で残りの人生を楽しく過ごしたい」といいます。どうやら最近シニア向け婚活アプリで出会った同じく夫を亡くした高齢女性といい感じらしいのです。さらに、「再婚したら、世界一周に出かけるから3ヵ月は戻らない。お金もかかるから、家賃分と生活費の立替分を払ってほしい。いままでの分と、これからは毎月20万円を自分の口座に振り込んでください」Aさんは思いの丈を吐き出し、すっきりとします。

娘夫婦は仰天します。なんとか再婚しないように説得するも、Aさんは聞く耳をもちません。いろいろと代替案を出しても知らん顔です。

「親しき仲にも礼儀あり」とことわざがあるように、親子であってもよい関係を保つために相手への気遣いは大切です。また、このままAさんが再婚し、再婚相手よりも先に亡くなってしまった場合、娘と再婚相手とのあいだで相続トラブルが発生するリスクも高まります。コミュニケーションを取りながら、一方通行にならないように配慮すべきだったのではないでしょうか。

三藤 桂子
社会保険労務士法人エニシアFP
代表