京都の店々に密やかに備わる坪庭は、この街に暮らす人々の美意識を象徴するような場所。京都に出かけたら見に行きたい、小さくも美しい庭を紹介します。
百年後の姿へと思いを馳せる。
―UCHU wagashi 寺町本店―

遡れば15年前のこと。6色に染められた扇型の落雁「drawing」を作り、和菓子界に新風を吹かせた『ウチュウ ワガシ』。食べ手が自由にデザインする要素を持たせ、新たな和菓子を提案したのだ。「『ウチュウ ワガシ』が目指すのは和の再構築。伝統的な要素を分解して必要なものだけを残し、組み立て直すことで生まれるのが我々の個性です。今の和菓子をつくることが百年後、新しい文化になると思うのです」と代表の木本勝也さん。
2024年春の改装で整えられた『寺町本店』の庭もまた、余計なものを削ぎ落としたミニマルさが印象的。白砂に2つの苔の島が浮かび、一方には黒松がすっくと枝を伸ばし、もう一方には黒石が景色を描く。「この庭は完成することはなく、足したり引いたりを繰り返しながら、この先もずっと在り方を考えていけたら」。変化を続けながら、百年後も和菓子に寄り添うであろう、庭の歴史はまだ始まったばかり。すっと差し込む陽の光に照らされた庭を眺めつつ、変わる姿を思い描く。「drawing」同様に想像を掻き立てる存在である。


2024年3月リニューアル。カフェ併設のショップ。落雁づくりのワークショップなども。
『ウチュウ ワガシ 寺町本店』
京都市上京区寺町通丸太町上ル信富町307
075−744−6287
10時〜17時 火休
photo : Yoshiko Watanabe illustration : Junichi Koka edit & text : Mako Yamato

Trip to Taiwan / 台湾でしたいこと。&Premium No. 136
ほんのりと熱気を帯びた台湾の街に降り立つと、風情ある街並みの向こうに見える都会的な高層ビル、家々が連なる静かな路地、走り抜けるオートバイの大群、賑やかな市場や屋台……。さまざまなルーツを持つ人々が培ってきた伝統と、昔ながらの日常の風景や自然、そして次々と生まれる新しいカルチャーを共存させている懐の深さが、台湾の街の魅力です。今号の特集では、気取らない〝ふだんの台湾〞を感じる旅を案内します。台北と台南では、ローカルのみなさんに教えてもらった、早朝の街の楽しみ方やとっておきの食堂、個性的な書店やカフェ、茶芸館や日用品店など、14のテーマで巡る旅を。また、台中の街歩きや、温泉や離島を訪ねる2泊3日の旅プランなども加え、紹介するのは164のスポット。〝いま〞の台湾を感じる旅に、出かけませんか。
andpremium.jp/book/premium-no-136