タワーマンションが増えるもうひとつの理由

タワーマンションが増えたもうひとつの理由として、「定期借地権付きタワーマンション」の増加が挙げられます。2025年までに首都圏で供給される定期借地権付きマンションは2,000戸に上ると予想されています。東京カンテイによると、全国の累計の供給戸数は2022年12月末において3万3,915戸だったため、2025年には4万戸に迫るかもしれません。

この定期借地権付きマンションとはどのようなものでしょうか。通常の分譲マンションであれば、「土地」は区分所有者が建物の所有権とセットにされた「敷地権」として権利を持っています。多くの人が、マンションは部屋だけを買っている、と思いがちですが、土地や共用部に対しても権利があるのです。一方で定期借地権付きマンションの場合、土地の権利は地主にあります。つまり、マンションが「借地」の上に建てられているということです。

借地の契約は「普通借地権」と「定期借地権」の2種類にわかれます。マンションに用いられるのは「定期借地権」で、契約の更新はできず、契約期間(50年、70年など)が過ぎたらマンションを解体し、更地にして地主に返還しなければなりません。

一等地を手放したくない地主にとっては、土地を売却せずに活用できるというメリットがあります。一方で、区分所有者にはデメリットしか感じない契約のように思えますが、土地の固定資産税の負担をしなくて済むこと、土地を所有していないためマンション価格が2~3割程度安く抑えられることがメリットとして挙げられます。一等地に建てられたマンションをリーズナブルに購入できるのです。

この形態のマンションは、東京都、千葉県、埼玉県、神奈川県で特に増加しています。マンション価格が高騰するなか、一等地のマンションを安く購入できるため、特に若い世代は魅力を感じるでしょう。しかし、定期借地権付きマンションは、通常の分譲マンションの購入以上に緻密なライフプランニングが必要になります。

ここからは定期借地権付きマンションを購入し、ライフプランニングのミスに気付いた家庭の事例を紹介します。

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都心の物件の半分以下で購入できた千葉タワマン

<事例>

夫Fさん 32歳会社員 年収800万円

妻Sさん 30歳会社員 年収680万円

長男 4歳

長女 1歳

夫のFさんは千葉市に住む32歳の会社員です。東京都内の大手IT企業に勤務しています。年収は800万円です。大手メーカーに勤務する妻のSさんは年収680万円。世帯年収は1,480万円と、パワーカップルといえるでしょう。

2年前までFさんの職場の近くにある賃貸マンションで生活していましたが、Fさんの故郷の千葉市でタワーマンションを購入しました。職場から電車で一時間の距離に離れてしまいましたが、夫婦どちらも在宅勤務が可能なので特に問題ではありません。出勤する日も始発駅であるため、並べば座れます。価格は3LDKで7,500万円と、都心の物件の半分以下です。35年返済のフルローンで、毎月の返済額は19万8,000円。賃貸マンションの家賃が21万円だったため、むしろお得に思えました。

夫婦が千葉市にマンションを購入したきっかけは、長男が自閉症であると診断されたことでした。想像もしていなかった状況に夫婦は、我が子が次第に定型発達児に育つと最初は考えていたのですが、一生気にかけ支えていくべきだと現実を受け入れるようになりました。

それには夫婦のどちらかが仕事を辞めるか、それとも千葉市に引っ越しFさんの両親の協力も借りるかの選択が必要でした。自閉症は病気ではなく特性であり、ただ周囲の気配りが必要なだけだと学んだことで、両親の近くに引っ越すほうがベターだと判断したのです。親亡きあとの息子がお金に困らないよう、資産価値が高いといわれる新築物件のタワーマンションを7,500万円で購入しました。

しかし、最近気になっているのは購入したマンションが定期借地権の期間が70年の「定期借地権付きマンション」であることです。あるとき、同僚との会話の中で住宅ローンが話題に上がりました。「え、定期借地権なのか? うちもマンション買ったんだけど、 freehold (所有権)で買ったよ。だって、子供に残してあげたいし……」同僚の言葉に、Fさんは不安を覚えました。

インターネットでマンションに関する情報を調べているうちに、定期借地権付きマンションのデメリットや問題点について書かれた動画を目にしました。動画のなかで、「定期借地権付きマンションは、子供の将来を考えるとリスクが高い」と指摘しているのを見て、Fさんの不安は一層増します。マンションが70年後に解体されることは知っていたものの、長男のことを優先しての決断だったつもりでしたが、今回の選択が正解だったのか迷いが生じたのです。

不安なポイントをまとめると、

・購入したマンションは長男の人生を支える資産となるか

・マンションはいつ売却すべきか

・気づいていない問題点はあるか

この3点です。そこでFPに相談してみることにしました。